第1話 再集結――セシリアとの再会と“未来予測”
国境の砦は、まだ冬の冷気を引きずっていた。
石壁に触れれば、指先がじんと冷たくなるほどだ。
ラースは砦の中庭で、王国に残っていた護衛騎士のひとりと向き合っていた。
「セシリア様に伝えたいことがある。伝書鳩を頼めるか?」
護衛騎士は頷き、手早く小さな巻紙を鳩の足に括りつけた。
「……飛ばします。早ければ二週間ほどで、
セシリア王女がこちらに来られるでしょう」
鳩は羽ばたき、灰色の空へ吸い込まれるように飛び去った。
「二週間後からは、この砦か近くの町で待機を。
連絡が取りやすいように」
「分かった。場所が決まったら知らせる」
ラースは礼を言い、シャーリーのもとへ戻った。
シャーリーは砦の一室で、まだガルドの死の余韻を引きずっていた。
ラースが入ると、彼女は無理に微笑んだ。
「……セシリア様、来られるんですね」
「二週間後だ。それまでに装備を整える」
ラースは淡々と告げたが、その声には焦りと決意が混じっていた。
矢の補充、荷物袋、着替え、水袋。
二人は町へ向かい、必要な物資をひとつずつ揃えていった。
(……戦いは必ず来る。備えられるものは、すべて備える)
宿に戻ると、護衛騎士からの手紙が届いていた。
「砦に来てほしい」
ラースとシャーリーは急ぎ砦へ向かい、
そこで――
「無事でよかったわ……!」
セシリアが駆け寄ってきた。
シャーリーは思わず涙ぐみ、ラースは深く頭を下げた。
「はい……ですが、シャーリーの護衛のガルドは……俺たちを守って……」
シャーリーの表情が曇る。セシリアはそっと彼女の肩に手を置いた。
「ガルドの勇気は、あなたたちが生きていることで報われているわ」
シャーリーは唇を噛み、小さく頷いた。
三人は砦の会議室に入り、地図を広げて話し合った。
セシリアは真剣な表情で言う。
「教皇が成り代わられたとして……皇国はどう動くのかしら?」
ラースは前ループの記憶を思い返した。
「シャーリーが殺害されたと考えられる時期より後に、
皇国は突然、王国へ攻め込んできました。通常なら……今から二年後です」
セシリアは息を呑む。
「でも今回は、シャーリーがこちらにいる……」
「ええ。状況が変わっている以上、戦端が早まる可能性があります」
シャーリーも口を開いた。
「……あの侍従が黒幕なら、
きっと“せっかち”に物事を進めると思います。
私への指示も、いつも急かすようなものでしたから」
セシリアは深く頷いた。
「なら、早めに準備を整えるべきね」
セシリアは二人を見つめ、静かに告げた。
「ラース、シャーリー。あなたたち二人を、わたくしの直轄部隊に入れるわ」
ラースは即座に頷いた。
「分かりました」
シャーリーも決意を込めて頷く。
(……ここからが本当の戦いだ)
砦の外では、冷たい風が吹き荒れていた。
その風は、これから訪れる戦火の匂いを含んでいるようだった。




