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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
“成り代わりの証”――皇国脱出と喪失

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第1話 王国への帰還と密談――“潜入作戦”の決定

皇国の城門を出てから、セシリア一行は静かに国境へ向かっていた。

夜明け前の空は薄い青に染まり、冷たい風が馬車の帷を揺らす。

ラースは馬上から周囲を警戒しつつ、セシリアの乗る馬車を見守っていた。

(……皇国の中心に、仮面の者が潜んでいる)

シャーリーの告白が胸に重く残っている。



国境の砦に到着すると、王国側の兵士たちがセシリアを出迎えた。


「セシリア様、ご無事の帰還を!」


セシリアは微笑み、外交上の礼儀を崩さずに応じる。

だが、砦の奥へ進むと、セシリアはラースを呼び止めた。


「ラース。……少し、話しましょう」


侍女と護衛たちに人払いを命じ、静かな部屋に2人きりになる。



セシリアは椅子に腰掛け、ラースをまっすぐ見つめた。


「ラース。これからのことを、改めて確認しましょう」


ラースは頷き、セシリアの前に立つ。


「あなたは王国に戻ったあと、冒険者として皇都へ再び向かうの」

「……はい」

「シャーリーとは“初めて会う”演出をして、

 その後、彼女の指名依頼という形で同行する。

 レオンたちと一緒に各地を巡り、仮面の者の痕跡を探すのよ」


ラースは拳を握った。


「教皇が成り代わられた場合は……?」


セシリアの表情がわずかに曇る。


「その時は、シャーリーを連れて王国へ逃げるわ。……必ず、守って」


ラースは深く頷いた。


「……はい。命に代えても」


セシリアはそっとラースの手を取った。


「ラース。あなたがいてくれるから、わたくしは戦えるのよ」


ラースはその手を握り返す。


「俺も……セシリア様がいるから、前に進めます」


2人の視線が重なり、互いの呼吸が近づく。



その夜、2人は静かに寄り添った。

戦いの前の、ほんの短い安息。

互いの温もりを確かめ合いながら、心の奥にある恐れと決意を共有した。


――また別々の道を歩む。

――だが、目的は同じ。

――必ず生きて戻る。


その想いが、2人の影をひとつに重ねた。



朝日が砦の石壁を照らす頃、セシリアは馬車に乗り込み、王都へ向けて出発した。

ラースは馬上からその背を見送る。


(……必ず、守る)


セシリアの馬車が見えなくなると、

ラースは深く息を吸い、冒険者装備へと着替えた。

そして――再び国境を越え、皇国側の砦へ向かって歩き出した。

皇国潜入作戦が、静かに幕を開けた。

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