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転生したおじさん、いきなり放り込まれた戦場で生き延びたい  作者: なごやかたろう
別の道と避けられぬ運命

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第2話 冒険者ラース誕生。新しい日々の始まり

冒険者ギルドを出たラースは、借りたばかりのナイフと採取籠を手に、

王都ランス南の森へ向かった。

朝の光が差し込み、森の入口は薄い霧に包まれている。

湿った土の匂い、葉の擦れ合う音、遠くで鳥の鳴く声。

兵士として戦場に向かったときとは違う。

ここには、血の匂いも、怒号も、死の気配もない。


「……こういうのも悪くないな」


ラースは小さく呟き、森へ足を踏み入れた。



ミーナから聞いた薬草の特徴を思い出す。


「細長い葉……根元が赤い……」


だが、実際に探すとなると難しい。

似たような草ばかりで、どれが薬草なのか分からない。


「……これか? いや違うな……」


しゃがんだり立ったりを繰り返し、汗が額を伝う。


それでも、戦場で死と隣り合わせだった日々に比べれば、この苦労はどこか心地よかった。

やがて、根元が赤く、葉が細長い草を見つけた。


「……あった」


慎重に根元から掘り起こし、籠に入れる。

その瞬間、胸の奥に小さな達成感が灯った。


――兵士としては何も変えられなかった。

――だが、ここなら……何かできるかもしれない。



最低納入数を確保し、そろそろ戻ろうとしたときだった。


ガサッ……!


木の根元を掘り返す音。覗き込むと、大きな猪が土を掘っていた。


「……おいおい……」


猪はこちらに気づき、鼻息を荒くして振り向いた。


次の瞬間、地面を蹴って突っ込んでくる。


「来るか……!」


槍はない。盾もない。

あるのは、使い古されたナイフ一本。

だが、身体は覚えている。

ラースは横に跳び、猪の突進を紙一重で避けた。

風圧で身体が揺れる。土が舞い上がる。

猪が方向転換する前に、ラースは一気に距離を詰め、脇腹へナイフを突き立てた。


「……っ!」


猪が苦しげに鳴き、やがて動かなくなった。

ラースは息を整え、血抜きをして猪を背負った。

重い。だが、その重さが妙に嬉しかった。

「……やれるじゃないか、俺」



冒険者ギルドに戻ると、ざわっと空気が揺れた。


「おい、あれ……初心者じゃねぇか?」

「猪を一人で……?」

「すげぇな……」


ミーナが笑いながら手を振る。


「納品はこっちにお願い」


解体場に案内され、解体屋の親父が猪を見るなり目を丸くした。


「なかなかいい猪だな。一人でやったのか?初心者のわりにすげぇな」


ラースは照れくさく笑った。


「運が良かっただけだ」

「いや、これは実力だろうよ」


親父の言葉が、胸にじんわりと染みた。


――兵士としては何も変えられなかった。

――だが、冒険者としてなら……。


そんな希望が、静かに芽生え始めていた。




薬草採取、小型魔物の討伐、村への護衛。

ラースは一つひとつの依頼を丁寧にこなし、半年もするとランクはE→D→Cへ。

ギルドでも名前を覚えられ、「ラースさん、今日も依頼ですか?」と声をかけられるようになった。

兵士としては何度も死んだ。

未来を変えられなかった。


だが、冒険者としてのラースは――確かに前へ進んでいた。


「……悪くないな、この生活も」


ラースは空を見上げ、小さく笑った。


こうして、ラースの“冒険者としての新しい人生”が本格的に始まった。

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