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あるいは現在のアダム、あるいは最後のイブ

作者:山の下馳夫
※ネタバレあります
『女性の体を持つ男性』である前川幸人は、廃墟の渋谷で生存者を捜索していた。新型ウイルスにより人類の数は減り続け、周辺に生存反応はなくなっていた。幸人は無人の渋谷で途方に暮れ、平成生まれの亡き祖父との会話を思い出す。
 祖父は、幸人の肉体と心の性の不一致に関し最も早く理解を示し、幸人に多大な影響を与えた人物であった。幸人は祖父の思い出をきっかけに社会の破滅と家族の最期を思い出し、自分がこのような環境にあり、どう振舞うべきかを思案、決意とともに拠点へと引き上げた。
 拠点に戻ると、もう一人の生存者、『男性の体を持つ女性』、後藤絵理沙が項垂れていた。後藤はこの状況下にあっても元恋人の追悼という行為に腐心し、生存者捜索や物資確保に従事していた幸人を苛立たせる。
幸人は後藤との会話を避け、シャワールームへと向かう。シャワー中に月経がはじまったことで、幸人はまた考える。意に沿わなかった肉体の性別だが、今人類を左右できるのは妊娠する能力をもった自分だけであることを改めて認識したのであった。
 社会が存在した時は、不快に感じていたこの能力こそが、人類の文化を未来に繋ぐ唯一の手段であることを理性的に認め、幸人は再び後藤へと向き合う。だが、彼女はまだ思い出に縋り、ともに新しい世代を育むという提案は一度拒否される。
 幸人は様々な葛藤ののち、理性的なアプローチで後藤を説得する。後藤も今度は幸人の提案を受け入れ、お互いの主義を曲げ、肉体の性に従い生殖を行うため、理想の環境を整えていく。
 作業が過酷化し、体力に勝る後藤が食事を用意する機会が増えたある晩、幸人の食物アレルギーが発症した。それは、男としての役割を強制する現在の環境に、後藤が耐えられなくなっての食事へのアレルゲン物質の混入が原因だった。
 幸人は、意識が薄れゆく中、人類存続より自分の主義を優先した後藤に対し、女性という性別への偏見と怨嗟の声を上げる。
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