第3話 黒づくめ部隊との遭遇・セシリア姫とカインとの再会
南方での活動を続けて半年以上。
ラースはBランク冒険者として順調に実績を積み、
情報収集のために各地を回っていた。
だが――黒騎士に繋がる情報は一切得られなかった。
カインの村も、「この辺りのはずだ」という場所に行っても、
村そのものが存在しなかった。
「……523年は、本当に“空白”だな……」
焦りと不安が胸を締め付ける。
そんなある日、南の国境近くの村までの護衛依頼を終え、帰路についた時だった。
森の中の馬車道。木々の間から差し込む陽光が揺れ、
風が草を撫でる音が心地よい。
だが、後方から砂埃が舞い上がるのを見た瞬間、ラースの背筋が凍りついた。
豪華な馬車。護衛の騎馬隊。
そして――その後ろを追う黒づくめの部隊。
「……来たな」
前回と同じ光景。
ラースは迷わなかった。
馬を加速させながら、指先にマナを集める。
「アイスランス!」
鋭い氷の槍が黒づくめの兵の胸を貫き、そのまま馬ごと倒す。
「助太刀する!」
ラースは叫び、さらに火球を放つ。
「ファイアボルト!」
火球が黒づくめの兵の足元で炸裂し、馬が転倒する。
護衛の騎士たちがその隙に斬り込む。
ラースは馬を飛び降り、剣を抜いて戦場へ飛び込んだ。
氷と火の魔法を織り交ぜながら、黒づくめの兵を次々と倒していく。
今回も――黒づくめ部隊を全滅させるつもりで戦っている。
最後の一人が倒れた時、森の中に静寂が戻った。
護衛隊長が駆け寄ってくる。
「助かった……! あなたのおかげで……!」
ラースは軽く頷いた。
「気にするな。通りがかっただけだ」
その時、馬車の扉が開いた。
金の髪が陽光を受けて輝き、深い青の瞳がラースを見つめる。
「助けてくれてありがとう」
護衛隊長が慌てて言う。
「姫様、危険です!」
少女は微笑んだ。
「私はセシリア・ランス。この国の王女よ」
ラースは深く頭を下げた。
「冒険者のラースです。ご無事で何よりです」
――ようやく会えた。
胸の奥で、長い緊張がほどけるような感覚があった。
その時、木陰から一人の若者が姿を現した。
「何奴!」
護衛が剣を構える。
ラースはセシリア姫の前に立ち、若者を見据えた。
だが――その顔を見た瞬間、ラースは息を呑んだ。
「……カイン……」
若者は膝をつき、深く頭を下げた。
「黒づくめの連中に……村を滅ぼされたんです。
あなたが倒してくれたんですね……!」
声が震えていた。
「こいつらに……恨みがあるんです……
本当に……ありがとうございます……!」
土下座して感謝するカイン。
ラースは胸が痛んだ。
――この青年を、黒騎士と戦わせてはいけない。
セシリア姫が二人を見渡し、静かに言った。
「あなたたち、この国を守るために、私の部隊へ入ってくれないかしら?」
ラースは迷わず答えた。
「……ぜひ」
カインも顔を上げ、力強く言った。
「さっきのような輩と戦うのでしたら、ぜひ」
こうして、ラースとカインは再びセシリア姫の部隊へ入ることになった。
ラースには“目的”がある。
ラースは静かに拳を握った。
「……絶対に、変えてみせる」




