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18,気になったものは、その色だった

ちょっとしたハプニングがありつつも、目的地であるブティックに到着した。

ショーウィンドウには、いくつかドレスの見本が飾ってあった。


「へぇ....ここが、ベルちゃんの家かぁ....」


「感心するのはいいですが、立ち止まっては邪魔になりますわよ。それに、店員の方を待たせておりますわ。」

「あ、それもそうか。」

そうして、私達は店前で軽く話をしてから入った。


中はとても明るく、見渡すと多くの既製品のドレスが並んでいた。

「本日ご連絡していた者なのだけれど....」

「はい。エルヴェール様でございますね。お待ちしておりました。」

そう言い、店員の人は裏の席に案内してくれた。


「今のトレンドといたしましてはこちらになります。」

そう言っていくつかの、ドレス案の紙が出された。

「こちらが....じっくり見たいのだけれど問題ないかしら。」

「はい、問題ございません。何かご質問があればお答えいたします。」

毅然とした態度で店員さんは部屋の隅に控えた。

「ねえ、リナさん。ベルさん。あなた達はどれが似合うと思いますか?」

「う~ん。そうだな....こっちの落ち着いた雰囲気のものが似合いそう。」

「私は、こちらも似合うと思うんですけど....」

女性陣3人であっちがいい、いやこっちがいいと話していたら、ふと気が付いた。どのドレス案も似たような形ばかりだった。

「ん?....ベルちゃん。ドレスの形ってこれだけしかないの?」

「え?そうだけど。なんで?」

「いや....フィオナ様ならマーメードドレスが一番似合いそうだなってふと思って....どうしたの?」

「それってどんな型なの!」

ベルちゃんの顔が勢いよく近づいてきた。あまりの勢いに私は、後ろに少し下がった。

「えっと、説明するからちょっと離れてほしいなぁ....なんて。」

「あ、ごめんね。....で、どういう型なの?」

「上半身から膝までがタイトで裾が人魚の尾みたいに広がってるんだけど....ちょっと紙を借りてもいい?」

「ちょっと待ってね。紙と描くものを持ってきてくれない?」

「かしこまりました。」

そう言って店員さんは、下がったかと思ったらすぐに目的の物を持ってきてくれた。

そして物を渡して、ベルちゃんがお礼を言ったら一礼をしてまた最初の位置に戻った。

「はい、リナちゃん。」

「ありがとう。えっと、形はこんな形で....体のラインが出るから似合う人は選ぶかもしれないけど....」

「なるほど....確かにこれは体型がもろに出ちゃうね。」

「でも、フィオナ様は体型も綺麗だし姿勢がすごい綺麗だから似合いそうだなって思ったんだけど、どうかな?」

私の描いた紙を見て動かなくなってしまったから、戸惑ってしまっていた。しかし、それも少しの時間で急に顔を上げたと思ったら。

「ねえ!これ、ちょっと描き加えたりしてもいい?」

「え?構わないけど....」

描き加えられたものは思わず息を呑むほど、フィオナ様に似合いそうに見えた。

「すごい!あれがこうなるなんて。って勝手に盛り上がってしまってすみません。フィオナ様のドレスなのに。」

「いいえ。それは、わたくしに似合うものを選ぼうとしている証拠でしょう?それならば、問題ありませんわ。それにしても、これは....フェリクス王子。どう思います?」

ふと、フェリクス王子たちがいることを忘れてしまっていたことを思い出した。

「そうだね....これは、確かにフィオナ嬢に似合いそうだ。どうする?」

「フフ。そう言っていただけてうれしいですわ。でしたら、色はこちらに——」


——

フェリクス王子とエドワード様は私達の様子を微笑まし気に眺めていた。

「フィオナ嬢のあんな無邪気な顔を見れるとはね....」

「そうなんですか?」

「ああ、だがリナ嬢と関わるようになってからは良く見られるようになったんだ。フィオナ嬢にとっても良い出会いだったのかもしれないね。」

「そうかもしれないですね。僕としても彼女とは近づきたいと思っていたんですよ。学園で初めて目にしたときに....」

王子は耳寄りな情報を得たという顔をしていた。

「へぇ、君からそんな言葉が聞けるとは。」

「な!悪いですか。僕に気になる女性がいることが。」

「いや、そんなことは言ってないじゃないか。ああ、これからがとても楽しみだ。」

僕は何も言い返せず、王子の笑みから逃れるために顔をそむけてしまった。


——

あれだけ悩んでいたものは、とんとん拍子に決まりあっけにとられてしまった。

「なに、ぼーっとしておりますの?次は、あなたですわよ。」

「....え?私も?」

「そうですわよ。あなたはどんなドレスが似合うんでしょうね。」

「いや....私は自分のドレスが....」

そう言ってフィオナ様を見たら、とてもウキウキしていて断れる気がしなかった。

「え....っと。おねがいします?」

「ええ、任されましたわ。」

「でしたら、まずはサイズを測らせていただきます。」

背後から急に店員さんの気配がして、体が跳ねてしまった。

「それでは、こちらにどうぞ。」

そう言って衝立の後ろに案内された。その時に、フィオナ様もベルちゃんも着いてきた。

「あら、制服や今日の服装からはよくわかりませんでしたが、あなたもスタイルが良いですわね。」

「うん、私から見てもうらやましいくらいだよ。」

男性陣からは見えていないはずなのに、聞かれている気がして落ち着かなかった。少しでも話を変えようと、私は気になっていたことを聞いた。

「フィ、フィオナ様。ちょっと気になっていたんですけど、前のお茶会で王子とドレスについて話していませんでした?」

「ん?....ええ、確かに話しておりましたわね。それが、どうしましたの?」

「いや、あの時はフィオナ様が選んだものをフェリクス王子が買うものだと思っていたんですけど。一緒に買いに来る予定ではあったんですか?」

「....?ああ、確かにあの時はわたくしが選んだものをそのまま注文していただこうと思っておりましたの。でも後から、リナさんたちと選びあったりしたいと思ったんですわ。それに、王子の服の方も決めないといけませんでしたから。」

「へぇ~」

そんな話をしていたら、サイズを測り終えたのか目の前にいろいろなドレスが並んでいた。

「こちらが、お嬢様に合うサイズの物になります。もし、試着したいのであればお手伝いいたします。」

「さ、リナさん。ご自身でも気に入るものがあればおっしゃってね。」

「あ、リナちゃんの好きな色とかどんなものがいいとか教えてね。それに合わせたものを選ぶから。」

二人はとても張り切っていて、私は聞かれたことを答えるしかなかった。


「あ、これ....」


「何か気になるものがありましたの?」

「....ちょっと、このドレスの色が気になって。」

そのドレスを見た瞬間二人は顔を見合わせたかと思ったら、口元がとても緩んでいた。

「あらあら。これは、脈ありですわね。」

「ええ、そうですね。それに、無意識ならなおのこと。」

二人の反応に、もう一度ドレスを見たらどこかで見たような色だった。その意味に気が付いたとき、顔がとても真っ赤になった。

「それじゃあ、こちらのドレスを試着してもらいましょうか。あなた、お願いできるかしら。」

「かしこまりました。」

止める間もなく、あっという間に着せられてしまった。

「あら、とても似合っているのではなくって。」

「う~ん、確かに似合いますけど。ここは、こういうのはどうですか。」

「わたくし達だけでは、意見が少ないですわね。それに、リナさんのパートナーであるエドワード様もいますし。彼にも意見をいただきましょう。」

今の私を見られるのがとても恥ずかしく、抵抗しようとした。が、勢いのある二人には無駄だった。

「エドワード様。こちらどう思います?」

「え?ああ、とてもかわいらしいね。」

「あら、それだけですの?」

「もっと、他に言うことがあるでしょうが。」

そんな話をしているのが耳に入らないほど私は、胸が轟いた。

「他に、ですか?」

「え、気が付かないんですか?色ですよ。」

「色?」

ベルちゃんの言葉の意味を理解したのか、エドワード様は目を見開いていた。

「どうやら、気になったものらしいですわ。」

「....どうしてこれが気になったか聞いてもいいかい?」

まさか、聞かれるとは思わなかった私は、しどろもどろで答えた。

「い....や、あの。好きな色っていうのと最近目にしたからというか....」

”これじゃあ、言っちゃってるも同然なんじゃ”

そんな私の回答に、彼はとてもうれしそうにした。

「それでは、別のドレスも試着してみますわよ。」

「え?これで終わりじゃあ....」

「まだだよ。せっかく、素材がいいんだからいろいろ試してみないと。」

「ベルちゃんまで....」

そう言って、私のドレス選びは長時間続いた。


「まだ、選び足りませんがもう疲れてしまってますわね。」

「そうですね。リナちゃん、ごめんね。どれ着せても似合っていたから楽しくなっちゃって。」

私は、椅子に座り込みやっと終わったことに安堵していた。

「はい、これでも飲んで。」

「ありがとうございます。ふぅー。」

「本当にお疲れだね。」

「まさか、ここまで私に時間を掛けるとは思いませんでした。って、すみません。待っている間退屈でしたよね。」

「まさか。君のかわいらしい姿が見れたから、退屈なんて思わなかったよ。」

思わず彼の方を見てしまった。そして、視線が合うと彼の目が嘘を言っているようには見えなかった。——だからこそ、余計に胸が騒いだ。

「そういえば、君はなんで緑色が好きなんだい?」

「それは....私にとって緑色は落ち着く色でもあるんです。」

そんな話をしながら、王子の服を決めているフィオナ様達の方を眺めていた。

”まさか、こんな時間を目にするなんて....”

小説でのフィオナ様とフェリクス王子は婚約者であったが、ここまで仲がいいといえるものではなかったはずだ。それに、フィオナ様の一方的な思いで書かれていた。小説と今のフィオナ様の違いと言えば、平民の認識の違いくらいだ。私としても、小説では平民を差別しいじめていた彼女と仲良くなるとは思わなかった。

思考していた私はエドワード様が何かしていたのに気が付かなかった。


——

「きみ、すまないんだが。リナ嬢のドレスと僕の服を仕立ててほしい。ドレスは——」

「かしこまりました。出来上がったものはどちらにお届けいたしましょう。」

「僕の家で頼むよ。」


「....本当は、彼女に送りたい。だが....彼女は着ていくものを決めている。これを渡すようなことがあっては欲しくないなぁ」


後に、エドワード様の思いとは裏腹に渡すことになってしまうのだった。

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