第2話 15歳、王国生誕祭へ――華やかな王都と、静かな期待
ラースが冒険者になってから三年。
孤児院の生活は、以前とは比べものにならないほど豊かになっていた。
破れていた寝具は新しくなり、食卓には野菜が増え、
冬には暖炉の薪が十分に積まれるようになった。
子供たちは笑顔で働き、年長者は年下に教え、
孤児院はひとつの“家族”として形を成していた。
(……みんな、強くなったな)
ラースはその光景を見て、胸の奥が温かくなるのを感じた。
そして――彼自身も、十五歳になっていた。
その日は、王都全体が浮き立っていた。
王国生誕祭。
一年で最も大きな祭りであり、王都の通りは朝から人で溢れていた。
色とりどりの旗が風に揺れ、露店からは香ばしい匂いが漂い、
楽団の音楽が街中に響き渡る。
ラースは人混みの中を歩きながら、胸の奥に小さな高揚感を覚えていた。
(……こういうのも、悪くないな)
普段は依頼と孤児院の往復ばかり。
こうして自由に街を歩くのは久しぶりだった。
ラースは露店をひとつひとつ見て回った。
焼き菓子の甘い匂い。串焼きの香ばしい煙。
職人が作った木彫りの小物。子供たちが喜びそうな玩具。
(ミーナはこの髪飾り、喜ぶかな)
(トムには……いや、あいつはこういうの照れるか)
(レオには本がいいかもしれない)
孤児院の子供たちの顔が次々と浮かぶ。
ラースは自然と笑みをこぼした。
十五歳になったラースは、背が伸び、筋肉がつき、
冒険者としての風格が出てきていた。
露店の主人が声をかける。
「兄ちゃん、冒険者かい?いい体してるな!」
ラースは少し照れながら頷いた。
「まぁ、そんなところです」
「ははっ、若いのに立派だねぇ!」
そんな何気ない会話が、ラースには少し誇らしかった。
露店で小物を選んでいた時だった。
(……ん?)
胸の奥が、ほんのわずかにざわついた。
森で感じた“異常”とは違う。
もっと柔らかく、もっと懐かしいような感覚。
(……なんだ、この感じ)
ラースは周囲を見渡した。
人混み。笑い声。音楽。露店の匂い。
どれも普通の祭りの風景。
だが――胸のざわつきは消えなかった。
(……気のせい、か)
ラースは小さく息をつき、露店の品物に視線を戻した。
その瞬間――
ドンッ!
強い衝撃がラースの胸にぶつかった。




