第3話 護衛依頼と運命の出会い
半年が過ぎ、ラースは冒険者として確かな地位を築いていた。
薬草採取、小型魔物の討伐、村への護衛。
どの依頼も丁寧にこなし、気づけばランクはEからD、そしてCへ。
ギルドに顔を出すと、受付のミーナが笑顔で手を振る。
「ラース、今日は護衛依頼が入ってるよ。神聖皇国との国境近くの村までの護衛だってさ」
「分かった。受けるよ」
ラースは依頼書を受け取り、馬を借りて村へ向かった。
依頼主は、王都まで買い出しに来ていた村人たちだった。
荷馬車を守りながらの道中は順調で、魔物の影も薄い。
「助かったよ、ラースさん。あんた、腕が立つんだな」
「仕事だからな」
村に無事送り届け、ラースは一人で王都へ戻る道を進んだ。
森の中を抜ける馬車道。
木々の間から差し込む光が揺れ、風が草を撫でる音が心地よい。
――その時だった。
後方から、砂埃が舞い上がる。
「……馬車か?」
豪華な装飾の馬車。その周囲を固める騎馬隊。
そして、その後ろを追うように――黒づくめの部隊。
「……まずいな」
黒づくめが馬車に追いつき、戦闘が始まった。
護衛の騎馬隊は人数が少なく、押されている。
「……助けるしかないか」
ラースは馬を走らせた。
黒づくめの兵が馬車へ迫る。
護衛の騎士が必死に応戦するが、数が足りない。
その時――一人の若者が飛び込んだ。
「うおおおおっ!」
若者は剣を振るい、黒づくめの兵を二人、三人と吹き飛ばす。
「……強い……!」
その姿に、ラースは見覚えがあった。
だが、考える暇はない。
「俺も行く!」
ラースは黒づくめの兵に飛びかかり、剣を弾き、足を払って倒す。
戦況は徐々に護衛側へ傾き、黒づくめは撤退を始めた。
戦闘が終わると、護衛隊長がラースに駆け寄った。
「助かった。礼を言う」
「気にするな。通りがかっただけだ」
その時、馬車の扉が開いた。
一人の少女が降りてくる。
金の髪が陽光を受けて輝き、深い青の瞳がまっすぐラースを見つめた。
「助けてくれてありがとう」
護衛隊長が慌てて言う。
「姫様、危険です!」
少女は微笑んだ。
「私はセシリア・ランス。この国の王女よ」
ラースは驚きつつ頭を下げた。
「冒険者のラースです。ご無事で何よりです」
その横で、先ほどの若者が名乗る。
「カインです」
ラースはその顔を見て、息を呑んだ。
――あの時のカインだ。
戦場で死んだ将軍。何度もラースの前で命を落とした男。
だが今は、まだ若く、未来を知らない。
胸が締め付けられる。
セシリア姫がラースとカインを見渡し、静かに言った。
「あなたたち、この国を守るために、私の部隊へ入ってくれないかしら?」
ラースは迷った。
兵士としての未来は変えられなかった。
だが、姫の部隊なら――違う未来があるのかもしれない。
その時、カインが先に答えた。
「さっきのような輩と戦うのでしたら、ぜひ」
ラースは息を吸い、腹をくくった。
「……私もお願いします」
こうして、ラースは兵士ではなく、姫の直属部隊の一員となった。
それが、新たな運命の始まりだった。




