第4話 別ルートでも収束する未来
セシリア姫の部隊に入ってからの数年は、
ラースにとって初めて“未来が変わるかもしれない”と感じられる日々だった。
南の国境で神聖皇国と戦い、
カインは瞬く間に頭角を現し、若くして将軍へと昇りつめた。
ラースも副将としてカインを支え、二人は幾度も戦場を駆け抜けた。
「ラースさん、今日も頼りにしてるよ」
「お前こそ、無茶しすぎるなよ」
そんな軽口を交わせるほど、二人の絆は深まっていた。
――このルートなら、未来は変えられるかもしれない。
ラースはそう信じ始めていた。
だが、運命は残酷だった。
4年が過ぎた頃、南の神聖皇国と西のドラグーン帝国が同時に侵攻してきた。
半年後、西の国境が突破されたとの報が届く。
王都ランスが危ない。
セシリア姫は苦渋の表情で言った。
「神聖皇国軍を押し返した隙に、カイン将軍の一軍で帝国軍の背後を討つしかないわ」
ラースは胸がざわついた。
――この流れは……知っている。
「カイン、ひとつだけ言っておく」
「ん?」
「敵将と相まみえたら……絶対に動きを止めるな」
カインは笑った。
「ラースさんも心配性だなぁ。大丈夫だよ。敵に容赦はしないさ」
その笑顔が、胸に刺さった。
数日間、馬を走らせ続け、王都ランスの西側が見える丘に到着した。
そこには、黒い波のように押し寄せる帝国軍の姿。
「突撃!」
カインの号令で、一軍は帝国軍の背後から急襲した。
奇襲は成功し、帝国軍の陣形が乱れる。
ラースも剣を振るい、敵兵を次々と倒していく。
――このまま押し切れる。
そう思った瞬間だった。
戦場の奥に、黒い鎧を纏った巨躯が見えた。
黒騎士。
ラースの背筋が凍る。
「カイン、行くな……!」
叫ぶより早く、カインは馬を走らせていた。
敵兵をなぎ倒し、一直線に黒騎士へ向かう。
「まずい……!」
ラースも馬を走らせる。
だが、カインの速度には追いつけない。
カインは黒騎士へ一閃。その剣は黒騎士の鉄仮面を弾き飛ばした。
仮面が地面に転がり、黒騎士の素顔が露わになる。
その瞬間――カインの動きが止まった。
「アドル……?」
驚愕と混乱が入り混じった声。
カインの瞳が揺れる。
「カイン、止まるな!!」
ラースの叫びは、戦場の轟音にかき消された。
黒騎士の剣が、カインの胸を深々と貫いた。
「……あ……」
カインの身体が馬上で揺れ、そのまま地面へ崩れ落ちた。
「カイン!!」
ラースは馬を走らせるが――
ラースの馬が槍で突かれ、悲鳴を上げて倒れた。
ラースは地面に叩きつけられ、背中に激痛が走る。
息ができない。視界が揺れる。
そこに、黒騎士の影が迫った。
血塗られた剣が振り上げられる。
「……また……ここかよ……」
胸を貫かれた瞬間、ラースの意識は闇に沈んだ。




