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第14話

 さて、その翌日の昼前に、米内松江はカテリーナ・メンデスの自宅を訪ねていた。

 幸いなことに、カテリーナの夫の笹井醇一(今ではユダヤ教に改宗して、メンデス家の一員になっており、公式にもジュンイチ・メンデスと名乗り、スペインに帰化して、スペイン空軍に奉職している)や、カテリーナの弟のカルロ・メンデスや、その妻のマリアも、その場には居た。


「貴方が来るのを聞いていたから、カルロも呼んだのよ。

 久々に家族が一堂に集うわね」

 カテリーナさんは、流暢な日本語で松江を歓待した。


「わざわざカルロさんまで来られているとは」

「元上官の娘が来る以上、元上官がどうしているのか、直に聞きたくてね」

 松江の言葉に、カルロはそう返した。


 松江は思い起こした。

 第二次スペイン内戦中、カルロさんは、私の養父である米内仁の一の部下と言って良かった。

 カルロさんの助言等で、初陣と言えた自分は第二次スペイン内戦を生き延びて帰還できた、と仁自身が松江に語った程だった。


 その一方で、松江としては、娘として養父の真実を知りたかった。

 第二次スペイン内戦での実戦経験から、養父の仁はアルコールを積極的に嗜み、それで、アルコール依存症を発症した、と養母の藤子や、知人で先輩の軍医と言える小林アンナは言っている。

 それは、何処まで本当なのだろうか。


 他にも色々とカテリーナに、自分は直に聞きたいことがある。

 勿論、カテリーナなりの話で、何処まで本当のことを話してくれるか、自分でも疑問だけど。

 少なくとも、他の人も居る場で、私なりに様々な真実を知りたいのだ。


 そんなこんなのことから、間に昼食を挟みながら、松江はカテリーナらと長く話すことになった。


 松江は、カテリーナに対して、どうしても最初に聞きたいことがあった。

 それ故に単刀直入に話しかけた。

「貴方に背を推されて、今の養母の藤子は洋一を産んだ、と藤子は言っています、(貴方の妹の)アンナさんも、そう言っています。これは本当なのですか。私は、養母について、真実を知りたい」


 この場の雰囲気を壊す可能性が高い。

 でも、私は聡明な母が、幾ら相手が義兄で婚約者と言って良い立場であったとはいえ、何故に女学生の身で妊娠出産するような暴挙を仕出かしたのか、少しでも真実を知りたいのだ。


 あの頃の私は、まだ5歳で養母の仕出かしたことが暴挙と分かっておらず、自分に弟が出来る、と素直に喜んでいた。

 そして、徐々にトンデモナイ暴挙だったのを知ったのだ。

 でも、その一方で養母は聡明で、理想的な家庭の女性としか、自分にはずっと見えなかった。


 更に言えば、完全に後から知ったこと、自分が女学生になった頃に私は知ったことだが、当時の米内光政首相や代議士で元横須賀市長の小泉又次郎が陰で動くようなことがあったことから、養母の出産育児休学は公認されたのだ。

 当時ならば、即座に放校(退学)処分になって然るべき程の暴挙を、何故に養母はしたのか。


「そうね。信じて貰えないでしょうけど、私なりの真実を話すわ。それに貴方は、藤子の養女にして、異母妹だから、尚更にそれを知るべきでしょうね」


 カテリーナは、そう前置きをして、やや長い語り、言い訳をした。

 以下はその要約である。


 1942年秋、第二次世界大戦は終結したが、当時、欧州に居たユダヤ人の多くにとっては、安心できる世界では無くなっていた。

 それこそ、現実にそうなったが、ソ連の脅威は存在し続けていたし、更にナチスドイツが露わにした隣人の反ユダヤ主義は、再び起こってもおかしくない、と被害者意識を高めた欧州のユダヤ人の多くは考えたのだ。


 とはいえ、カナーンの地であるパレスチナは、アラブ人との戦乱の巷になっていたのだ。

 次話に続きます。


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― 新着の感想 ―
 松江さんらしい単刀直入すぎる情報蒐集(^皿^;)また従兄弟ぐらいに遠い縁の親戚とほぼ初対面で軽い会話のジャブを抜きにしてコレをやられたら自分なら面食らっちゃうけど、おそらく松江さんの進学祝いを建前に…
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