第15話
そうした状況にあったところに、スペインを取り返したい、それにユダヤ人部隊が協力してくれるならば、共に戦ってくれたユダヤ人やその家族にスペインの市民権を与えても良い、というフランコ将軍からの呼びかけがあったのだ。
最も之には裏があった。
第二次世界大戦中、表向きは英領パレスチナ部隊として戦ったユダヤ人部隊は、精鋭部隊として知られてはいたが、一皮むけばドイツ軍に対して、様々な戦争犯罪を躊躇わない黒い部隊でもあった。
それこそ勝てば官軍で、英政府等はこの件をかなりもみ消すことに成功してはいたが。
この部隊を下手に解散させて、部隊に所属していた将兵が、パレスチナに大量に向かうことになっては、それこそパレスチナの地が、血で血を洗う自体を引き起こしかねない。
更には、エジプトやヨルダン、シリア、レバノン等まで、ユダヤ人が食指を延ばすのではないか、そうなっては、それこそ中近東地域が大動乱になってしまうのではないか。
実際にそんなことになっては、それこそ百年は続く大動乱になり、石油の供給等に多大な影響が世界に出る事態が起きかねないどころか、ほぼ確実に起きるだろう。
それは自国の為に、又、世界全体の為にも回避されねばならない。
そう英政府等は考えて、フランコ将軍を使嗾して、ユダヤ人部隊の転職先として進めたのだ。
そして、ユダヤ人部隊の多くも、英政府が背を推したこともあったが、フランコ将軍に協力して、スペイン解放の為に戦うことにしたのだ。
この辺りだが、ユダヤ人部隊の多くの面々なりの論理もあった。
今の欧州は、完全にユダヤ人が安住出来る地では無くなっている。
そして、カナーンの地であるパレスチナは、今はアラブ人が圧倒的多数を占める地になっていて、其処にユダヤ人が大量に移民しても生活基盤を築くのは困難だし、それこそ戦わざるを得ないだろう。
更に考えれば、戦うにしても血で血を洗う戦いとなり、数十年も戦う事態になるのではないか。
やっと欧州の戦乱が終わって、平和に暮らせるのではないか、と希望が持てるようになったのに、この先も数十年も戦うのは嫌だ。
だが、ユダヤ人部隊が、フランコ将軍に協力して、スペイン解放に協力して、それに成功すれば。
新生スペイン軍の主力は、ユダヤ人が占めることになり、フランコ将軍も色々な意味でユダヤ人を弊履のように捨てることは出来ないだろう。
そうなれば、スペインをユダヤ人の新たな安住の地に出来るのではないだろうか。
それにかつて、スペインは多くの(セファルディム系)ユダヤ人が住んでいた地ではないか。
それこそ、かつての故郷を奪還して、改めて安住の地にするのは当然ではないだろうか。
更に考えれば、このまま欧州の地に住めることにもなる。
そう考えて、ユダヤ人部隊の多くが、フランコ将軍に協力することになり、スペイン解放軍の主力を構成することになったのだ。
そして、カテリーナ・メンデスやカルロ・メンデスも、自らのセファルディム系の出自もあって、この行動に賛同して、スペイン解放軍に参加したのだが。
カテリーナは、語った。
「あの頃の私は、妹のアンナに嫉妬していたし、米内藤子を良く想っていなかったの。
米内藤子が動いた為に、アンナは小林亨二と結婚して日本人になり、安心して日本に住めるようになっていたから。
アンナは、医師としての資格を取って軍医になり、私やカルロに何れは協力したい、と手紙を送ってきてはいたけど。
私達は文字通りに戦場で戦ってきて、これからもスペインの地に赴こうとしている。
でも、アンナは日本に安住していると考えてしまった。
だから、私はアンナに手紙を書いたの。
それが、あんな事態を引き起こすとはね」
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