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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
未来へ繋ぐ告白と、予期せぬ死

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第1話 523年で目覚める。黒騎士の“異常性”に震えるラース

――胸を貫かれた瞬間。

焼けるような痛み。肺の奥で何かが潰れる感覚。

視界が赤く染まり、世界が遠ざかっていく。


「……っくはっ……!」


ラースは跳ね起きた。

喉が焼けるように痛い。

胸に手を当てると、そこには傷一つない。

息を荒げながら、しばらく天井を見つめた。


「……また、戻ったのか……」


だが、今回は違う。

胸の奥に、これまで以上の“恐怖”が残っていた。


黒騎士は――矢が刺さっても倒れなかった。

針鼠のように矢が突き刺さり、大火球を浴びて顔が黒焦げになっても、

まるで何事もなかったかのように突進してきた。

周囲の兵を吹き飛ばし、ラースの胸を貫いた。


「……あれは……何なんだ……」


人ではない。

生きているとも思えない。

リビングデッドか、禁術か、あるいは――。


考えれば考えるほど、底なしの闇に落ちていくような感覚があった。

ラースは頭を振った。


「……まずは現状把握だ」


いつものボロい服。

金はない。

腹は減っている。


路地裏から出て、日雇い仕事を探しながら今が何年かを確認する。


「王国歴523年だよ」

「……523年……?」


ラースは思わず立ち止まった。


前回は524年。その前は525年。さらに前は526年。

つまり、ループは526 → 525 → 524 → 今回は523と、

さらに1年遡ったことになる。


「……限界の5年以内とはいえ……なぜ、また早まった……?」


胸の奥に、言いようのない不安が広がる。

523年――ラースにとって完全な未知の年だ。

カインはまだ村で暮らしているはずだが、どこにいるのかも分からない。

セシリア姫が何をしているのかも知らない。

王都にいるのか、地方にいるのか、外交に出ているのかすら分からない。

黒騎士の影はまだ薄いはずだが、何も確証はない。


「……情報が、何もない……」



ラースは歩きながら、黒騎士の姿を思い返した。

矢が刺さっても怯まない。

痛みを感じている様子もない。

血も流れない。

そして――大火球を浴びて顔が黒焦げになっても、

動きが鈍るどころか、むしろ速度が増したようにすら見えた。


「……あれは、倒せる相手じゃない」


「……どうする……?」


ラースは拳を握った。


黒騎士を倒せないなら、カインを戦わせないしかない。


だが――そのためには情報が必要だ。


黒騎士の正体。

不死身の理由。

死に戻りの仕組み。

未来の侵攻。


「……情報がなければ、未来は変えられない」



523年――ラースが初めて経験する“最も早い年”。

この年には、まだ何も起きていない。

カインの村はまだ襲われていない。

セシリア姫がどこにいるかも分からない。

黒騎士の影もまだ遠い。


「……この年なら、何か掴めるかもしれない」


だが、同時に――ラースには何の地位も信用もない。

情報を得るには、まず冒険者として実績を積むしかない。

腹が鳴った。


「……まずは、冒険者になって日銭を稼ぐか」



冒険者ギルドへ向かうと、受付にはやはりミーナがいた。

前回よりさらに幼い。だが、受け答えは変わらない。


「ミーナか?」


ミーナは目を見開いた。


「本当にラースなのかい? 随分久しぶりだね。どこで何してたんだい?」


世間話になりそうだったので、ラースは手短に登録と装備の貸し出しを頼んだ。


こうして、ラースの“523年ループ”が始まった。


今回は――黒騎士の正体を暴き、未来を変えるためのループ。

ラースは静かに拳を握った。


「……絶対に、変えてみせる」

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