16,まだ分からない、この気持ち
昨日のパートナー探しから一夜明け、
「あれ....?私パートナー決まったんだよね?」
頭がふわふわしていた。そして、彼に手を握られた温もりを思い出し、顔から火が出そうになった。
「あ、あれはただ握られただけ....そうだよ、あれは特に意味はないはず!」
頭を左右に振り、私は急いで寮から出発した。
二人が校門前で話をしているのが見えた。
早い時間だからか彼女たち以外の生徒はまばらだった。
「あ、リナちゃん。おはよう!」
「ん?ああ、リナさん。ごきげんよう。」
「フィオナ様、ベルちゃん。おは....よう!」
息がうまく整わず、挨拶も途切れ途切れになった。
「あら?随分急いだようですが、何かありましたの?」
「....ふー。いや、ちょっと走りたくなって。」
「嘘をついてはいませんよね?」
「うん、本当に何もないよ。....ただ、自分の邪念を晴らしたかっただけだから。」
「邪念....?」
そんな話をしていたら、二人分の足音が聞こえ声を掛けられた。
「君たち、ここで立ち止まってどうしたんだい?」
後ろを振り返ると、フェリクス王子とエドワード様が立っていた。
「あら、フェリクス王子。ごきげんよう。」
「ああ、おはよう」
フィオナ様とフェリクス王子が挨拶を交わしている方を見ていたら、エドワード様が目あってしまった。
「....リナ嬢?随分顔が赤いようだけど、大丈夫かい。」
「だ、大丈夫です。と、とりあえず少し離れていただけると....」
そう言って、少し距離を取るためにベルちゃんの後ろに行った。
「リナちゃん?!」
「う~ん。僕は、リナ嬢に何かしてしまったんだろうか?」
どうしても、昨日の感触が頭から離れない。
「いや、エドワード様は悪くないです。ただ、私の気持ちの問題で....」
顔を思わずそむけてしまった。
「あ、もしかして....!」
「ち、違うからね!別にそういうことじゃないから!」
「フーン。まあ、今度詳しく教えてもらうからね。」
「だ、だから違うって!」
——
私たちが話していたとき、フィオナ様たちはこちらを見ていた。
「そういえばエドワードと、リナ嬢はペアになったんだってね。」
「ええ、そうですわ。わたくしとしても、彼なら文句はありませんわ。」
二人は、私たちのやり取りを微笑ましそうに見ながら言った。
「あの様子を見る限り、彼だけの独り相撲ではないみたいだね。」
「ええ、これからどうなるのか楽しみですわ。」
”パサ”
扇子の奥で、一瞬目だけが笑っていなかった。
「....でも、リナさんを泣かせたら容赦は致しませんわよ。」
——
ふと、フィオナ様のつぶやきが耳に入ってきてそちらの方を見た。
「フィオナ様、どうかしました?」
「なんでもございませんわ。....だいぶ話し込んでしまいましたわね。教室に向かわなくては。」
「だったら、エスコートさせていただこうかな。」
王子は手を差し出し、流れるようにフィオナ様は手を乗せた。
「うわぁ....すごい絵になる二人だね。」
「うん、本当にそうだね。」
「じゃあ、僕たちも行こうか。」
そう言って、私達を先導してくれた。
「エドワード様?リナちゃんをエスコートしないんですか?」
「ベ、ベルちゃん。何言ってるの!」
「ああ、エスコートをしたかったけどベル嬢が一人になってしまうだろう。そうなると、リナ嬢は気を追うんじゃないかと思ってね。」
「もう!二人ともからかわないでください。」
エドワード様の言葉に、胸の奥がくすぐったくなった。
そして、ベルちゃんはそんな私を見てニヤニヤしていた。
「ああ、話は変わるんだけどリナ嬢はドレスを準備しているのかい?」
「え?....ああ、ドレスは家にあるものを着ようと思っています。」
その言葉を言った瞬間、すぐ横で、大きな声が弾けた。
「えー!ドレスは買わないの?!せっかく、リナちゃんに合うドレスを選べると思ったのに。」
「ご、ごめんね。実はそのドレス、私が、この学園に入学するお祝いとして選んでくれたものなの。」
「そうなの?」
「うん。それにまだ着る機会がないから、今回のパーティーで着たいなと思ったの。」
「まあ、そうだよね。ドレスを新しく作ったとしても、私達平民はめったに着る機会がないもんね。」
そうは言ったものの、ベルちゃんの表情はシュンとしていた。
「あら、でしたらお二人にはわたくしのドレスを選んでいただきましょうか。」
「え?でも、王子と選ぶんじゃないんですか。」
「ええ、王子とともに行きますわ。でも、わたくしとしてはあなた達にも見ていただきたいの。構いませんわよね?」
「ああ、私は問題ないよ。」
「でしたら....かまいませんが。」
「フフ、わたくしお友達と服を見るというのは初めてなの。だから、とても楽しみですわ。」
そう言ったフィオナ様は笑顔を浮かべた。
「そうだわ!今度行く場所はベルさんのお家のブティックですの。ベルさん、例えドレスを買わなかったとしても試着はできますかしら?」
「ええ、できますよ?」
「でしたら、エドワード様にも来ていただいてリナさんのドレス姿を見ていただきましょう。」
「ああ、なるほど。それはいい案ですね!」
「フィオナ様?ベルちゃん?....私は買わないんだよ?」
「あら、殿方の意見を聞くいい機会になりますわ。それは、今後に生かせるのではなくって?」
「エドワード様は、良いんですか!」
「うん?僕としては、君のいろんなドレス姿を見れるんなら構わないよ。」
エドワード様はとても堂々と答えた。
「ふふ、じゃあ決まりですわ。行くときは馬車ですの。なので、校門前に集合で問題ないかしら?」
私たちは頷き、その日は授業に向かった。
——
その日の夕方、フィオナとエドワードは話をしていた。
「それで、エドワード様。あなた、リナさんにドレスを買う気だったのかしら。」
「ええ。そのつもりだったのですが....ああ言われては。」
「ですが、何が起こるか分かりませんわ。予備というのは申し訳ないのですが、リナさんに合うものを今度買って置くことはできるかしら?」
「フィオナ様は、何か起こると思っておられるんですか?」
「ええ、最近は特に何も起こってはおりませんが、備えておくことに意味があると思いますの。」
「それなら、買ったことは内緒にしておいた方がいいかな。何も、起こらなかった時のために。」
「そうですわね。....それで、問題ないかしら?」
「はい。問題ないです。」
「フフ、せっかく場を整えてあげるのですからしっかりなさいな。」
「....!フィオナ嬢にはお見通しってことか。....ええ、そうさせていただきます。」




