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第25話 外部勢力が揺らぐ評価

 胸の奥に灯った熱は、まだ静かに揺れているだけだった。

けれど、その揺らぎは、確かに“新しい自分”へ向かう予兆だった。

昨日までの私は、ただの追放された少女だった。

けれど今、騎士団長の言葉が、私の存在そのものを塗り替えようとしている。


 騎士団長は周囲の騎士たちへ向き直り、戦場で指揮を取るときと同じ、鋭く迷いのない声で言った。


「第一部隊、記録をまとめろ。この少女、リリア殿は、王国が捨てた人材だ。魔力無効化の能力を持ち、魔物の核を破壊できる。この事実を本部へ報告する」


 その言葉は、街の空気を一瞬で変えた。


 騎士たちがざわめく。


「……王国が捨てた人材……?」


「やっぱり……王国は何を考えてるんだ……?」


「こんな力を追放するなんて……」


「王太子は本当に判断を誤ったんじゃ……?」


 その声は、怒りではなく“呆れ”に近かった。

そして、私を見つめる目は、昨日とはまったく違う。


 恐怖ではなく、警戒でもなく、ただ純粋な“評価”だった。


 街の人々も騎士たちの会話を聞き、ざわざわと噂を広げ始める。


「隣国の騎士団長が認めた力を追放した王太子って……」


「無能なんじゃないの……?」


「この少女がいなかったら、昨日の魔物は街に入ってたんだぞ……」


「王国より隣国の方が見る目あるんじゃ……?」


 その声は、私の胸に静かに響いた。


 昨日まで、私は“居場所を奪われた少女”にすぎなかった。

けれど今、街の人々は、“隣国が認めた力を持つ少女”として私を見ている。


 騎士団長は私の前に立ち、まるで礼を述べるように深く頭を下げた。


「リリア殿。あなたの力は、国境防衛にとって極めて重要だ。あなたが昨日魔物を消してくれなければ、街は危険に晒されていた。改めて礼を言う」


 騎士団長が、私に頭を下げている。


 その光景は、昨日の私なら想像すらできなかった。

王国では、誰も私に頭を下げることなどなかった。

むしろ、私を遠ざけ、恐れ、追放した。


 私は慌てて手を振った。


「い、いえ……私はただ……できることをしただけで……」


 騎士団長は静かに首を振った。


「できることをしただけで、街を救える者など滅多にいない。あなたの力は、我々が守るべき価値だ」


 その言葉は、胸の奥に深く沈んだ。


 騎士たちも私を見つめながら、どこか誇らしげに頷いている。


「リリア様がいなかったら……」


「本当に助かったんだ……」


「王国は本当に見る目がなかったんだな……」


 街の人々も、私を見る目が変わっていた。


 恐怖ではなく、好奇心でもなく、ただ純粋な“感謝”だった。


 私は胸の奥が熱くなるのを感じた。


――私は、必要とされている。


 その事実が、昨日までの自分を静かに塗り替えていく。

胸の奥の熱は、もう消えそうにない。

むしろ、ゆっくりと広がり続けていた。


 そして、騎士団長は私へ向き直り、まっすぐな瞳で言った。


「リリア殿。あなたの力は、王国が捨てた宝だ。だが我々は違う。あなたを正しく評価し、正しく扱う。それが、この国境を守るための最善だ」


 その言葉は、私の未来を確実に変える“次の始まり”だった。


 胸の奥に、静かに、しかし確かに灯がともる。


――外の世界が、私を認めてくれた。


 その感覚は、今まで感じたことのないほど温かかった。

胸の奥の熱は、もはや小さな灯ではない。

ゆっくりと、しかし確実に、私の中で形を持ち始めていた。


 そして、この評価は、街だけでは終わらない。


 騎士団長の言葉が、騎士たちの胸の奥にまで届いているのが分かった。

その場に立つ全員の空気が、ゆっくりと、しかし確実に変わっていく。


 昨日まで、私はただの“追放された少女”だった。

けれど今、騎士たちの視線は、私を“守りの力を持つ仲間”として見ていた。

 

その変化は、胸の奥を静かに震わせた。


 騎士団長は副隊長へ指示を出し終えると、再び私の前に立った。

その姿は、まるで私の迷いを払うために戻ってきたかのようだった。


「リリア殿。あなたの力は、我々が思っていた以上に大きな意味を持つ。この国境を守るために、欠かせない存在だ」


 その言葉は、まっすぐに胸へ落ちた。


 騎士たちも、団長の言葉に呼応するように頷く。


「本部に伝われば、扱いが変わるだろう」


「王国が見誤った力を、我々が正しく評価するべきだ」


「この少女がいなければ、昨日の魔物は街に入っていた」


 街の人々も、騎士たちの言葉を聞きながらざわめきを強める。


「隣国が認めた力を追放した王太子って……」


「やっぱり判断を誤ってたんだよ……」


「この子がいなかったら、街は危なかったんだ……」


「王国より隣国の方が見る目あるんじゃないか……?」


 その声は、私の胸に静かに、しかし確かに届いた。


 王国では、私は“危険な存在”と呼ばれた。

力を恐れられ、距離を置かれ、最後には追放された。


 けれど今、隣国の騎士団は、私の力を“国境防衛の要”と呼んでいる。


 その差は、あまりにも大きかった。


 騎士団長は、そんな街のざわめきを一度だけ受け止めるように視線を巡らせると、

静かに私へ向き直った。


「リリア殿。あなたがここにいることは、この街にとって大きな意味を持つ。あなたの力は、恐れられるものではなく、守りの力だ。それを理解している者が、今この場に大勢いる」


 私は胸の奥が熱くなるのを感じた。


 昨日まで、私は“居場所を奪われた少女”だった。

けれど今、騎士団長は、私を“守りの力を持つ仲間”として扱っている。


 その変化は、胸の奥に静かに広がっていった。


「……私……」


 言葉が喉の奥で震えた。

けれど、その震えはもう“恐怖”ではなかった。


「……私は、この場所を守りたいです。この国境で、あなたたちと肩を並べて立ちたい。そのために、私の力を使いたいんです」


 騎士団長は、迷いなく頷いた。


「その気持ちがあれば、もう何も疑う必要はない。あなたはここに立つべき人だ。あなたの力は、この国境を守るために必要不可欠だ」


 その言葉は、私の中の空白を静かに満たしていった。


 居場所。

必要とされる場所。

誰かと共に立つ場所。


 それを、私は初めて手に入れたのだ。


 騎士団長は副隊長へ視線を向けた。


「副隊長。この検証の結果を本部へ送る。王国が見誤った力を、我々が正しく評価したことを伝えろ」


「承知しました。この少女の力は、国境防衛にとって極めて重要だと記します」


 その言葉に、周囲の騎士たちがまたざわめいた。


「本部が知れば、扱いが変わるぞ……」


「王国の判断は、完全に誤りだったと証明されるな……」


「この少女は、もう追放された存在じゃない……」


 私はその言葉を聞きながら、胸の奥が少しだけ痛むのを感じた。


 王太子。

私を追放した人。

私の力を“危険”と断じた人。


 その判断が、今、隣国によって“誤りだった”と証明されようとしている。


 けれど、不思議と、私は王太子を責める気持ちにはなれなかった。


 ただ、静かに思った。


――私は、あの場所ではなく、ここに来るべきだったのだ、と。


 騎士団長は、そんな私の揺らぎを見透かしたように、静かに言った。


「リリア殿。王国がどう評価しようと、今のあなたには関係ない。重要なのは、あなたが“どこで、誰と、何を守りたいか”だ。あなたがここにいることを選ぶなら、我々はその選択を尊重する」


 胸の奥が、ふっと軽くなった。


 王国の判断が誤りだったと証明されることは、私の過去に対する“答え”になるかもしれない。


 けれど、それ以上に、今、ここで、隣国の騎士団が私を認めてくれていることが、何よりも大きな意味を持っていた。


 騎士団長は、周囲の騎士たちへ向けて声を張った。


「聞け!リリア殿は、我々と共に歩むことを選んだ!彼女は危険な存在ではない。守るべき仲間であり、国境防衛にとって極めて重要な人材だ!その評価を、決して見誤るな!」


 騎士たちが一斉に胸に手を当て、騎士団長へ敬礼した。


「了解!」


「リリア殿を守る!」


「彼女の力を、正しく扱う!」


 その声は、街の空気を震わせるほど力強かった。


 街の人々も、その光景を見て息を呑んでいた。


「本当に……隣国があの少女を認めてるんだ……」


「王国の判断は、やっぱり間違ってたんだ……」


「でも……よかった……あの子に居場所ができて……」


 その言葉は、私の胸に静かに、しかし確かに届いた。


――私は、もう一人じゃない。


 その感覚が、胸の奥で確かな形を持ち始めていた。


 騎士団長は最後に、静かに私へ向き直った。


「リリア殿。これから先、どんな困難があろうとも、あなたの選んだ道を、我々が守る。外の世界があなたを認めていることを、何度でも証明しよう」


 その言葉は、私の未来を確実に変える“決定的な一歩”だった。


 胸の奥に、静かに、しかし強く灯がともる。


 王国に捨てられた過去は、もう“傷”ではない。

それは、ここへ辿り着くための道だったのだと、私は初めて思えた。


――外の世界が、私を認めてくれた。


 その事実を、私はもう疑わなかった。


 そしてその瞬間から、私は、“追放された少女”ではなく、“国境を守るために選ばれた存在”として、新しい一歩を踏み出すことになったのだった。

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