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夏の匂いのするページ

作者:鍼野ひびき
最終エピソード掲載日:2026/07/26
【その本の続きを、君と一緒に書きたい。】

祖母の家の押し入れで見つけた、一冊の古い児童書。表紙の裏に鉛筆で書かれた「いつかこの砂浜で会おう」という言葉に導かれるように、望月 汐(もちづき しお)は海辺で一人の少年と出会う。遠野 蒼(とおの あおい)——彼は本の持ち主が、二年前に事故で亡くした兄・蒼太だと明かし、動揺を隠せない。

「もう一人、誰かいた気がする」

漁師のふとした一言が、封じられていた記憶の扉に触れる。単独の水難事故として処理されたはずのあの朝に、実は蒼自身がその場にいた——祖母だけが知る、二年間の沈黙。誰もが「知らないふり」を選び続けた真実に、二人はゆっくりと近づいていく。

家族の崩壊から目を逸らし続けてきた汐と、忘れることでしか生きられなかった蒼。互いの「言えない痛み」に触れ合ううちに、二人は少しずつ、閉じていた心をひらいていく。

そして迎える、あの夏の朝の全貌。兄は、なぜ弟を押し流したのか——。

答えを知った時、二人はようやく、守られるだけの自分から、一歩を踏み出す。

一冊の本に隠された兄弟の約束と、少女の再生の物語。潮の匂いに導かれる、夏だけの奇跡が、今、明らかになる。
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