五 閉ざされた廊
数日後。
次子が、麗景殿の潔子のもとを訪れようとした。
しかし、麗景殿の女房たちに阻まれた。
「合歓の君、どちらへ」
女官は、冷たく言った。
「麗景殿女御様に、ご挨拶をと」
「それには及びません」
女官は、きっぱりと言った。
「女御様は、お疲れです」
「しかし......」
「お引き取りください」
麗景殿の女房たちは、けんもほろろに次子を押し返した。
次子は、何も言えず、静々と引き下がるしかなかった。
次子は、顕子に報告した。
弘徽殿。
「中宮様」
「どうしたのだ、合歓。麗景殿には行かなかったのか?」
次子は頭を振り、そっと跪き、にじり寄る。
顕子の耳元で、小さく囁く。
「潔子様が......孤立しておられます」
顕子は、眉をひそめた。
「......孤立?」
「はい」
次子は、説明した。
「左大臣派が、誰も潔子様に近づけないようにしています。私が声をかけようとしても、阻まれます。中宮様が麗景殿を訪ねようとしても、おそらく......」
顕子は、息を呑んだ。
「なぜ......」
「おそらく、警戒していらっしゃるのでしょう」
次子は、悲しそうに言った。
「中宮様が、道顕様の娘であることを。だから、潔子様を守るために、誰も近づけないようにしていると」
顕子は、拳を握りしめた。
「私は......」
顕子の声が、震えた。
「私は、ただ助けたいだけなのに」
顕子は、涙を浮かべた。
「父の名のもとに、私まで、疑われているのか……。いや、当然のことだな……。誰もが皆、父上を恐れている」
次子は、顕子の手を取った。
「中宮様。中宮様は、お悪くありません」
次子は、優しく言った。
「でも......」
次子の声も、震えた。
「潔子様は、孤立していらっしゃいます。私たちが助けたくても、左大臣派が阻む。そして、道顕様の策略も続いている」
麗景殿のありようは、誰をも警戒し、毛を逆立てる針鼠のようだ。
痛々しい雰囲気に、次子は睫毛を伏せるしかなかった。
「潔子様は......」
次子は、言葉を濁した。
「板挟みなのです」
顕子は、次子の肩に額を押しつけ、吐息した。
「私は、中宮なのに……いつも、何もできないのね」




