第2話 冒険者として実績を積む・情報収集
冒険者ギルドで登録を済ませたラースは、523年という未知の世界線で、
まずは金を稼ぎつつ情報を集めることに集中した。
「……この年なら、何か掴めるはずだ」
そう思っていた。
だが、523年はラースにとって“空白”だった。
最初の依頼は薬草採取。
次は小型魔物の討伐。
村への護衛。
前回までの経験が身体に残っているため、
ラースは驚くほどスムーズに依頼をこなした。
1ヶ月後、ギルドの掲示板にラースの名前が載る。
【昇格:Cランク】
ミーナが笑顔で言った。
「おめでとう、ラース。早いねぇ」
だが、ラースの胸は晴れなかった。
「……情報が、何もない」
半年後、
【昇格:Bランク】
依頼の幅が広がり、商人や貴族の護衛も受けるようになった。
護衛の合間に、ラースは冒険者仲間や商人たちに聞き込みをした。
「黒い鎧の騎士? そんな化け物、聞いたこともないな」
「不死身? 魔物の話か?」
「帝国軍にそんな奴がいるって噂は……いや、聞かないな」
どれだけ聞いても、黒騎士に繋がる情報は一切出てこなかった。
「……本当に、何もないのか……?」
焦りが胸を締め付ける。
ラースは地図を広げ、カインが言っていた“村の方向”を思い出した。
「確か……この辺りのはずだが……」
523年なら、まだ村は襲われていないはずだ。
だが――
「……ない……?」
ラースは立ち尽くした。
地図上の位置に村はなかった。
近くの村人に聞いても、
「その先に村? いや、何もないよ」
「昔から森しかない場所だが?」
「開拓予定地ならあるが……村なんてあったか?」
まるで、ラースが聞いた“カインの村”が最初から存在しなかったかのようだった。
「……どういうことだ……?」
胸の奥に冷たいものが広がる。
村が存在しない。なら、カインはどこで生まれ、どこで育った?
523年の世界線は、ラースの知る歴史と微妙にズレている。
「……これじゃ、カインの過去も追えない……」
セシリア姫についても、ラースは情報を集めようとした。
「セシリア姫? 最近は王都に戻られてるって話だな」
「いや、皇国との親善に行ってるって聞いたぞ」
「地方の領主のところに視察に行ったらしい」
情報はバラバラで、どれが正しいのか分からない。
523年のセシリア姫は、ラースにとって“霧の中の存在”だった。
「……この年は、本当に何も掴めない……」
そんなある日、ギルドで受けた護衛依頼を終え、
村から王都へ戻る森の馬車道を進んでいた時だった。
後方から砂埃が舞い上がる。
豪華な馬車。
護衛の騎馬隊。
黒づくめの部隊。
「……来たな」
ラースは馬を走らせ、アイスランスと火球で黒づくめ部隊を全滅させた。
護衛隊長が礼を言い、馬車から少女が降りてくる。
「私はセシリア・ランス。この国の王女よ」
ラースは深く頭を下げた。
――ようやく、未来に繋がる“鍵”に触れた。
胸の奥で、長い緊張がほどけるような感覚があった。




