流浪の興国ー託しきれない夢を、相棒と呼んでくれる君とー
神の末裔である申皇の治める世。各地にある申皇の管理下に置かれた国は、『府』と呼ばれ、官僚である領主と豪族が管理をし、民を虐げていた。そんな中、自らを楽士と称する烏有は「民のための府」を求めて、旅をしていた。そんな折、彼は山賊を名乗る男、蕪雑と出会い、思う。
彼ならきっと、夢に見た「民のための府」を造ることができる。ないのであれば、興国をすればいい。
そうして彼等の興国が、はじまった。
カクヨムにも載せています。
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154872263
彼ならきっと、夢に見た「民のための府」を造ることができる。ないのであれば、興国をすればいい。
そうして彼等の興国が、はじまった。
カクヨムにも載せています。
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154872263
決起―01
「全員でどこかへ移住すれば、いいだけだろう」
2016/06/30 21:31
(改)
「それがどうして、府の外で山賊をすることになったんだい」
2016/06/30 21:35
「いつの間にか、本物の山賊になっちまったんだよ」
2016/06/30 21:38
「申皇に許しを乞えばいい」
2016/06/30 21:39
「てこたぁ、豪族はその法律を知らねぇってことかよ」
2016/06/30 21:40
「決まりだね。これから、僕等の理想とする国を造ろう。――興国のはじまりだ」
2016/06/30 21:41
決起―02
「僕からの文だと知ったら、どう思うかな」
2016/06/30 21:43
「蕪雑なら、そのような国を造れるかもしれない」
2016/06/30 21:44
「妙なことを気にすると、叔父上にもよく言われたな」
2016/06/30 21:45
決起―03
「それは後にして、先にどこに国を興すかを決めよう」
2016/06/30 21:46
眉間にシワを寄せて、蕪雑が地図をながめる。
2016/06/30 21:47
「そういやあ、そうだな。なんで討伐隊が出てこなかったんだろうなぁ」
2016/06/30 21:48
「クッ……はは。蕪雑、君は面白いな」
2016/06/30 21:48
決起―04
「旅の楽士っていうから、もっと動けるもんだと思っていたけど、だらしねぇな」
2016/06/30 21:49
「そこが、兄ぃの美徳ですから」
2016/06/30 21:50
「貴方は、何者なんですか」
2016/06/30 21:50
「俺っち、川で泳いでみたい」
2016/06/30 21:51
決起―05
烏有はしらじらと星明かりに浮かぶ、端麗な顔を剛袁に向けた。
2016/06/30 21:52
「いや。思う以上に好漢すぎて、困っているんだ」
2016/06/30 21:56
「俺は……。蕪雑兄ぃは、ああいう方ですから」
2016/06/30 21:56
蕪雑は岩と化したまま、耳をそばだてた。
2016/06/30 21:57
「僕が君なら、より怪しいと考えるね」
2016/06/30 21:58
決起―06
「そのぐらい、現実味のない話ってことなんですよ。蕪雑の兄さん」
2016/06/30 21:58
不安と不満にさざめく人々に、蕪雑があきれた。
2016/06/30 21:59
「ここだって、はじめは何もなかったんだっけ」
2016/06/30 22:00
「僕はどうやら、うかれているらしい」
2016/06/30 22:00
決起―07
烏有は自分のすべてを蕪雑に賭けると決めていた。
2016/06/30 22:01
烏有の肌が興奮に粟立った。
2016/06/30 22:03
硬い声で、烏有は乞う。
2016/06/30 22:03
決起―08
「それじゃあ、アンタは調査のために派遣されたのか?」
2016/06/30 22:04
「そんなら、兄さんか烏有が領主になればいいや」
2016/06/30 22:05
「え。これって、茶会だったのか?」
2016/06/30 22:06
決起―09
「両親の死に、ひきずられたままなんだな」
2016/06/30 22:06
「私が頭から反対をするつもりでいると、思っていたようだな」
2016/06/30 22:08
「玄晶。勝手をした僕を、許してほしい」
2016/06/30 22:08
決行―01
「もっと川のそばに行こうよ、兄さん。どうせ、あの船に乗るんだろ」
2016/07/01 09:17
「そんな人間を、俺は信用できません」
2016/07/01 11:00
船は川の中腹で、碇を下ろしているところだった。
2016/07/01 16:00
「早くしねぇと、迎えを待たせちまうぞ」
2016/07/01 21:00
決行―02
しっかりと手を結んだふたりに、烏有は複雑な笑みを浮かべる。
2016/07/02 08:00
玄晶の説明に、蕪雑は納得しきれぬ顔になった。
2016/07/02 11:00
「それでも、やめてほしいんだ」
2016/07/02 16:00
決行―03
玄晶はあくまでも柔和な態度で接する。
2016/07/02 16:00
グッと息を飲んだ剛袁が、それをごまかそうと杯に唇を当てた。
2016/07/02 21:00
「罪滅ぼしのような、自己満足……かな」
2016/07/03 08:00
「本来の名前とは、どういう意味ですか」
2016/07/03 11:00
硬い表情の烏有と剛袁に、玄晶は手を差し伸べた。
2016/07/03 17:00
「蕪雑なら、実現できると思えたんだ」
2016/07/03 21:00
決行―04
「そんな相手、やっつけてやればいいんだ」
2016/07/04 08:00
任せてほしいと、袁燕が胸を叩いた。
2016/07/04 11:00
蕪雑の無骨な指が、川と陸の隔たりを示す線をなぞった。
2016/07/04 17:00
うまく言えない蕪雑が、剛袁を見た。
2016/07/04 21:00
「俺ぁ、そういうのには向いてねぇと思うぜ」
2016/07/04 21:00
決行―05
「だからこそ、僕たちが先陣を切り、そのような府を造り上げるんだ。」
2016/07/05 08:00
「根回し?」
2016/07/05 11:00
「対外的には、おなじだと思わせておくのが得策だよ。」
2016/07/05 17:00
「どうしたんですか、これ」
2016/07/05 21:00
「そいつぁ、いいや。いい名前をつけてくれよ」
2016/07/06 08:00
決行―06
「とりつくろってなんて、いないさ」
2016/07/06 11:00
「烏有はケンカをわかってねぇな」
2016/07/06 17:00
玄晶は軽く声をたてて笑った。
2016/07/06 21:00
決行―07
「あれ。言ってなかったっけ。家の跡継ぎが、俺っちだからだよ」
2016/07/07 08:00
「俺っちも、兄さんほどじゃねけぇど、できるぜ」
2016/07/07 11:00
「ところで、何の話をしていたのだったか」
2016/07/07 17:00
「何をする気なんですか。剣呑な方法では、ありませんよね」
2016/07/07 21:00
「まあ。烏有だけでなく、玄晶にも借金を作っちまってるしなぁ」
2016/07/08 08:00
決行―08
「……後悔、しているのかい」
2016/07/08 11:00
「蕪雑にウソをついている」
2016/07/08 17:00
蕪雑は大きな拳を、烏有の胸に軽く当てた。
2016/07/08 21:00
決闘ー01
「なるほどなるほど」
2016/07/09 07:00
玄晶は笑いを堪えながら、彼の肩に手を乗せた。
2016/07/09 11:00
「そういうの、苦手なんだよなぁ」
2016/07/09 16:00
決闘―02
「明江の領主、とは言わないんですなぁ」
2016/07/09 21:00
「いい茶器でしょう」
2016/07/10 07:00
「どこからの使者か、わからないと申されるのですか」
2016/07/10 11:00
横で聞いていた剛袁が、口を挟んだ。
2016/07/10 17:00
「アイツはそれに、気づいてんのかな」
2016/07/10 21:00
「君という人は、なんて愚かな……」
2016/07/11 07:00
「ずいぶんな自信だな。いいだろう。乗ってやる」
2016/07/11 11:00
決闘―03
「止める必要もないと、思ったからね」
2016/07/11 17:00
「なんつうか、そんな悪い奴じゃねぇと思うんだよなぁ」
2016/07/11 21:00
「そっかそっか。そうだよな。そこ、心配だよな」
2016/07/12 07:00
「ところで。決闘って、どうやってするんだ」
2016/07/12 11:00
決闘―04
「あれから、寧叡の部下たちの様子を見たよ」
2016/07/12 17:00
「正しいってなぁ、なんだよ」
2016/07/12 21:00
「烏有は、ケンカしたことがないんだってな。袁燕から聞いた」
2016/07/13 07:00
「玄晶に、僕を説得するようにとでも言われたのかい」
2016/07/13 11:00
「どうしたんだよ。なあ、烏有」
2016/07/13 17:00
「僕ができることはもう、終わったんだね。きっと」
2016/07/13 21:00
決闘―05
「油断していると、無様な姿をさらすことになるぞ」
2016/07/14 07:00
「なんだか、楽しそうに見えないかい。あのふたり」
2016/07/14 11:00
「踏み込みを見りゃあ、対戦したらヤベェなってのは、すぐにわかるぜ」
2016/07/14 17:00
身を沈めた蕪雑の足が、寧叡の足を弾き上げる。
2016/07/14 21:00
決闘―06
「んぁ。おはよう……なのか?」
2016/07/15 07:00
「……寧叡の腹に、拳を叩き込んだところまでは、覚えてんだよなぁ」
2016/07/15 11:00
「うまく言葉にできねぇっつったろ? それを、肌身で感じたわけだ」
2016/07/15 17:00
烏有の背を、蕪雑の声が追いかける。
2016/07/15 21:00
決意―01
「烏有のぶんだ」
2016/07/16 07:00
「聞かれたら困る場所に行くから、ごまかしたのか?」
2016/07/16 11:00
「剛袁のひと言で、場の空気が一変したね」
2016/07/16 17:00