17,まだ言えない、この気持ち
数日が過ぎ、約束の休日が来た。
「う~ん。こっち....いや、こっちの方かな?」
時間が刻々と迫っているが、どうしても決まらなかった。
”トントントン”
そうこうしている内に、部屋の扉がたたかれた。
「リ~ナちゃん、もう準備終わった?」
一瞬ドキっとしたが、その声を聞いて安心した。
「ベルちゃん、良いところに!さ、入って」
「ん?って、まだ着替えてなかったの?」
「うん。ところで相談なんだけど、こっちとこっちどっちがいいと思う?」
そう言って私は2種類の服を提示した。片方は質素だけど動きやすい服、もう一方はレースのついた上品なワンピース。そして、どちらにも緑色の差し色が入っていた。
「ううん?フィオナ様達と行くなら、こっちの服の方がいいんじゃない?」
ベルちゃんが指したのは、ワンピースの方。
「それもそうか。じゃあこっちにするね。ありがとう。」
「あ、それじゃあその服に合わせた髪にセットしてみない?」
「え、でも私そういうの苦手で....」
「私がやるよ!よく、お母さんの手伝いでしたりするから。」
「じゃあ....やってもらってもいい?」
「うん、喜んで!」
ベルちゃんの顔には無邪気な笑顔があり、私もつられて笑顔になった。
「着替え終わったみたいだし、ここに座って。」
「お願いしま~す。」
髪のセットをしている途中で、予想もしていなかったことを聞かれた。
「そういえば、両方の服に緑色が入っていたけど。もしかして....!」
「もしかしてって?」
「もう、とぼけなくっていいのに。あの人の色でしょう?」
「....?」
誰の色か記憶を探っていたら、ある人の目の色に気が付いた。そして、私はじわじわと恥ずかしさが出てきた。
「ち、違うからね!ただ、好きな色ってだけだから。」
「はいはい。って、まだセット終わってないんだから動かないで。」
不服ですと言いたげな、自分の顔が鏡に映っていた。
「....よし。出来たよ。」
「え、すごい!こんな髪にもできるんだ....」
出来上がった髪を見た瞬間、先ほどの気持ちが吹っ飛んで行ってしまった。
「じゃあ、時間も近いし行こうか。」
「え....本当だ。」
そう言って私たちは、気持ちを弾ませながら待ち合わせ場所に向かった。
待ち合わせである場所の校門は、木の揺れる音や噴水の水に当たる音が良く聞こえた。
「あれ?まだ来てないみたいだね。」
「そうみたいだね。」
”コツコツ”
「お二方、お早いですわね。」
「「あ、フィオナ様。おはようございます。」」
「ええ、ごきげんよう。」
「フィオナ様だけですか?」
「ええ。でも、もうすぐ来ると思いますわよ。」
フィオナ様がそう言い後ろを振り返ると、馬車が遠くから来ているのが見えた。
”ガチャ”
「おや。3人とも、もう来ていたんだね。」
「本当だ。僕たちは遅刻かな?」
「いえ、予定時間よりも早いですわよ。それに、馬車の手配をしていたのでしょう?」
「ああ。もともと早めにきて私たちが待つつもりだったんだが....」
フェリクス王子とエドワード様の顔には苦い笑顔が浮かんでいた。
「いえ、私たちが楽しみで早めに来ただけですので。ね、ベルちゃん。」
「はい、そうですよ。」
「さて、時間は有限ですわよ。続きの話は馬車の中でいたしましょう。」
「それもそうだね。それじゃあ、フィオナ嬢お手を....」
そのエスコートを受けながらフィオナ様は馬車に乗った。
「じゃあ、僕たちも乗ろうか。」
そう言って、エドワード様は手を私に差し伸べた。
「え....っと。私にエスコートは必要ないと思うんですが....」
「あら、何を言っているんですの?パーティーではエスコートされるのですから、今のうちから慣れておいた方がいいですわよ。」
「まあ、そういうことだから。どうぞ、リナ嬢。」
「し、失礼します。」
触れた手から彼の温もりが移ってきて、顔を思わず逸らしてしまった。
「ベル嬢も、どうぞ。」
「ありがとうございます。」
そして、私たちは全員が馬車に乗りブティックまで出発した。
”ガタガタ”
馬車の揺れに合わせて、体が揺れた。外を見ると景色が後ろに流れていった。
”ガタン”
「うわ!」
急に大きく揺れて、エドワード様の方に倒れてしまった。
「ご、ごめんなさい」
「僕は、問題ないよ。君は大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。」
そう答えて、呼吸が耳に聞こえることに気が付いた。上を見たら彼の顔がとても近く、視線が合った。私は、急いで姿勢を元に戻した。
「フフ。そんな、慌てなくてもいいのに。....そういえば、今日は髪型を変えているんだね。」
「え?ああ。ベルちゃんがしてくれたんです。....もしかして、似合いませんか?」
「いや、その服と相まって似合ってるよ。そのままでも、十分かわいいけど....」
エドワード様の顔を見ると、心からそう思っているということが感じられた。
「あ、ありがとうございます....」
「んん、お二方。わたくし達もいる事をお忘れではなくって?」
他に人がいることを思い出し、私は顔が赤くなった。ふと、エドワード様の方を見たら、顔を背けていたが耳が赤くなっているのが見えた。
フィオナ様達に見られている気がして、余計に顔が熱くなった。
行き当たりばったりなので、今回はここまでです。また、続きはまた明日にでも。また見てくださるとうれしいです。




