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第十一景 ツナミ
私は今、ツナミに流されている。
この下には村があった。
この下には家があった。
この下には畑があった。
私が毎朝観ていたあの山に向かってツナミに流されている。
私の隣りを無言で父が流されて行った。
その後ろを母が流されて行く。
私はたぶん、死ぬのだろう。
長い髪の毛の女が流されて行く。
片手を振りながら男が流されて行く。
犬が流されて行く。
みな、無言である。
突然、波は引き波に変わった。
私は流れて来た板に捕まった。
私は覚悟した。
周りの景色の動きは、現生最後の私の観る景色に成るはずだ。
しかし、今は脳裏に刻む必要は無い。
今の私は心臓が動いているだけのムクロである。
目を瞑るろう。
何も考えずに流されて行こう。
あと数時間、数分後には黄泉の世界にたどり着くはずだ。
神に感謝・・・神に感謝・・・もう一度、神に感謝。




