モダニナ編1 聖王国モダニナ①
ジープは軽快に走っていく。
それとは裏腹に、僕らは周囲を警戒している。
いつ襲撃があってもおかしくないのだ。
僕があのまま死んだ、と思っていてくれていたらありがたいのだが。
しばらく走ると、大きな都が見えてきた。
「あれが、聖王国モダニナか」
人口10万人、グラン教のおひざ元。
そして、魔族との戦争の司令塔。
僕らは、荘厳な門をくぐった。
≫
白い建物が並び、壁にはどこもモダニナの国旗が掲げられている。
屋台も見当たらない。
人々の多くは白い装束をまとい、街全体が静かな緊張感に包まれていた。
他の街のように屋台は出ていない。
宗教の中心地として整然としている。
神域のコンパスを確認する。
相変わらず、北をさしている。
その方向に目を向けると、王宮があった。
聖王国の宮殿だ。
神域であってもおかしくない。
問題は、どうやって入り込むか。
もちろん、警備は厳重だろう。
まずは聞き込みだ。
僕らは、冒険者ギルドに向かった。
≫
「ようこそ、モダニナの冒険者ギルドへ」
受付嬢は若い女性だ。
しかし、眼光はするどく、仕事ができる気配を感じる。
「本日は、どのようなご用件ですか?」
「まずは、このギルドへの登録をお願いします」
ギルド証を差し出す。
「前世は......サムライ、ヒーラー、魔法使い......」
そこで彼女の手が止まった。
僕のカードを見ている。
「前世......なし」
ギルドがざわつく。
前世無しなんて、僕だけだろう。
毎回この反応にも飽きてきた。
しかし、今回は何か違う。
「至急、ギルド長に連絡を! あなた方は、この場で拘束させていただきます」
どういうことだ?
罪を犯した覚えはない。
周りを見渡すと、冒険者が僕らを取り囲んでいる。
逃げ出すことは無理なようだ。
だが、手荒なことになりそうな雰囲気でもない。
どちらかというと、好意的な視線を向けられている。
≫
しばらくすると、歴戦の猛者を思わせる大柄な老人が出てきた。
僕を一瞥する。
「ギルド証をもう一度みせてもらおう」
手渡すと、ギルド長の手が震えだした。
「王宮に連絡を。それと、この方々を別室にお連れしなさい」
僕らは訳が分からないまま、奥に通された。
部屋には、数名の手練れらしき人物が配置されている。
やはり、逃げ出すことはできそうにない。
そうこうしていると、外が騒がしくなった。
「迎えが来たようだ。お行きなさい」
ギルド長の後ろをついて扉を開けると、白銀の鎧をまとった集団がギルドの前に整列していた。
ご丁寧に、華奢な馬車まで用意してある。
本当に訳が分からない。
周囲には大勢の見物客。
僕らは居心地が悪くなり、促されるまま馬車に乗る。
「これってどういうこと? わたしたち、なにかやらかした?」
「私には心当たりがありません。ラーナさんは?」
「わしにもわからんよ。ただ、坊主のカードを見てから態度が変わった。
おそらく、坊主がらみじゃろう」
みんなの視線が僕に注がれる。
「そんなに見ないでよ。僕だって何もしてない」
馬車の乗り心地は非常によく、ふんわりとしたクッションでできたシートに、茶菓子まで用意されている。
「とりあえず、わしらに今できることはない」
そう言いながら、菓子をあさり始めた。
「そうね。とりあえず運んでくれるんだから、悪いことにはならないでしょ」
リリスもクッキーを口に運ぶ。
キキラは一息吐いた後、その輪に加わる。
馬車は王宮の門をくぐった。




