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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
皇国の中心に忍び寄る仮面

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第3話 懇親会――聖女候補との対面と、“本物”たちの確認

皇城の大広間は、天井まで届く巨大なシャンデリアが淡い光を放ち、

白と金を基調とした装飾が“宗教国家の威厳”を静かに主張していた。

ラースはセシリアの背後に控え、会場全体を見渡す。


(……人が多い。だが、仮面の者が紛れていてもおかしくない)


セシリアは王女としての完璧な微笑みを浮かべ、

教皇、大司教、枢機卿たちと挨拶を交わしていく。

ラースはその一人ひとりを観察した。


目の動き

呼吸のリズム

表情の硬さ

声の抑揚


(……今のところ、決定的な違和感はない)


だが、胸の奥にざらつく感覚は消えない。



「次は、聖女候補のシャーリー様です」


侍女の声に、ラースの心臓がわずかに跳ねた。

白いローブを纏った少女が、ゆっくりとセシリアの前へ歩み出る。

柔らかな金髪。優しい瞳。控えめな笑み。


(……シャーリーだ)


一目で分かった。

前ループで共に戦い、共に死んだ少女。

ラースは息を呑む。


(この時点では……本物だ)


シャーリーは丁寧に礼をし、セシリアに挨拶をした。


「王国のセシリア様。お会いできて光栄です」


セシリアも微笑み返す。


「こちらこそ。皇国の聖女候補にお会いできて嬉しいわ」


ラースはその背後で、シャーリーの動きを細かく観察した。

目の動きは自然

呼吸も乱れていない

声の震えもない

“仮面の者特有の違和感”は感じられない


(……間違いない。このシャーリーは“本物”だ)


胸の奥に、わずかな安堵が広がった。



会場を見渡すと、見覚えのある姿が目に入った。


(……レオン、ミリア)


前ループで共に戦い、そして“顔を奪われた”仲間たち。

ラースは彼らの表情を観察した。

レオンは仲間と談笑し、ミリアは侍女たちと穏やかに話している。


(……違和感はない。この2人も“本物”だ)


胸の奥に、ほんの少しだけ温かいものが灯った。


(今はまだ……誰も成り代わられていない)


だが同時に、その事実が“恐怖”にも変わる。


(つまり……これから“成り代わられる”ということだ)



懇親会は、特に異常もなく静かに終わった。

セシリアとラースは来賓室へ戻り、侍女が扉を閉める。


「……何も起きなかったわね」


セシリアが小さく息を吐く。

ラースも頷いた。


「はい。シャーリーも、レオンも、ミリアも……全員“本物”でした」

「でも、それは……これから“何かが起きる”ということよね」


セシリアの声には、静かな覚悟が宿っていた。

ラースも同じ思いだった。


(仮面の者は、まだ動いていない。だが、必ず動く)


その時――扉がノックされた。


「お嬢様。来客がお見えです」

「誰かしら?」

「……聖女候補のシャーリー様です」


ラースとセシリアは、同時に顔を見合わせた。


(なぜ……?)

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