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戦闘民族の魔女は、隣の天才魔法使いをぶちのめしたい  作者: 二見
政官一年目編

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47. 終幕

中二階のバルコニー。

そこの玉座から、静かにこちらを見下ろすのはハルトヴィヒ王。

顔にはなかなか深い皺が刻まれているが、さすがは王族。ジルと同じように美しい人だった。



「シェラウザ局長。証拠の真偽についての発言、それはお前の一族に誓ってのものか」



大広間に王様の声が響き渡る。



「もちろんです。我が一族に、そして法神カローネスに誓います」

「よろしい。此度の経緯と証拠の全てにおいては、そこの愚息より事前に余にも届いておる。……その娘の、城での振る舞いもな」



隣でジルが小さな声で「愚息って、失礼な」と不機嫌そうに呟いていた。



「ちょっと、ジル。いつの間に王様に渡してたの?」



そんなの聞いていない。私はジルの裾を引くと、背伸びをして、なるべく声を潜めて彼の耳元で問いただした。



「えー、だって俺の父親だよ?渡そうと思えばいつでも渡せるもん。シェラウザ局長の上申がなかなか通らないなら、こうした方が良いでしょ。あ、ちゃんと局長とは打ち合わせ済み」



悪びれる様子など一切ない。


そういえばエマの手紙にも、カンザキの振る舞いについては書かれていた。

もしもの時は裏付けになるかと考えていたけれど、この様子だと王城の中でも動いていたのかもしれない。


ハルトヴィヒ王の目が、ゆっくりとカンザキへと移った。



「トランディアはこの世界において最も平和であらねばならない。このような醜い行いをする者を置いておくなど、余の国であってはならない」

「みっ……醜い……!?」



信じられないとばかりの顔でカンザキはハルトヴィヒ王を見上げた。

髪もドレスも、ぐしゃぐしゃな姿は哀れとしか言いようがなかった。



「早急に医官を。まずはあの者の身を検めよ。……沙汰は、それからだ」



それはまるで罪人に言い渡すかのようだった。

いや、実際そうなのかもしれない。

おそらく、これから彼女の魔核の有無が調べられ、証拠をもとに処遇が決められるのだろう。


オーウェンに拘束されていたカンザキは、他の女性騎士官や医官に引き渡され、支えられるように立たされた。その間も「醜い……?」と呆然とした顔でボソボソと何かを呟いている。



「……」



彼女の年齢や境遇を考えれば悪いようにはならないだろうけど、王城にも三機関にも、もういられないはずだ。



(……終わった)



やっと深く息を吐いた。

その音がカンザキの耳に入ったらしい。彼女はバッと顔を上げると、目を引き攣らせ、今までに見たこともない剣幕で私を睨みつけた。



「お前が……!!」



騎士官たちを振り払い、再び私へと突進してくる。



「っ!」



視界の端でオーウェンが身構える。



「大丈夫、いらない」



——私だって言いたいことが山ほどある。



「あんたがいなければ、逆ハーエンドで終われたのに!!」



カンザキは私に掴みかかると、そのまま床に押し倒した。

後頭部が硬い床に思い切り当たる。痛い。けれど気にしている余裕はなかった。



「R18展開だってワンチャンあったかもしれないのに、あんたのせいでめちゃくちゃだ!!!!私の居場所を奪いやがって!!!!みんなあんたより、私の方が好きだったのに!!!!」



……正直に言う。後悔している。

あえて押し倒されたけれど、唾が降ってくるし、案の定、彼女が何を言っているかわからない。

いや、今はそんなのどうだっていい。


私は息を短く吸った。



「何言ってるか全然わからないけど!仕事も人間関係も、全部あなたの思い通りになるわけじゃない!あなたは安全なところから、こそこそ人を傷つけて……!」



傷つけられた人は、私だけじゃない。



「あなたが離縁届を渡した女性は傷ついてずっと泣いてた!!」



子どもをお腹に宿して、旦那さんと一緒に王庁に来たあの女性。

別室で彼女はずっと泣いていた。何か悪いことの前触れのひとつなんじゃないかと。



「散々、仕事で……書類で遊んで!人間関係でも遊んで!それで被害者ヅラ!?」



——学生の時、面と向かって言うのが怖かった。

本当は、逃げていた。

でも、もう逃げてばかりはいられない。



「殴るなら殴られる覚悟しとけ!あと……私の髪飾り返せ!!ばーーーか!!!!」



オーウェンにだってこんな大声で馬鹿とか言ったことない。

だって今まで私は本当に平和な世界で生きてきたんだから。


心臓がバクバクする。

息が切れて、肩で呼吸をしてる。

情けないことに涙が滲んでるのがわかる。


カンザキを睨む。



「ああああああ〜〜〜!!!!うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!!!!受け入れられたお前に、私の何がわかるんだ!!!!!!」



中庭のあの時のように、カンザキは髪を掻きむしると、血走った目で私を睨み返して、右手を振りかざす。



「アルクセイ」



オーウェンの声。



「前から思ってたけど、口喧嘩になると何でそんなに語彙力なくなんの?」



カンザキのその手は私に振り下ろされることはなかった。

オーウェンが後ろから掴んだのだ。



「……うるさい馬鹿とっとと仕事してよ」

「ほら無い」



オーウェンは「暴行未遂のため緊急捕縛する」と宣言し、慣れた手つきで、捕縛魔導具を使ってカンザキの両腕を拘束した。



「あ〜……つっかれた……」



床に転がった私はその光景を眺めたあと、そのまま目を閉じた。

やっと終わったのだ。

ブックマーク、評価、リアクション、いつもありがとうございます!


やっと終わりました。

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