第1話 戦闘の終わり――白い仮面が沈黙する
最後の仮面の者が地面に崩れ落ちた瞬間、 山麓の空気が一気に静まり返った。
風の音すら、 さっきまでの殺気を恐れているかのように弱まる。
護衛の騎士たちは肩で息をし、 剣を杖代わりにして立つ者もいた。
「……終わった、のか……?」
「全員……倒れています……」
ラースは弓を下ろし、 倒れた仮面の者たちを見回した。
血を流しながらも、 誰一人として声を上げていない。
(……やっぱり、普通じゃない)
その不気味さが、 戦闘の余韻として胸に残った。
護衛の一人が馬車の下を覗き込み、 顔をしかめた。
「車軸が……完全に折れている! これでは動けん!」
「我々の消耗も激しい…… どこかで休まねば……」
ラースは少し考え、 静かに口を開いた。
「……近くに、俺の知っている場所があります。
柵もあって多少は安全の筈です。雨除けの小屋もある」
護衛たちは驚いたように顔を上げた。
「そんな場所が……?」
「案内します。馬車は押していけば何とかなるはずです」
ラースは馬車の側へ歩み寄り、 軽く頭を下げた。
「俺はラース。 冒険者です。」
その名を聞いた瞬間―― 侍女エルナの目が大きく見開かれた。
「……ラース……? まさか……二年前の……!」
ラースもエルナの顔を見て、 記憶が鮮明に蘇る。
(……あの時の侍女さんか)
エルナは息を呑み、 馬車の中へ振り返った。
「セリア様……! この方は……!」
馬車の扉が開き、 フードを深く被った少女が姿を現した。
ラースと目が合った瞬間、 彼女の瞳が揺れた。
「……あなたは…… あの時、私を助けてくれた……ラースさん……?」
護衛たちは慌てて止めようとした。
「セリア様、危険です!」
「お下がりください!」
だがセシリアは一歩前に出て、 ラースに深く頭を下げた。
「今回も……助けてくださって、本当にありがとうございます」
ラースは一瞬驚き、 そして苦笑した。
「今回も……? ああ……やっぱり、あの時のセリアか。見違えたよ」
セシリアの頬がわずかに赤くなる。
ラースは心の中で思った。
(……やっぱり、いいとこのお嬢さんなんだな)
だが、それを口にすることはなかった。
護衛の隊長がラースに向き直る。
「……恩に着る。その場所まで案内してくれ」
ラースは頷き、 馬車の前に立った。
「じゃあ、行こう。すぐ近くだ」
戦闘の余韻を残したまま、 一行はラースの秘湯へ向けて歩き出した。
お読みいただきありがとうございます。
ブックマークが遂に2桁に!
評価やブックマークをいただけると励みになります。
今後もよろしくお願い致します。




