第6話 国境突破後の喪失と決意
王国側の砦の門が閉じられた瞬間、
シャーリーは馬から降り、その場に膝をついた。
「……ガルドさん……」
震える声が、冷たい空気に溶けていく。
ラースは馬を降り、砦の門の向こう――
霧のかかった皇国側の道をじっと見つめていた。
(……来い、ガルド。お前なら……きっと……)
だが、どれだけ待っても、その道に人影は現れなかった。
砦の兵士たちは、
ラースとシャーリーのただならぬ様子に気づきながらも、
事情を聞けずに距離を置いていた。
砦の中は静かだった。風の音だけが、二人の耳に刺さるように響く。
シャーリーは両手で顔を覆い、涙をこぼした。
「……私のせいです……ガルドさんは……私を守るために……」
ラースはゆっくりと彼女の隣にしゃがみ、静かに首を振った。
「違う。ガルドは……自分の意思で戦った。誰かのせいじゃない」
そう言いながらも、ラースの胸には重い痛みがあった。
(……また、守れなかった)
前のループでも、ガルドはシャーリーを庇って死んだ。
そして今回も――同じ結末を迎えてしまった。
拳が震える。
(俺は……何も変えられていないのか?)
シャーリーは涙を拭い、震える声で言った。
「……ガルドさんは……いつも私を励ましてくれて……
どんな時も前に立ってくれて……なのに……また……」
ラースは彼女の肩に手を置いた。
「シャーリー。ガルドは……お前を守れて、きっと満足してる」
シャーリーは涙をこぼしながら、小さく頷いた。
「……でも……もう……会えないんですね……」
その言葉は、ラースの胸にも深く突き刺さった。
ラースは立ち上がり、砦の門の向こうを見つめた。
(ガルド……お前の死を無駄にはしない)
仮面の者たちは、皇国の中心にまで入り込んでいる。
教皇は成り代わられ、皇国はすでに“侵食”されている。
(このままでは……王国も、シャーリーも、セシリア様も……全て飲み込まれる)
ラースは静かに拳を握った。
(絶対に止める。この未来は……俺が変える)
その夜、砦の空は雲に覆われ、星ひとつ見えなかった。
シャーリーは泣き疲れて眠り、
ラースは砦の壁にもたれながら、眠れぬまま夜を過ごした。
風が吹くたびに、ガルドの笑い声が聞こえた気がした。
(……ありがとう、ガルド。お前が繋いだ命……必ず守る)
夜が明ける頃、ラースの瞳には迷いが消えていた。
ここから、王国への避難、そして仮面の者たちとの本格的な戦いが始まる。




