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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
少年は冒険者として立つ

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第4話 牙熊との遭遇――若手エースの実力が露わになる

2日目の昼前。

森の中の道は、木々が生い茂り、 陽光が細い筋となって地面に落ちていた。

馬車の車輪が土を踏みしめる音。 馬の鼻息。 冒険者たちの軽い雑談。


そのすべてが、 突然―― “異物”に変わった。

ラースの背筋に、 ぞわり、と冷たいものが走った。


(……来る)


理由は分からない。

だが、確信だけがあった。


ラースは馬上で弓を構え、 矢をつがえる。


「後方から何か来る!」


声が森に響いた瞬間―― 空気が変わった。



バキッ……バキバキッ……!

木が折れる音が、 地面を震わせるように響く。

Dランクの若者たちが振り返り、 顔を青ざめさせた。


「な、なんだよ……この音……」

「魔物……? いや、もっと……でかい……」


ラースは左後方へ弓を向けたまま、 呼吸を整える。


(距離……まだ見えない。

 でも、速い。このままだと追いつかれる)


馬車の御者が叫ぶ。


「速度上げるぞ! しっかり掴まれ!」


馬車が揺れ、 馬が嘶く。


その瞬間――

「がぁあああああああああ!!」


森を震わせる咆哮。

姿を現したのは、 体長4メートルを超える巨大な牙熊だった。

黒い体毛が逆立ち、 血走った目が獲物を捉える。


Dランクの一人が悲鳴を上げた。


「や、牙熊……!?  なんでこんな場所に……!」


牙熊が姿を見せた瞬間、 ラースの指が離れた。


ヒュッ―― ドスッ!


矢は一直線に飛び、 牙熊の右目に突き刺さった。


「グァッ……!」


牙熊が怒り狂ったように吠える。

Cランクのリーダーが叫ぶ。


「ナイスショットだ、ラース!

 だがまだ来るぞ、距離を取れ!」


馬車は速度を上げ、 森の道を揺れながら進む。

ラースは次の矢をつがえ、 連続で放つ。


ヒュッ! ヒュッ!

だが―― 2矢、3矢は牙熊の分厚い体毛に弾かれた。


(……硬い)


ラースは歯を食いしばる。


(この距離じゃ、貫通しない)



牙熊は怒り狂い、 木々をなぎ倒しながら迫ってくる。

バキッ! ドガァッ!

木が折れ、 破片が飛び散る。

馬車が揺れ、 Dランクの若者たちが必死にしがみつく。


「ひっ……!」

「落ちるな! 掴まれ!」


Cランクの冒険者たちも焦りを隠せない。


「この速度でも追いつかれるのかよ……!」

「森の中で牙熊は反則だろ……!」


ラースは最後の矢をつがえた。


(……ここで仕留める)


呼吸が静かになる。

周囲の音が遠のく。

視界の中心に、 牙熊の頭部だけが浮かび上がる。


(狙うのは――脳天)



ヒュッ―― 空気を裂く音。

矢は一直線に飛び、 牙熊の頭頂部へ吸い込まれるように突き刺さった。

ドスッ!


「グァッ……!」


牙熊は後ろ足で立ち上がり、 大きくのけぞった。

その巨体が揺れ、 木々がざわめく。

だが―― 追ってこなかった。


馬車はそのまま森を抜け、 しばらく走り続けた。

やがて、 Cランクのリーダーが叫ぶ。


「……止まった!  追ってきてない!」


商隊が速度を落とし、 ようやく通常のペースに戻る。

Dランクの若者たちは、 震える手で胸を押さえた。


「た、助かった……」

「ラース君……すげぇよ……」


ラースは弓を下ろし、 静かに息を吐いた。


(……守れた)


背中に、 あの日のセリアの温もりが蘇る。


(あの時と同じだ。  “守る”って、こういうことなんだ)


その後は特にトラブルもなく、 商隊は皇国国境付近の町へ到着した。

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