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式部省の呪詛係  作者: 浮田小葉子
第八章 御門の内
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五 閉ざされた廊

 数日後。


 次子が、麗景殿(れいけいでん)の潔子のもとを訪れようとした。

 しかし、麗景殿の女房たちに阻まれた。


「合歓の君、どちらへ」


 女官は、冷たく言った。


「麗景殿女御様に、ご挨拶をと」


「それには及びません」


 女官は、きっぱりと言った。


「女御様は、お疲れです」


「しかし......」


「お引き取りください」


 麗景殿の女房たちは、けんもほろろに次子を押し返した。


 次子は、何も言えず、静々と引き下がるしかなかった。



 次子は、顕子に報告した。


 弘徽殿(こきでん)


「中宮様」


「どうしたのだ、合歓。麗景殿には行かなかったのか?」


 次子は頭を振り、そっと跪き、にじり寄る。

 顕子の耳元で、小さく囁く。


「潔子様が......孤立しておられます」


 顕子は、眉をひそめた。


「......孤立?」


「はい」


 次子は、説明した。


「左大臣派が、誰も潔子様に近づけないようにしています。私が声をかけようとしても、阻まれます。中宮様が麗景殿を訪ねようとしても、おそらく......」


 顕子は、息を呑んだ。


「なぜ......」


「おそらく、警戒していらっしゃるのでしょう」


 次子は、悲しそうに言った。


「中宮様が、道顕様の娘であることを。だから、潔子様を守るために、誰も近づけないようにしていると」


 顕子は、拳を握りしめた。


「私は......」


 顕子の声が、震えた。


「私は、ただ助けたいだけなのに」


 顕子は、涙を浮かべた。


「父の名のもとに、私まで、疑われているのか……。いや、当然のことだな……。誰もが皆、父上を恐れている」


 次子は、顕子の手を取った。


「中宮様。中宮様は、お悪くありません」


 次子は、優しく言った。


「でも......」


 次子の声も、震えた。


「潔子様は、孤立していらっしゃいます。私たちが助けたくても、左大臣派が阻む。そして、道顕様の策略も続いている」


 麗景殿のありようは、誰をも警戒し、毛を逆立てる針鼠のようだ。

 痛々しい雰囲気に、次子は睫毛を伏せるしかなかった。


「潔子様は......」

 次子は、言葉を濁した。

「板挟みなのです」


 顕子は、次子の肩に額を押しつけ、吐息した。


「私は、中宮なのに……いつも、何もできないのね」



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