12、真実はどちらにあるのか
前回の回との差があります。
※軽度のいじめ・冤罪描写があります
”チュンチュン”
カーテンの隙間から漏れ出た光に目を細めながら目を覚ました。
「あ、もう朝か....ふわぁ~」
眠いと思いながらベッドから、起き上がり準備を始めた。
「それにしても、昨日は楽しかったなぁ~。まさか、フィオナ様にあんな一面があるなんて....それにしても、この世界は本当にあの小説の世界なんだろうか?それこそ、嘘の噂を流すなんてことも起きていないし....」
お茶会の一件から見ても、フィオナ様が平民を差別するような人ではないとは思う。というか、性格が違いすぎる。だとしたら、やっぱり他に転生者がいて彼女の性格を変えたのかな?でも、何の為に?
「....って、いけない。もうこんな時間!急がなきゃ。」
一度思考を止め、先ほどより準備を早くし寮から出発した。
——
「ふう....まにあった!」
そういって、教室に足を踏み入れようとした。その瞬間、いつもと違う空気を感じ、冷たい視線がこちらに向けられていた。
「まあ、どの面下げてきたのかしら....」
「ええ、本当に。モニカ様がかわいそうだわ。」
「まさか、実は人が見ていないところでやり返しているとはね....」
「卑怯なことをするもんだ。」
こそこそと何か言っているのが聞こえた。
「....え?何のこと?」
そんなつぶやきが聞こえたのか、一人のご令嬢が私の目の前にやってきた。
「まあ、白々しい。モニカ様の大切なものを盗んでおいて、そんな態度をとるなんて。」
「いや、本当に何のこと?」
そう言い、モニカ様の方を見るとうつむいていて体が震えていた。
「昨日、あなたモニカ様の部屋に忍び込んで盗んだのでしょう?」
「昨日は、フィオナ様にお茶会を誘われていたのでそれは無理ですよ。」
「フィオナ様を巻き込もうとするなんて....そんなの嘘でしょう?平民なんかとそんなことするわけないですわ。」
「いや、本当なんですよ。ねえ、べ....」
ベルちゃんに同意を求めようとしたら、彼女は不安気な表情でこちらを見ていた。そうか、今ここで彼女を巻き込めば私と同じ目にあいかねない。そんなことを、私はしたくない。でも、....
「あ、フィオナ様に聞けば!」
そう言って、教室の中を探そうと見渡していたら。
「残念ながら、今日フィオナ様はいませんわよ。まあ、いらしたとしても平民なんか相手にすると思いますの?」
「はい、ホームルームを始めますよ。席についてください。」
どうにか弁明をしようと考えていたら、先生が入ってきてしまった。
「リナさん、いつまでそこに立っているんですか。早く、席についてください。」
「は....い。すみません。」
”クスクス”
普段先生に怒られることはないため、その姿を見た人達がざまぁ見ろと言いたげに笑っていた。
その日の一日は、針の筵状態だった。授業中は、失敗すれば先生にばれない程度に笑われた。休み時間は、私に聞こえるように陰口を言われた。ベルちゃんは、私に話しかけようとしてくれたけど自分から避けてしまった。
「どうしよう、本当に私はやっていないのに....」
そうつぶやきその日は授業が終わり次第、寮に帰宅した。その時のつぶやきを、影で聞いている人がいるとは私は思いもよらなかった。
「さて、これはどうしたものか....ここで、王子である私が出るとややこしくなる可能性がある。だが、このままでは....いや、明日は彼女がいるだろうし任せようか。あの答えを出してくれた彼女に。」
そう言って、フェリクス王子はその場を離れた。
——
いつも通り、目が覚めた。
「ああ、本当にどうしよう。やっぱり、お母さんたちに相談してやめるべきだったかな。せっかく、フィオナ様とベルちゃんと仲良くなれたのに....」
昨日のことを思い出し、憂鬱な状態で準備をし寮から出た。
「まあ、昨日のことがありながら来るなんて....やはり、神経が太いですわね。」
「そうですわよね。私でしたら、これませんでしたわ。モニカ様に申し訳なくって」
そんなひそひそ話が聞こえてきて、教室の入り口で足を止めてしまった。そんな時、後ろから声を掛けられた。
「なぜ、入り口で立ち止まっておりますの?」
その声が聞こえた瞬間、私は涙が出そうになった。
「って、何泣きそうになっておりますの。なにか、ありましたの!?」
そう声を掛けられて、答えようと口を開こうとしたら....
「フィオナ様、おはようございます。その平民から離れたほうがいいですわ。」
「なぜあなたに、そんなこと言われなければいけないですの?」
「いえ、その平民はモニカ様の大事なものを盗んでるんですよ!」
「で、あなたはその盗んだ人を見たのですか?まさか、話を聞いただけでリナさんを批判しているのではなくって?」
「ですが、モニカ様がおっしゃっていたんですのよ!」
「だから何ですの?片方の言い分のみを聞き、片方を批判するのは正しい判断ではありませんわよ。」
「ですが...」
フィオナ様は、きりっと睨んでいろいろ言ってきた彼女を黙らせた。
「ところで、モニカ様。彼女が盗んだと言っているようですが、姿を見ておりますの?」
「い....いえ。見ておりません。ですが、彼女以外にそんなことをするはずはないですわ。」
「まあ、姿も見てないのにそう言って、彼女を犯人にしてますの?」
フィオナ様はまるで信じられないような顔でモニカ様を見た。その目には呆れが宿っていた。
「まあ、いいですわ。それで、いつ盗みが起きたというの?」
「....一昨日ですわ。」
「一昨日の何時ですの?」
「ひ、昼過ぎ頃ですわ....夕方帰ったら、大切にしてたものが無くなっておりましたの。」
「それは、嘘偽りはありませんわね。あとから、時間が違うといいませんわよね?」
「え、ええ。」
フィオナ様は一息ためて言った。
「それでは、リナさんは違いますわね。」
「な、なぜですの!?」
「話は、最後まで聞くものですわ。リナさんはその日、わたくしとお茶会をしていたのですわよ。」
”え、彼女の言っていたことは本当だったのか”
”じゃあ、モニカ様が嘘をついてるのか?”
そんな、ざわめきが広がった。
「な、フィオナ様までそんなことを言いますの!」
「証明してくれる方ならおりましてよ。ベルさんもいましたわよね。」
「は、はい。いました!」
「それに、お茶会の準備をしてくださった方もおりますし、記録も残っておりますわ。」
「え。じゃ、じゃあ時間が違いましたわ!」
「まあ、先ほど違わないとおっしゃっていましたのに違いますの?」
「そ、それは....」
「それとも、本当はそんなこと起こってはいないのではなくって?」
そう言ったフィオナ様の目には一瞬怒りが見えたが、すぐに消えた。そして、そんなことを言われるとは思ってもいなかったのかモニカ様の目が見開いていた。
「な、なぜですの。なぜ、貴族であるわたくしではなく、平民の見方をなさいますの?!」
一言溜息をついてフィオナ様は答えた。
「わたくしは、身分で判断しているのではないの。双方の話を聞いて、事実確認を行った後に判断をしているだけですわ。今回に至っては、わたくし自身で証明ができるのですから。」
その言葉を聞いて何も言い返せなくなると、モニカ様は私の耳元でささやいて教室を出ていった。
「覚えていなさい、平民風情が。フィオナ様に味方になってもらえたからっていい気になるんじゃないですわよ。」
私は、その言葉を聞いて急いで振り返ると彼女はもういなかった。
”トントン”
肩をたたかれ後ろを向くと何かがほほに当たった。
「ふふ、引っ掛かりましたわね。」
「....え?フィオナ様、何をしているんですか?」
「随分暗い顔をしていたので、元気づけようとしたのよ?それで、大丈夫かしら?」
フィオナ様の目には心配が見て取れた。
「あ、はい。大丈夫です。フィオナ様に証言してもらっている間何も言えなくってすみませんでした。」
まさか、謝られるとは思わなかったのかフィオナ様は目をぱちくりさせていた。
「なぜ、あなたが謝りますの?別に、あなたが悪いわけではないでしょう。それに、今回は身分が高いわたくしの話でなければほかの者も聞かなかったでしょうしね。」
そう言って教室内にいる生徒に目を向けてた。
「リナちゃん!ごめんなさい。」
そんな声が聞こえたと思ったら、軽い衝撃が体に当たった。
「べ、ベルちゃん?」
「あやまって済むことじゃないけど、本当にごめんなさい。」
「な、なんであやまるの?」
「私があの時、証言すればもしかしたら状況が変わっていたかもしれないのに....自分可愛さに声を掛けるのをためらってしまったの。」
「なんだ、そんなことか....」
「そんなことって....」
「だって、あの時もし証言してくれたとしても、逆にベルちゃんも私と同じ目にあってしまったかもしれないでしょう?」
「そうかもしれないけど....でも!」
「はい、この話はここで終わり。それに、フィオナ様のおかげで私はやっていないって証明できたから。もし、申し訳ないって思うならこれからも私の友達でいてくれる?」
「あ、当たり前だよ!逆にいいの?」
「いいから、言っているんだよ。」
「....わかった。でも、またこんなことがあったら絶対に味方になるから。」
私は、守ってもらってばっかりだ。自分で何もできなかったことがこんなに悔しいなんて....
「さて、皆様。今回のことはモニカ様の勘違いだったということでいいですわね。」
そんなことを言われた人たちは、首を激しく上下させていた。
「フィオナ様、ありがとうございました。」
「あら、わたくしは本当のことを言っただけですわ。もし、感謝してるというならばまたお茶会をしませんこと?」
「逆に、良いんですか?」
「ふふ、かまいませんわ。でしたら、明日のお昼休みは空いてますの?」
「はい、大丈夫です。」
「ベルさんもどうです?」
「え、私もいいんですか?」
「ええ、良いですわよ。それで?」
「でしたら、参加させていただきます。」
そんな話をしていたら、先生が入ってきたため私たちは一度話を中断をした。そして、休み時間には雑談をしつつその日は終えた。教室の雰囲気は、まだぎこちなかったけどそれでも昨日よりも過ごしやすかった。それはきっと、周りにフィオナ様とベルちゃんがいてくれたからだろう。
今回の出来事は無事に解決をしたが、このことが後々影響してくるとはリナは思いもよらなかった。
「どうして、あの平民ばかり。こんな、こんなはずでは....あっ!そうですわ、確かもうすぐあれがあったはずですわ。フフフ....ただでは終わりませんわよ。」




