5,迷い
畳み掛けるように私はフィナにこう言った。
「こう、いろいろ言ったけど結局は出会う人によると思うの。私の話を聞いてどう思ったかはフィナちゃん次第だよ。」
「わたくし....次第....。」
「そう、平民を危ないって思う気持ちもわかる。でも、危ない人の中には何か理由があったのかもしれない。もしかしたら、周りが手を差し伸べれば罪を起こさなかったかもしれない。....て、これは結局結果論か。」
「あなたの周りにもそんな人がいたのかしら?」
「うん、いたよ。お父さんの仕事について行ってすごく痩せている人を見たって言ったでしょ。その人は、販売するはずだった食べ物を盗んだの。で、その人は捕まったんだけどいろいろと話を聞いたら、貧民ってだけで働き口がなくって日当を稼ぐのもかなり苦しいって話を聞いたんだ。」
「....。貧民ってだけで働けないんですの?」
「貧民の人だからっていうよりも、お金が無いせいで学校に行っていない。それだけで、教養がないって見られて働ける場所がかなり限られるの。で、本当だったら騎士の人達に突き出すんだけどお父さんはその人を雇った。先行投資でその人に教育を行って、寮住まいの食事付きでかつ賃金も払う契約で。」
「そんなことをしたところで変わらないのではなくって?」
なぜそのような行動をしたのか、心の底からわからないという反応をされた。
「ま、普通はそう思うよね。でも、お父さんは違った。実際にその人は今もうちで働いてくれていて、なんだったらかなり優秀な人なの。教育する機会があったならもっといいところに就職できただろうと思うほどに。」
「....。あなたがおっしゃりたいことは、すべての平民が危ない人ではないということ。危ない人にも理由があるのかもしれないということですの?」
「そう....だね。最初から決めつけることはその人の可能性をなくしてしまうことだと私は思うの。」
そんな話をしていたら、フィナの後ろから男の人が突っ込んでくるのが見えた。
「フィナちゃん、危ない!」
そう声を掛けてフィナを押した。
”ドン”
視界が揺れるほどの衝撃を受け固い地面に倒れ一瞬音が遠のいた。
——音が再び戻る。
「な、急になんですの!て、そこのあなたなんて危ないものを持っていますの!」
そう彼女の声につられてそちらを見ると、確かに男の手には刃物があった。
そしてその手はフィナのほうを向いていた。
「お嬢ちゃんには申し訳ないが、少し怖い思いをしてもらうぞ。」
その言葉を聞いたとき私は急いでフィナの手を引いて走り出した。
「あ、まて!」
「誰が待つかっての!」
私たちは人込みを使って逃げつつ男を捕まえてくれる人を探していた。
「さ、さっきの人はなんですの!やっぱり平民は危ないじゃないの!」
「私もわからない。けど、フィナちゃんのことを狙ってたからとりあえず騎士の人を探さないと。」
がむしゃらに走りながら探していると巡回中の騎士の人を見つけた。
「あ、いた!そこの騎士の人助けてください!」
「おい、待ってって言ってるだろ。」
「ちょっと、まっ....て....。あ!」
あともう少しで騎士の人のところに行けるところでフィナがこけてしまった。
「フィナちゃん!」
「ふぅ、やっと追いついた。おとなしくすれば特にケガさせることはない。というかさせないでくれ。」
「その刃物を持っている人の言葉を誰が信じると思うの!」
私は、フィナちゃんを守るように前に立った。
「こっちにも事情があるんだ。申し訳ないがそこをどいてくれ嬢ちゃん。俺はそっちの嬢ちゃんに用があるんだ。」
「絶対にどかない。せっかく友達になりたいと思ったんだもん。それなのに、ここでどいたら絶対に後悔するもの。」
男とそうにらみ合っていたら
「君たち大丈夫か!」
そう声を掛けてくれて私たちを隠すように騎士の人が立ってくれた。
「そこの君、この少女たちを追いかけて何をしようというんだね。」
「....ちっ、仕方ない。」
そういって逃げようとした男をもう一人の騎士の人が拘束した。
「観念するんだね、どうしてこんなことをしたのか詰め所で詳しい話を聞かせてもらおうか。」
拘束した騎士の人は男を連行していった。
「は、離せ。くそ、し....失敗したことが知られたら....。」
そんな男の声がふと私とフィナの耳に入ってきた。
「どんな事情があるかは知らないが、彼女たちを追いかけておいておとがめなしとはいかないからな。じゃあ、そっちのケアは頼んだわ。」
「ああ、わかってる。ケアと家に送り届けたら合流する。」
そのやり取りを見ていて安心したのか腰が抜けてしまった。
「フィナちゃん、そういえば足とか怪我してない?」
「ええ、服のおかげでそこは問題ないですわ....。」
怪我がないか確認をしていると騎士の人がこちらに話しかけてきた。
「君たち申し訳ないんだけど、いろいろ話を聞かせてもらっていいかな?」
「....。はい、大丈夫です。」
「君たちは、あの男に襲われる理由とかって何かわかったりしないかい?」
「う~ん....わかりません。でも、私たちがっていうよりもフィナちゃんだけを狙っているみたいでした。」
「フィナちゃんてのはそっちの少女のことかい?」
「うん、フィナちゃんは狙われる理由ってあったりする?」
「....知りませんわ。」
「まぁ、急に聞かれてもわからないよね。実際にないのかもしれないし。襲われたばっかりでおうちの人にも説明しないとだから家を教えてもらえるかな。」
「私の家はすぐそこを曲がったところにあります。」
「じゃあ、先に君の家から行こうか。フィナちゃんのほうは後でも問題ないかい。」
「....え....ええ、問題ないですわ。」
「じゃあ、行こうか。」
その後、私は家に送ってもらい騎士の人がさっきの状況をお母さんに話した。私は、その話をそばで聞いていて思い出してしまいお母さんに抱き着いた。そして、疲れが出ていたのかそのままお母さんのそばで寝てしまった。
——
「ところで君はエルベェール公爵家のご令嬢だね。」
「ええ、そうですわ。」
「今日は護衛の人は一緒じゃなかったのかい?」
「護衛の者がついていると行きたい場所に行けないじゃない....。」
「まあ、それはそうですが....。でも、ご令嬢を守るためには必要なことなんですよ。実際、危ない目にあったでしょう。ですので、次はしっかりと連れてください。」
「わかりましたわ....。」
「....。ねぇ、あなたの出自はなんですの?」
「私の出自ですか?平民の出になりますよ。私の家はそれなりに裕福だったので学校にも通わせてもらえ今の仕事に就くことができたんですよ。」
「そう、あなたは学ぶ機会があったのね....。」
「さっきの男の人も何か事情があったとでもいうの?結局、どちらが...。」
「わたくしは....一体....どちらを信じればいいんですの....?」
そんなことをつぶやきフィオナは家に帰宅した。




