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残骸。Les Épaves.  作者: シャルル・ボードレール/萩原 學(訳)
滑稽調。Bouffonneries

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23/24

22. ウジェーヌ・フロマンタン氏へ その友人を名乗る ある厄介者について

XXII

À M. EUGÈNE FROMENTIN

À PROPOS D’UN IMPORTUN

qui se disait son ami

脚韻ABAB

作家であり画家であったフロマンタンを、ボードレールは高く評価していたようだ。その知人を自称したこの男が何者であったかは、その名以外は伝わっていない。

彼は私へ言う、とても金持ちだが、

コレラを大層恐れていると。

……自分の金にはとても吝嗇(ケチ)だが、

オペラを大変楽しんでいるとも。

Il me dit qu’il était très-riche,

Mais qu’il craignait le choléra;

— Que de son or il était chiche,

Mais qu’il goûtait fort l’Opéra;

挿絵(By みてみん)

……彼は自然を愛していた、

コロー氏と知り合えたものでと。

……まだ馬車を持っていなかった、

でも間もなく手に入るだろうと。

— Qu’il raffolait de la nature,

Ayant connu monsieur Corot;

— Qu’il n’avait pas encor voiture,

Mais que cela viendrait bientôt;


……彼は大理石と煉瓦を愛し、

黒檀と金色の木材を愛したと。

……三人までも、その工場に

勲章持ちの職長が居たのだと。

— Qu’il aimait le marbre et la brique,

Les bois noirs et les bois dorés;

— Qu’il possédait dans sa fabrique

Trois contre-maîtres décorés;


……他のものは別として、

北部だけで2万株は持っていたと。

ほんの僅かな金額で、

オペノールの額縁を見つけたと。

— Qu’il avait, sans compter le reste,

Vingt mille actions sur le Nord;

Qu’il avait trouvé, pour un zeste,

Des encadrements d’Oppenord;

挿絵(By みてみん)

……買ってやるぞと(地の果て(ルザルシュ)までも!)

骨董品に首まで埋もれるほど、

そして『総主教の市場』に於ても

何度も大商(おおあきな)いをしたのだと。

— Qu’il donnerait (fût-ce à Luzarches!)

Dans le bric-à-brac jusqu’au cou,

Et qu’au Marché des Patriarches

Il avait fait plus d’un bon coup;


……あまり人を愛さず、妻も

母もだが、……しかし信じたのだと

魂の不滅というものを、

ニボワイエを読んでもいたのだと!

— Qu’il n’aimait pas beaucoup sa femme,

Ni sa mère; — mais qu’il croyait

À l’immortalité de l’âme,

Et qu’il avait lu Niboyet[1]!


……肉体的な愛に傾倒した、

滞在するのも退屈なローマでは、

結核に痩せ細った女性が、

彼への愛に死んだとか。

— Qu’il penchait pour l’amour physique,

Et qu’à Rome, séjour d’ennui,

Une femme, d’ailleurs phthisique,

Était morte d’amour pour lui.


三時間半もの間ずっと、

トゥルネーから来たこのおしゃべり男、

語り尽くした、人生を。

こっちの頭がくらくらするほど。

Pendant trois heures et demie,

Ce bavard, venu de Tournai,

M’a dégoisé toute sa vie;

J’en ai le cerveau consterné.


この苦しみを言葉にするなら、

それはもう果てしなくなるのでは。

ずっと考えていた、憎しみを抑えながら、

「せめて、眠ってしまえれば!」

S’il fallait décrire ma peine,

Ce serait à n’en plus finir;

Je me disais, domptant ma haine:

«Au moins, si je pouvais dormir!»


落ち着きのない人のように、

といって立ち去る勇気もなくて、

私はしきりに椅子を揺らし、

奴が串刺しにされるのを夢見て。

Comme un qui n’est pas à son aise,

Et qui n’ose pas s’en aller,

Je frottais de mon cul ma chaise,

Rêvant de le faire empaler.


この怪物、名はバストーニュ、

災いの前に高飛び。

私も、逃げようガスコーニュ、

さもなくば入水、

Ce monstre se nomme Bastogne;

Il fuyait devant le fléau.

Moi, je fuirai jusqu’en Gascogne,

Ou j’irai me jeter à l’eau,


もしこのパリで、奴が恐れるこの街で、

我が途上にまだ居たなら、

皆が帰った後にまで、

トゥルネーから来たこの災いが。

Si dans ce Paris, qu’il redoute,

Quand chacun sera retourné,

Je trouve encore sur ma route

Ce fléau, natif de Tournai.


Bruxelles, 1865.

訳注

monsieur Corot: 風景画家カミーユ・コローのことであろう。原文は「有名なコロー氏を持っている」としか書いてないが、当然、その作品を持っているという意味


le Nord: フランス語で「北部」というと、Nord県とPas-de-Calais県を指す


Oppenord: 専ら室内装飾を手掛けたジル=マリー・オペノールGilles-Marie Oppenordt (1672 – 1742)のことであろう


Luzarches: パリの北30kmに位置する村。

「ルザルシュから他の近隣の町へは直接行くことができない。D'autres communes limitrophes ne peuvent pas être directement rejointes depuis Luzarches. 」

という地形のため、「地の果て」扱いされたようである


Marché des Patriarches: 嘗てパリに存在した巨大市場。1832年に屋根付市場が完成し、19世紀には古物商の集積地になっていた。


原註

1. ニボワイエ氏が何をしているのかはさておき、ボードレール氏は韻を踏むことにこだわる人物ではないので、このしつこい人物はニボワイエ氏の著作を読んだことを自慢し、その勇気を誇示していると推測せざるを得ない。

(編集者注)

Nous ne savons ce que vient faire ici M. Niboyet; mais M. Baudelaire n’étant pas un esclave de la rime, nous devons supposer que l’importun s’est vanté d’avoir lu les œuvres de M. Niboyet, comme ayant tous les courages.

(Note de l’éditeur.)


Niboyet: ウジェニー・ニボワイエ(Eugénie Niboyet; 1796 - 1883)は、フェミニストの走り。二月革命(1848)臨時政府の許で、女性の自由と権利のために闘った「1848年の女性たち」の中心人物として、機関紙『女性の声』(1848年3月第1号〜6月第46号)を創刊・主宰した。


phthisique: 結核患者の痩せ細った様子を指す。19世紀には普通だったが、今ではほとんど使われない言葉。ヴェルディのオペラ『椿姫』La traviata(1853)のことかと思ったが、舞台はパリ、初演はヴェネツィア。ローマは出てこない


Tournai: ベルギー最古の都市。フランク王国すなわちフランスの始まりでもある。2000年前にローマ帝国の兵営都市トゥルナカム Tornacum として建設され、5世紀にフランク人サリ族が占領、その都となった


Gascogne: フランス南西部、ボルドーやアルマニャックを擁するワインの産地。フランスの東北に位置するフランドル(ベルギー)から一番遠いフランスとの意であろう

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