第2話 孤児院組の共同生活――小さな家で育つ“自立”の芽
ラースが借りた一軒家は、 孤児院から歩いてすぐの場所にある。
木造の二階建て。 外壁は少し古いが、
朝日が差し込むと木の香りがふわりと広がる、 温かい家だった。
キッチンでは、ミーナがパンを焼いていた。
香ばしい匂いが部屋いっぱいに広がる。
「レオ、そっちのベーコンもう焼けてるよ。焦げちゃう」
「わ、分かってるって! ミーナ、急かすなよ!」
レオは慌ててフライパンを持ち上げ、 焦げかけたベーコンを皿に移した。
ミーナはくすっと笑う。
「レオって、ほんと料理苦手だよね」
「うるせぇよ……努力してんだよ、俺は」
階段を降りてきたトムが、 大きく伸びをしながら言った。
「おはよー……って、レオ、また焦がしたのかよ」
「焦がしてねぇし!」
「焦がしてるよね?」 ミーナが即答する。
その横で、 エマが静かにテーブルを拭いていた。
「……今日の依頼、どうするの?」
エマの声は小さいが、 しっかりとした芯がある。
レオが答える。
「俺とトムは森の討伐依頼だな。
ラース君に教わった通り、慎重に行くぜ」
トムも頷く。
「うん。
俺たち、ラースに甘えてるって分かってるし……
だからこそ、ちゃんと稼がねぇとな」
その言葉には、 15歳の少年らしい不器用な決意が滲んでいた。
ミーナはパンを切りながら言った。
「私とエマは、今日は薬草採り。
午後は裁縫の先生のところに行くよ」
エマも小さく頷く。
「……冒険者だけじゃ、将来が不安だから」
ミーナは笑った。
「そうそう。
ラースみたいに強くなれればいいけど、
私たちは私たちの道を探さないとね」
エマは少しだけ頬を赤らめた。
「……でも、ラースさんの教えは役に立ってる。
薬草の見分け方とか、危険な場所の判断とか」
ミーナも同意するように微笑む。
「うん。
あの人、なんでもできるからね。
ほんと、すごいよ」
4人は自然とラースの話になる。
トムが言う。
「ラース、最近さらに強くなってるよな。
剣も弓も、もう俺たちじゃ相手にならねぇ」
レオも頷く。
「なんつーか……
ラース君って、俺たちの“先”をずっと歩いてる感じだよな」
ミーナが笑う。
「でも、置いていかれるって感じじゃないよね。
ちゃんと手を伸ばしてくれるっていうか」
エマが静かに言葉を添える。
「……うん。
ラースさんは、私たちのことを“家族”だと思ってる」
その言葉に、 全員が自然と頷いた。
ラースは彼らにとって―― 兄であり、 目標であり、 支えであり、 帰る場所だった。
朝食を囲む4人の姿は、 どこにでもある家族のようだった。
焦げたベーコンを笑い合い
ミーナの焼いたパンの香りが広がり
エマが静かに食器を並べ
トムとレオが今日の予定を話し合う
ラースがいなくても、 この家には“ラースの影”があった。
彼が教えた生活の知恵、 彼が作ったルール、 彼が守ってきた絆。
それが、 4人の生活を支えていた。
(……ラース、今日も無事だといいな)
誰が言うでもなく、 そんな想いが家の中に満ちていた。




