第2話 懇親会前の打ち合わせ――“聖女候補”と仮面の影
来賓室に戻ると、セシリアは侍女にドレスの準備を任せ、ラースを手招きした。
「ラース、こちらへ」
セシリアは椅子に腰掛け、ラースに向き直る。
その表情は、王女としての冷静さと、ループ者としての緊張が入り混じっていた。
「夜の懇親会で、次世代の聖女候補と挨拶する時間があるわ」
セシリアは静かに言った。
「その時、あなたはわたくしの背後に立って、
“その子がシャーリーかどうか”を確認して」
ラースは頷いた。
「……もしシャーリーなら、
前ループで数年後に“成り代わられていた”ことになります」
セシリアの瞳が鋭くなる。
「つまり、仮面の者を率いる存在が、
皇国の内部にいる可能性が高いということね」
ラースは拳を握った。
「はい。シャーリーが“本物”のまま聖女になった後、
どこかのタイミングで仮面の者に殺され、成り代わられた……」
「その“どこか”が問題なのよね」
セシリアは深く息を吐いた。
ラースは前ループの記憶を思い返す。
「……気になるのは、なぜシャーリーたちが
“あのタイミング”で帝国国境へ派遣されたのかです」
セシリアも頷く。
「危険を認識していたはずなのに、あえて送り出した……?」
ラースは低く呟いた。
「誰かが意図的に、“シャーリーを死地へ送った”可能性があります」
セシリアの表情が固まる。
「……皇国の中枢に、仮面の者が潜んでいるということね」
その言葉は、皇城の静けさの中で重く響いた。
緊張した空気を破るように、侍女が明るい声で入ってきた。
「姫様、ドレスの準備が整いました!」
セシリアは微笑み、立ち上がる。
「ありがとう。……ラース、あなたもよ」
「えっ、私もですか?」
「護衛としての礼装よ。皇国の懇親会は格式が高いの」
侍女は嬉々としてラースに礼装を着せ始めた。
「まぁ、よくお似合いですわ!」
ラースとセシリアは微妙な表情を浮かべたが、侍女は満足げだった。
(……慣れない)
だが、外交の場では“見た目”も武器になる。
セシリアは鏡越しにラースへ言った。
「ラース。あなたの“目”が頼りよ」
ラースは真剣に頷いた。
「必ず、見抜きます。シャーリーが本物かどうか……
そして、仮面の者が紛れていないか」
セシリアは静かに微笑んだ。
「ええ。わたくしたちは、もう後戻りできないわ」
2人は視線を交わし、皇国の中心へ向かう覚悟を固めた。




