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第13話 魔法障壁の崩壊と城内パニック

 街の中心を離れ、少し高台になった丘へ向かうと、空気のざらつきが一段と濃くなった。

魔力の乱れは、街の中だけではなく、もっと広い範囲に広がっている。

風が一定の方向へ流れず、まるで迷っているように渦を巻いては散っていく。


 丘の上からは、王城の外壁がよく見えた。

その外壁を覆うはずの魔法障壁は、いつもなら淡い光の膜となって揺らめいている。

しかし、今日のそれは、明らかにおかしかった。


 光が薄い。

まるで、誰かが布を引き裂いた後のように、ところどころ色が抜けている。

魔力の膜が波打ち、ひび割れのような模様が走っていた。


「……あれが、魔法障壁?」


 思わず声が漏れた。

魔法障壁は王国の生命線だ。

魔物の侵入を防ぎ、外の魔力を均一に保つための巨大な防壁。

それが、肉眼で分かるほど薄くなっている。


 風がひゅうと鳴り、障壁の表面が揺れた。

その揺れは、ただの風ではなく、魔力の乱れそのものが引き起こしているものだ。


「……崩れ始めてる」


 胸の奥がじわりと重くなる。

私が王城を出たときから、魔力の流れは確実に乱れていた。

街の魔法灯が揺れ、魔法道具が暴走し、魔物が群れで押し寄せた。

それらはすべて、魔法障壁の弱まりが原因だ。


 けれど、ここまでひどいとは思わなかった。


 城壁の上では、騎士たちが慌ただしく動いていた。

魔法障壁の補強を試みているのだろう。

魔法使いの騎士が杖を構え、障壁へ魔力を流し込む。

しかし、流し込まれた魔力は障壁に吸収されず、逆に弾かれて空中へ散った。


「だめだ!魔力が安定しない!」


「障壁が魔力を拒んでる……!」


「こんなこと、今まで一度も……!」


 騎士たちの声が風に乗って届く。

その声は焦りと恐怖に満ちていた。


 さらに、城壁の上で騎士団長が叫んだ。


「魔物が近づけば突破されます! 補強を急がねば!」


 その声は、王城の大広間まで響いたのだろう。

次の瞬間、城壁の上から怒鳴り声が返ってきた。


「聖女の祈りがある! 余計なことをするな!」


 王太子の声だった。

その声は、魔力の乱れよりも耳障りだった。


 騎士団長は拳を握りしめ、怒りを押し殺しているのが遠目にも分かった。

部下たちが小さく囁き合う。


「祈りって……昨日も失敗したのに」


「殿下は聖女様しか見てない」


「このままじゃ城が……」


 その声は、風に紛れて私の耳にも届いた。


 王城の内部でも異変が起きているのだろう。

魔力の乱れは、城内の魔法道具にも影響を及ぼす。


 その証拠は、遠くからでも見えた。


 城の塔に設置された魔法水晶が、濁っている。

本来なら透明で、情報を映し出すはずの水晶が、黒い靄をまとっている。


 城門の魔法扉が、勝手に開閉していた。

侍女が悲鳴を上げ、騎士が慌てて扉を押さえている。


 さらに、城の外壁近くで火花が散った。

魔法暖炉が暴走したのだろう。

煙が上がり、侍女たちが布を抱えて逃げていく姿が見えた。


「……王城も、もう限界ね」


 私は静かに呟いた。


 魔法障壁が崩れ始め、城内の魔法道具が次々と壊れ、騎士団が混乱し、王太子は現実を見ようとしない。


 王城は、防衛も生活も崩壊寸前の状態にある。


 風がざわりと揺れ、魔力の乱れがさらに濃くなった。

空気が重く沈み、胸の奥がざらりとする。


 丘の上で王城の外壁を見下ろしていた私は、しばらくその光景から目を離せなかった。

魔法障壁の揺らぎは、ただの乱れではない。

あれは、崩壊の前兆だ。


 風がざわりと揺れ、空気の密度がさらに増した。

胸の奥がひりつくように重くなる。

魔力の乱れが、街だけでなく王城全体を包み込んでいるのが分かった。


 そのとき、城壁の向こう側から、甲高い音が響いた。


 ぱきん。


 魔法障壁の表面に、細い亀裂が走ったのだ。


 私は息を呑んだ。


 魔法障壁は、王国の生命線。

魔物の侵入を防ぎ、外の魔力を均一に保つ巨大な防壁。

それが、今まさに壊れようとしている。


 騎士たちの叫びが風に乗って届く。


「ひびが広がってる!魔力を流せ、急げ!」


「だめだ、障壁が魔力を拒んでる!」


「このままじゃ……!」


 城壁の上は完全に混乱していた。

魔法使いの騎士が杖を構え、必死に魔力を流し込もうとするが、障壁はそれを受け取らず、逆に弾き返している。

弾かれた魔力が空中で火花を散らし、騎士たちが身をすくめた。


 その光景は、遠くから見ているだけでも胸が痛くなるほどだった。


 しかし、王城の中心では、もっと酷いことが起きていた。


 城内の魔法道具が、次々と悲鳴を上げ始めたのだ。


 塔に設置された魔法水晶は、濁った黒い靄をまとい、情報を映し出すどころか、内部で魔力が泡立つように揺れている。


 城門の魔法扉は、まるで誰かが内側から叩いているかのように勝手に開閉を繰り返し、侍女が悲鳴を上げて後退した。


 さらに、城の中庭では魔法暖炉が暴走し、火花が散った。

侍女たちが布を抱えて逃げ惑い、騎士が慌てて消火魔法を使おうとするが、魔力が逆流して火花がさらに広がる。


「魔法が言うことを聞かない!」


「暖炉が暴れてる、誰か水を!」


「通信具が全部止まったぞ!」


 城内の混乱は、街のそれとは比べものにならないほど深刻だった。


 私は丘の上からその光景を見つめながら、静かに息を吐いた。


「……王城は、もう防衛も生活も崩壊寸前ね」


 魔法障壁が崩れ始め、城内の魔法道具が壊れ、騎士団が混乱し、王太子は現実を見ようとしない。


 王国の中心が、音を立てて崩れていく。


 そのとき、城壁の上で騎士団長が叫んだ。


「殿下!障壁が持ちません!魔物が近づけば突破されます!」


 その声は、王城の大広間まで響いたのだろう。

次の瞬間、城壁の上から怒鳴り声が返ってきた。


「聖女の祈りがある!余計なことをするな!」


 王太子の声だった。


 私は思わず眉をひそめた。


 あの状況を見てなお、祈りにすがるのか。

昨日も失敗し、今日も崩れた祈りに。


 騎士団長は拳を握りしめ、怒りを押し殺しているのが遠目にも分かった。

部下たちが小さく囁き合う。


「祈りって……昨日も途中で消えたのに」


「殿下は聖女様しか見てない」


「このままじゃ城が……」


 その声は、風に紛れて私の耳にも届いた。


 王城の内部でも異変が起きているのだろう。

魔力の乱れは、城内の魔法道具にも影響を及ぼす。


 その証拠は、遠くからでも見えた。


 塔の魔法水晶は濁り、城門の魔法扉は暴れ、暖炉は火花を散らし、通信具はノイズを発し続けている。


 王城は、もはや正常に機能していない。


 私は丘の上で風を受けながら、静かに呟いた。


「……王国は、本当に崩れ始めてる」


 魔力の乱れは、街だけでなく王城全体を飲み込み、国の中心を揺らしている。


 その揺らぎは、もう誰にも止められない。


 風がざわりと揺れ、空気がさらに重く沈んだ。


 王国の崩壊は、もう止まらない。

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