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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
静寂の森に潜む影

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第2話 静かな朝と、新たな依頼

翌朝。 昨夜の喧騒が嘘のように、 皇国国境の町は冷たい空気に包まれていた。

ラースは宿の窓を開け、 深く息を吸い込んだ。


(……頭は冴えてる。昨日の疲れも残ってない)


軽く身体を伸ばし、 装備を整えると、

まだ人影の少ない冒険者ギルドへ向かった。

ギルドの扉を押し開けると、

木の香りと紙の匂いが混ざった、 静かな朝の空気が広がっていた。

受付嬢が書類を整理している。

奥の酒場はまだ開いておらず、 冒険者の姿もまばらだ。

ラースは依頼掲示板の前に立ち、 一枚一枚を丁寧に目で追った。


(……討伐、護衛、採取……)


その中で、 一枚の依頼票が目に留まった。


『北西の森にある村より 魔獣駆除依頼』


対象は―― 森林狼、猪、その他中型魔獣。


(……駆除数に応じて追加報酬、か)


ラースは依頼票を手に取り、 受付へ向かった。



受付嬢は依頼票を見ると、 少しだけ眉を寄せた。


「その依頼……最近、魔獣が増えているらしくてね。

 村の人たちも困っているみたい」

「増えている……?」

「ええ。

 普段は森林狼も猪も、そこまで人里に近づかないのに、

 ここ数週間で急に出るようになったって」


ラースは静かに頷いた。


(……牙熊の件もあったし、魔獣の動きが変だ)


受付嬢は地図を広げ、 指で道筋を示す。


「街道を北西に進んで、

 途中の立て看板から森へ入ると村に着くわ。

 馬なら一日、徒歩なら二〜三日ね」

「分かりました。受けます」


受付嬢は微笑んだ。


「気をつけてね、ラース君」



ラースはギルドを出ると、 市場で矢、水袋、干し肉、握り飯を買い揃えた。

馬の様子も確認し、 首を軽く撫でる。


「頼むぞ。今日も」


馬は鼻を鳴らし、 ラースの手に頬を寄せた。


(……行くか)


鞍に跨がり、 街道へ向かって馬を走らせる。

朝の光が木々の間から差し込み、 影が揺れる。


(昨日の打ち上げ……みんな楽しそうだったな)


ラースはふと笑みを浮かべた。


(俺も……悪くなかった)


だがすぐに表情を引き締める。


(気を抜くな。魔獣が増えているなら、何か理由がある)



街道は広く、走りやすい。 馬の蹄が土を叩く音だけが響く。

二度目の休憩地点に着くと、

ラースは馬を水場へ連れていき、 自分は握り飯を食べた。


(……順調だな)


だが、森の奥から吹く風に、 微かな“ざわつき”を感じた。


(……気のせいか?)


風の匂いが、 いつもより重い。


休憩を終え、 再び馬を走らせる。

やがて、 街道脇に立てられた木の看板が見えた。


『この先 森林村』


ラースは馬の向きを変え、 森の中へ続く細い道へ入った。

半刻ほど進んだ時―― 視界の先に、灰色の影が動いた。


(……森林狼)


ラースは馬上で弓を構え、 矢をつがえる。

ヒュッ―― ドスッ!

矢は狼の首元に突き刺さり、 そのまま倒れ込んだ。


(1頭だけ……?)


森林狼は本来、群れで行動する。 単独でいるのは不自然だ。


(やっぱり……何かおかしい)


ラースは狼を馬の後ろに括りつけ、 さらに半刻ほど進んだ。



木々の間から、 土塀に囲まれた村が見えてきた。

簡素な土塀。 木の扉。 最低限の防衛設備。

だが―― どこか“怯え”が漂っていた。

ラースが門に近づくと、 門番が槍を構えたまま声を張り上げた。


「若いの、この村に何をしに来た?」


ラースは落ち着いた声で答えた。


「魔獣駆除の依頼を受けました。

 来る途中で、森林狼を一頭仕留めています」


狼を見せると、 門番の表情が一変した。


「おお……!  早速駆除してくれたのか。入ってくれ!」


扉が開き、 村の空気が流れ込む。

重い。 静かすぎる。


(……やっぱり、何かあるな)


門番は村の奥を指さした。


「詳しい話は村長のところで聞いてくれ」


ラースは頷き、 村長宅へ向かって歩き出した。

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