13,差し伸べられた手を、信じて
※本話には、主人公が不安を感じる描写が含まれます。
——次の日
”トントントン”
そんな音とともに聞こえるはずのない声がした。
「リナちゃん....?まだ寝てるの?」
「リナさん?早く起きないと遅刻いたしますわよ?」
その言葉を聞いた瞬間、私は勢いよく起き上がり扉に向かおうとした。
「うそ!まさか、寝過ごした!?」
”ドン!”
急に目線が低くなり、体に痛みが走った。
「痛っ!」
「「リナちゃん/さん?!」」
二人が驚いている声を聞き、痛む体を動かし扉を開けた。
「フィオナ様、ベルちゃん。おはよう....」
「おはようございますわ。それよりも、何か大きな音がしましたけど、大丈夫ですの?」
「それに、ものすごい痛そうな声も聞こえたよ?」
心配そうな声を聞き、申し訳ないなぁと思いながら
「だ、大丈夫だよ。毛布に引っかかって転んだだけだから。」
「転んだだけって....まあ、本人が何ともないっていうなら何も言いませんわ。」
「そ、それよりも二人はどうしたの?」
二人の顔を見ながらそう聞くと、フィオナ様が顔を少し背けながら、言った。
「....わたくしが、お二人と一緒に登校したかっただけですわ。何か悪いですの?」
まさか、フィオナ様にこんな一面があるとは....と思った。でも、前回のお茶会でも見たと思い出した。
「別に悪くないですよ。....て、遅刻しちゃう。急いで準備しますね。」
「ああ、別に急がなくても大丈夫だよ。なんだったら、ちょっと早いくらいだから。」
「え?....あ、本当だ。」
「フフ。リナさんにもうっかりな一面があるんですわね。」
「....もう、だって遅刻するって言われたらそう思うじゃん!」
そんな言い合いをしながら、身支度を始めた。ただ、時間があると言われたけど、二人を待たせるのはなぁと思って急いで準備をした。
「ごめん、お待たせ!」
「大丈夫ですわ。ね?ベルさん。」
「うん、大丈夫だよ。それよりも、急に押しかけちゃってごめんね?」
「ううん。逆にありがたいと思ったよ。昨日までのことがあったから、ちょっと....教室に行きたくないなって思ってたから....」
”パン”
暗くなりかけていた空気を割く音が響いた。
「....さて、暗い話は終わりですわ。今日のお昼休みには、お茶会をする予定でしたけど問題ありませんわよね?」
「う....うん。問題ないよ。」
「それでは、美味しいお菓子などを準備させていただきますわね。」
「!それは楽しみです。ね、リナちゃん。」
「そ....うだね。楽しみ!」
そんな話をしつつ、私たちは教室に向かった。
”ガラガラ”
騒がしかった教室の音が静かになった。
教室の入り口に着き、二人に続いて中に入ろうとしたら一歩がどうしても出なかった。気持ちとしては、割り切れていたと思っても心は傷ついたままだったのだ。
”なんで....?今まで平気だったはずなのに、どうして今日はこんなに怖いと思ってしまうんだろう”
俯きながらそんなことを思っていたら。
「リナさん。」
優しく私の名前を呼び、フィオナ様が手を差し伸べていた。
「リナちゃん。」
ベルちゃんが笑顔を向けてくれた。
”ああ、そうか。私にはこんな素敵な二人がついてくれている。”
「二人とも、ありがとう!」
そう言って、私は手を握り笑顔を見せた。その言葉と笑顔を見て安心したのか、フィオナ様は握った手を引っ張って教室に入ってくれた。
——
二人のおかげで前を向けた私は、モニカ様が何かをつぶやいていることを知る由もなかった。
「な!フィオナ様がなぜ平民の手を....あなただってアルベルト先生から教わったはずですのに....なぜ!」
「なるほど....やはり、彼が教えたもう一人は彼女のことだったか。ということは——」
そして、そのつぶやきをフェリクス王子は聞き取り、深い思考に耽っていった。
——
午前中の授業を終えて私たちは、お茶会をする場所に向かった。
「お茶会って、前回と同じ場所ですか?」
「いえ、今回はまた別の場所ですわ。でも、人もめったに来ない場所だから気にせず話すことができますわ。」
「そんなところが、あるんですか?」
「ええ。学園のことをよく知っている、フェリクス王子に相談したら教えてくださったの。」
フィオナ様の顔はいつになくとてもうれしそうだった。
「フェリクス王子とフィオナ様ってほんと仲がいいんですね!」
「べ、ベルさん!な、何を急に!?べ、別に。そんなんじゃ....」
否定をしているけど、耳まで赤くなっていた。
「婚約者同士が仲がいいのは良いことだと思いますよ?」
「そ、それよりも!もうすぐ、つきますわよ。」
その言葉を聞き前を見ると、開けた場所に着いた。
目の前には一面の湖が広がっていた。湖の中は、底が見え魚が泳いでいるのが見えた。
「え、すご!フィオナ様ここすごいね!」
「ふふ、そうでしょう。わたしも、フェリクス王子に連れてきていただいた時、とてもびっくりいたしましたもの。」
私の反応がうれしかったのか、声がとてもうれしそうだった。その時、ベルちゃんの反応がなくそちらを見たら、目がとてもキラキラしていた。
「べ、ベルちゃん?」
「....は!ご、ごめんなさい。あまりにも、綺麗だったもので。」
そんな反応を微笑まし気に私たちは思わず顔を見合わせて微笑んだ。
「それにしても、学園って綺麗な場所が多いんだね。」
そんな話をしつつ地面の敷物の上に座り、いろいろな話を続けた。
「やあ、お嬢さん方楽しんでいるかい。」
「まあ!フェリクス王子。ごきげんよう。」
「「フェ、フェリクス王子!こ、こんにちは。」」
まさか、王子が来るとは思ってもいなかった。でも、フィオナ様が王子から聞いた場所だから来てもおかしくはないのか....。
”カチャ”
「それで、どうしたんですの?女性の花園にやってくるなんて。」
「申し訳ないとは思っているんだけど、今日しかまとまった時間が取れそうになかったからね。」
「そうなんですの?」
「それで、来た理由としてはドレスはどんなものがいいか確認したくてね。」
「ああ、それもそうですわね。もうそろそろ、決めなくてはいけないですものね。」
「ドレス?」
なぜ、そんなことを聞きに来たのか疑問に思い声に出してしまった。
「....なぜ疑問形ですの?もう少ししたらパーティーがあるでしょう?」
「ああ、なるほど。貴族の人たちのパーティーがあるんだ。」
「え?何言ってるの、学園の学期最後のイベントだよ?」
「....へ?それって、私たち平民も参加するの?」
「そうだよ。このパーティの目的としては貴族同士の交流と平民で優秀な人を見つけるものであるんだよ。」
「....えー!」
湖に波紋が出るほどの大声が出てしまった。
「あ....あなたそんな大声も出るんですのね。」
「耳が....」
普段、冷静な王子でさえ一瞬顔が歪んだが、元の微笑み顔に戻った。
「あ、ご、ごめんなさい。」
「まさか、そこまで驚くとはね....」
「あ、てことはパートナーもいないってことだよね?」
「パートナー?え、必須なの?」
「ええ、そうですわ。女子生徒は貴族だろうと平民だろうと必須ですわよ。」
「誰とも組めなかったらどうなるの?」
「成績に響きますわね。誘うことも誘えなかったということで。」
「でも、確か....平民側の男子生徒はもうみんな組んでたような....」
「え、ということは貴族の人に頼まないといけないの?」
「それしかないでしょうね。ただ、私みたいに婚約者がいる人はその人と組むはずですわ。だから、相手もより減ってしまいますわ。」
「え、フィオナ様以外に貴族の知り合いはいないよ。どうしよう....」
”そういえば、小説でもパーティーの場面があったっけ。なんで、忘れてたんだろう?もしかして、内容を忘れかけてる?”
パートナーのことを考えないといけないのに、思考にはまってしまい黙り込んでしまった。
”カチ”
「王子、もう時間が....」
「ああ、分かった。ご令嬢方、お邪魔してしまってすまなかったね。フィオナ嬢、ドレスについては後で教えてくれるかい?」
「ええ、メイド伝手にお教えいたしますわ。」
「それでは、失礼させてもらうよ。」
そう言った、王子は従者とともに帰っていった。
「リナさん、いつまで考えておりますの。お友達なのですから、わたくしお手伝いいたしますわよ?特に貴族のことならなおのこと。」
「わ、私も手伝うよ。」
「フィオナ様....リナちゃん、ありがとう!私、頑張る。」
「それでしたら、まずは婚約者のいない人をお教えいたしますわ。——」
リナの相手を探すための作戦を残りの時間に当てた。こうして私は、波乱のパートナー探しに巻き込まれることになった。




