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15/20

15,あなた達がいるから、私は

そこに立っていたのは、どこかで見たことのある人物だった。

「?」

私とベルちゃんは誰かわからず顔を見合わせていたが、フィオナ様は誰か知っているようだった。

「....あなたは!」

「おや、フィオナ嬢は僕のことを知っておられるとは光栄だね。」

「え....っと、フィオナ様?....この方は知っている方なんですか?」

「ええ、彼はエドワード・シュトラウス。侯爵家の令息ですわ。」

「そんな人が、なんで?」

「わたくしにもわかりませんわ。....それで、いったい何が目的ですの。」

「目的も何も、リナ嬢にあの時の借りを返しに来ただけだよ。」

「あの時の借り?」

そう言われて思い出すために、彼の顔をよく見たところひとりの男子生徒が頭に思い浮かんだ。


「あなた、あの時の!」


その言葉を聞いてエドワードの顔が優しく微笑んだ。

「ようやく思い出してくれた?そう、僕は階段から落ちそうになった時に助けてもらった者だよ。」

「でも、あれは私がよけてしまったからあなたが落ちそうになったんです。だから、あなたが借りに思うことはないはずですよ。」

「だが、君が助けてくれなければ僕は階段から落ちていたしケガだってしていただろう?」

「それは、そうですけど。」


「ちょっと、お待ちになって。あの時、リナさんは落とされかけてたということですの?」


「え....っと。」

どう答えようか考えていたら、フィオナ様の顔がものすごく近くにあった。

「隠し事は”無し”ですわよ!」

あまりの迫力に思わず、ベルちゃんの方を見たら彼女の顔も近くにあった。

「フィオナ様のおっしゃる通りです。リナちゃん?観念して教えてね。」

「お、教えるからちょっと....離れてほしいなぁ。」

そうお願いをしたら、渋々ながら離れてくれた。

「....確かに落とされそうになりましたが、避けましたよ?」

その言葉を聞いて、二人の顔は怒りに染まっていた。

「まさか、そんなことをしていたとは....そこまで、リナさんを....」

「フィオナ様、モニカ様をどうにか致しませんか?」

ここで、どうにか止めないとモニカ様に何かをしに行きかねない。そう思い、止めようと私は言った。

「だ、大丈夫だから。その時は特にケガをしなかったから。ね?とりあえず怒りを抑えて欲しいなぁなんて。」

「だとしても、場合によっては大ケガをしたかもしれませんのよ!」

「でも、ここで仕返しをすると彼女と同じことをしてることになるんだよ。わざわざ、同じ土俵に立つ必要はないよ。」

「あなたは、優しすぎますわよ!大体——」

そう言い合いをしていると、笑い声が聞こえた。


「はは、君たちは本当に仲がいいんだね。身分なんてないかのように。」


その言葉を聞いて、彼もそばにいたことを思い出し話を変えようとした。

「そ、そういえば!僕はその物好き貴族になるねというのはまさか....」

「そうだよ。君のパートナーになりたい人だよ。」

その一言で教室に残っていた人たちのざわめきが一瞬途切れた。しかし、教室のあちこちでひそひそと声が上がり、それが波のように広がっていった。

”侯爵家のエドワード様があの平民と?!”

”いったい何を考えているんだ、あの方は”

”そうだよね、平民を選ぶだけでなくあの噂のある平民を選ぶなんて”


「で、でも侯爵家の人間なら婚約者とかいるんじゃ....」

「僕は三男坊だからね。まだ、決まっていないんだよ。」

「そうだとしても、先ほどの話は聞こえていましたよね。私には、あの噂があるんですよ!」

しかし、エドワード様はだからどうしたと言いたげに堂々としていた。

「噂がなんだい?僕は君と実際に話して、そんなことをする人ではないと思っている。」

「で、でも。実際にわからないじゃないですか!」

私のことを、信じてくれている人に対して思わずそう言ってしまった。

「だとしても、そんな人物だったらフィオナ嬢がここまで仲良くなってないと思うけど?それに、すべての貴族が悪い人ではないことを知っている君だから。」

「そ、それは....」

「そうですわ。リナさんが噂のような人物でないことは、わたくしが良く知っておりましてよ!」

「そうだよ。そんな人だったら今までもやられたらやり返していたと思うし。」

「フィオナ様....ベルちゃん。」

二人の言葉を聞いて私は泣きそうになった。


「それに....あの時よりも前から、ずっと君のことが気になっていたんだから。」


「....?何か言いましたか?」

「いや、何も。それでどうかな。僕とパートナーになってくれる?」

「....ここまで言ってくれる方を、私には断る理由もありません。こんな私ですが、よろしくお願いいたします。」

「ああ、よろしくね。」

「確かに、エドワード様でしたらモニカ様も手出しはできないはずですわ。それに、エドワード様はフェリクス王子からも信頼されておりますわ。なので、わたしくしとしてもおすすめいたしますわ。」

「フィオナ嬢からおすすめされるとは、本当に光栄だよ。」

こうして、パートナーが無事決まったと思っていたところに水を差す人が現れた。


「エドワード、何を考えてるんだ!盗みをするなんて噂のある平民をパートナーにって。」

「....ああ、君かい。なぜ、君にそんなことを言われなければいけないんだ。」

そう言ったエドワード様の目には怒りが見て取れた。

「お前のためを思って言っているんだ!」

「だから何だというんだい?噂ばかり気にして、本人を見ようとしないなんて。君がまさかそんな人だとは思わなかったよ。」


そんなやり取りを聞いて、私は思わずこう言ってしまった。

「エドワード様、やはりパートナーの件はなしにいたしませんか?私は、あなたに立場を悪くしたいわけではないので....」

その言葉を聞いたエドワード様の顔には驚きが現れた。

「な、なんでだい?こんな人の言葉は聞くことはないよ!」

「しっかりと弁えてはいるんだな。よかったじゃないか、彼女からそう言って貰えて。」

エドワード様は忠告をしてきた男子生徒をキっと睨んだ。

「君のせいだぞ!せっかく、彼女をパートナーに誘えたというのに!」

「はあ!俺はお前のことを思って!」

「だからそれは、大きなお世話だというんだ。大体、君は昔から——」

まさか、私のせいで喧嘩が起こってしまってどうしようかと困っていたら、

”パシ”

扇子の閉じる音が聞こえると同時に、鋭い声が響いた。

「”あなた方”そこまでですわ。リナさんが困っていますわ。」

フィオナ様のその一言で二人がこちらを見てきた。

「....あ、あの。喧嘩はやめませんか?そちらの方は、エドワード様が心配で言っているのでしょうし。」

「だ、だが....」

「それにこうして、心配してくれる人は貴重な友達だと思いますよ。本当にどうでもいい相手なら、こんな風に怒ったりすることはないはずですよ。」

「それも、そうだけど....でも!彼は君を貶したんだよ。」

「そうだとしても私には、信じてくれる人がいます。それに、エドワード様だって私を信じてくれていますよね?私はそれだけでいいんです。」

私の言葉を聞いてエドワード様はうれしいけど複雑そうな顔をしていた。

「そうですわよ。リナさんにはわたくしたちがおりますもの。ね、ベルさん?」

「ええ、そうですよ。例え、他の誰かが信じなくても私達は信じますから。」

二人の言葉は私の中に入り心を温めてくれた。


「は~。俺の言葉に怒らないとは。逆に、俺がエドワードを心配してる友達と言うとはなぁ。」

その言葉を言ったと思ったら私をのぞき込むかのように見てきた。そして、私を隠すかのようにエドワード様が前に立った。

「手を出すなよ。」

「出さねぇよ。馬に蹴られたくねぇからな。それにしても....ふぅん。確かに、お前気に入るタイプだな。」

「気に入るタイプ?」

「な、なんでもないよ!それよりも、僕は君とのパートナーを解消する気はないからね。」

「え、ですが....」

そう言って、男子生徒の方を見ると彼は頷いた。

「こんないい子だったら、問題ねぇよ。それに、そいつは案外一度決めたことは最後まで守るからな。」

「一度決めたら最後まで守るのは当たり前だろう?」

「ま、すまなかったな。噂だけで判断しちまって。じゃあ、俺は失礼するな。....まあ、また顔出すわ。」

そう言って彼は離れていった。


「さて、彼にも認めてもらえたってことは問題ないよね?」

そう言ってエドワード様は、私の方を見たかと思ったら私の手をそっと取った。不意に伝わってきた温もりに、思わず息が詰まりそうになった。

「え、ちょ....ま....!」

「....ダメだろうか?」

「ダ、ダメじゃないです。」

その言葉をきいて、エドワード様の顔はうれしさが溢れていた。

「よし!じゃあ今度こそよろしくね!」

もう、断られないようにするためかエドワード様は、そう言い残しその場を急いで離れていった。私は、あっけにとられていたため、フィオナ様たちが何かを言っていても気が付かなかった。


「ねえ、ベルさん。彼、もしかするとですわね。」

「ええ、そうですね。このままいけば、リナちゃんに春が来そうですね。」

「フフ、その日が楽しみですわ。」


——

そんな私たちを影で見つめていた者がいた。


「なぜですの?エドワード様といいフィオナ様といい、あの平民に何かあるって言うんですの?それに結局、わたくしの計画はパーになってしまいましたわ。せっかく、あの平民に惨めな思いをさせたかったというのに....次は、もっと確実に。立ち直れないほどにして差し上げますわ」

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