蝶の舞 ー濃姫ー
「ハァ、ハァ、ハアッ!」
火の手の上がるあの場所から私は逃げた。
血の滴るあの人の、首を持って――これは今からほんの500年程の前の私の話。
この世に何度となく、生まれ変わった私、ある時は中国の皇帝の妻、ある時は、革命で断罪された王妃、そして戦国武将の妻だったことも。
「そう、何を隠そうこの私、信長の妻をやっていました」
残念ながら、転生した時は前世の記憶など全くなく、記憶があって転生したのならばもう少し良い生き方ができたのだろうか、なんて思うが、毎回違う時代、違う人物となっているのだから、前世の記憶があっても教訓とはならないだろう。
そんな私は現在21世紀の彷徨える魂となっています。
(平たく言えば幽霊です)
不思議な事に、幽霊になると生きていた時の記憶が蘇るのです。
ここでは私の中で一番印象に残っている、戦国武将「織田信長」の妻として生きた、私の人生を語るとしましょう。
戦国時代、蝮と言われる斉藤道三が美濃を制覇し、娘・濃姫(私・胡蝶)が道三の娘として生まれ、政略結婚をし人質同然に信長の妻となり、そこで自らの運命を信長と共に生きていく事に楽しみを覚える。しかしながら濃姫と信長の間にあるのは夫婦の恋慕などではなく、戦友のような絆。信長の残虐性とカリスマ性に惹かれ、支えていく事を選んだ濃姫。
「私はこの狂気を発する男を最期まで見届けよう」
そう決心する私(胡蝶)。
共に生き、あの「本能寺の変」までの怒涛の、されど刺激的だった人生を送った私は信長の死後も長らく生き続けた。あの人の「首」と共に――。
私がこの世を去る時はとっくに髑髏となっていたけれど、私が死んだあとアレはどうなったのか……チリとなって消え果てたのか、土に返って地中奥深くにいるのか、さてどうなった事やら……。
基本的には史実に沿っていますが、作者の主観により捻じ曲げているところもあります。半分フィクションの歴史小説的な感覚で読み進めて頂ければと思います^^。
物語は「第一部・信長に嫁ぐまで」、「第二部・信長との半生」、「第三部・信長の死後」の三部作となります。
特に第三部は本能寺の変の真相を突き止める濃姫の姿を描いたほぼフィクションとなりますが、できるだけ史実に沿って進めますので冒険小説としても読んで頂けます。
お楽しみいただけれると幸いです。
火の手の上がるあの場所から私は逃げた。
血の滴るあの人の、首を持って――これは今からほんの500年程の前の私の話。
この世に何度となく、生まれ変わった私、ある時は中国の皇帝の妻、ある時は、革命で断罪された王妃、そして戦国武将の妻だったことも。
「そう、何を隠そうこの私、信長の妻をやっていました」
残念ながら、転生した時は前世の記憶など全くなく、記憶があって転生したのならばもう少し良い生き方ができたのだろうか、なんて思うが、毎回違う時代、違う人物となっているのだから、前世の記憶があっても教訓とはならないだろう。
そんな私は現在21世紀の彷徨える魂となっています。
(平たく言えば幽霊です)
不思議な事に、幽霊になると生きていた時の記憶が蘇るのです。
ここでは私の中で一番印象に残っている、戦国武将「織田信長」の妻として生きた、私の人生を語るとしましょう。
戦国時代、蝮と言われる斉藤道三が美濃を制覇し、娘・濃姫(私・胡蝶)が道三の娘として生まれ、政略結婚をし人質同然に信長の妻となり、そこで自らの運命を信長と共に生きていく事に楽しみを覚える。しかしながら濃姫と信長の間にあるのは夫婦の恋慕などではなく、戦友のような絆。信長の残虐性とカリスマ性に惹かれ、支えていく事を選んだ濃姫。
「私はこの狂気を発する男を最期まで見届けよう」
そう決心する私(胡蝶)。
共に生き、あの「本能寺の変」までの怒涛の、されど刺激的だった人生を送った私は信長の死後も長らく生き続けた。あの人の「首」と共に――。
私がこの世を去る時はとっくに髑髏となっていたけれど、私が死んだあとアレはどうなったのか……チリとなって消え果てたのか、土に返って地中奥深くにいるのか、さてどうなった事やら……。
基本的には史実に沿っていますが、作者の主観により捻じ曲げているところもあります。半分フィクションの歴史小説的な感覚で読み進めて頂ければと思います^^。
物語は「第一部・信長に嫁ぐまで」、「第二部・信長との半生」、「第三部・信長の死後」の三部作となります。
特に第三部は本能寺の変の真相を突き止める濃姫の姿を描いたほぼフィクションとなりますが、できるだけ史実に沿って進めますので冒険小説としても読んで頂けます。
お楽しみいただけれると幸いです。
前置き
前置き:彷徨える私――幾千年の記憶を抱いて
2025/03/18 18:50
(改)
第一部 一.蝮
蝮―①:美しからぬ私の嫁いだ先――二度目まではまだ序章
2025/03/20 12:13
(改)
蝮ー②:父の策謀に散る夫――そして私は、“ウツケ”のもとへ
2025/03/24 10:37
(改)
蝮ー③:この刀は父を刺すやもしれぬ――義龍の器量と我が血のゆくえ
2025/03/27 10:28
(改)
蝮ー④:婿となりて豪商の娘を娶る――その一手は国盗りのために
2025/03/30 13:00
(改)
蝮ー⑤:金と女と槍と地図と――祖父、天下取りの第一歩を踏み出す
2025/04/02 12:00
(改)
蝮―⑥:別れの涙と一文銭――祖父、美濃にて運命の糸を手繰る
2025/04/05 13:00
(改)
蝮ー⑦:酒を酌み交わし、夢を語り合う――祖父、南陽坊との再会
2025/04/07 12:00
(改)
蝮ー⑧:父の影、志を継ぐ者――美濃国を舞台にした道三の誕生
2025/04/09 12:00
(改)
蝮ー⑨:蝮の毒――祖父の死後に覚醒する父の野望と欲望
2025/04/11 11:20
(改)
蝮ー⑩:主君の愛妾を求めて――父の野心が招いた運命の歯車
2025/04/13 10:40
(改)
蝮ー⑪:狐と狸の化かし合い――父と頼芸の策略の舞台裏
2025/04/15 11:50
(改)
蝮ー⑫:見た目と力――美しさに縛られない私の武道
2025/04/17 12:10
(改)
蝮ー⑬:運命に抗えぬ女――運命を共にした者との出会い
2025/04/19 10:20
(改)
二.輿入れ
輿入れー①:嫁入りの道――新たな波乱
2025/04/20 11:10
(改)
輿入れー②:無礼な童――まだ見ぬウツケ殿
2025/04/22 12:10
(改)
輿入れー③:現れぬ夫──那古野の初夜
2025/04/24 09:10
(改)
輿入れー④:成敗寸前――盗人と思いきやまさかの…
2025/04/26 07:40
(改)
輿入れー⑤:興味津々――尾張での幕開け
2025/04/28 09:20
輿入れー⑥:城の外――自由な殿と無礼な若者
2025/04/30 08:40
(改)
輿入れー⑦:赤い夕陽の兆し――我が殿はウツケに非ず
2025/05/02 09:10
(改)
輿入れー⑧:政秀の小言――穏やかなる日々
2025/05/04 09:40
第二部 三.君主・信長
第二部 「織田信長」 君主・信長ー①:信秀急逝――始まる勢力争い
2025/05/06 09:50
(改)
君主・信長ー②:父の死――怒りと悲しみの焼香
2025/05/08 07:50
君主・信長ー③:静寂を裂く知らせ――政秀の死
2025/05/10 10:34
君主・信長―④:命がけの諫言――忠臣とは…
2025/05/12 08:40
(改)
君主・信長―⑤:喪失と怒り――信長の慟哭
2025/05/14 09:20
君主・信長ー⑥:毒蝮とウツケ――正徳寺会見
2025/05/16 08:10
(改)
君主・信長ー⑦:武装と知略――食えない男
2025/05/18 10:12
君主・信長ー⑧:道三の見た「道」――恐るべき男・信長
2025/05/20 17:21
君主・信長―⑨:信長の才――光秀の秘めた野心
2025/05/22 08:10
四.義龍・謀反
義龍・謀反―①:兄と父の決裂――美濃を揺るがす血筋の疑惑
2025/05/24 12:12
(改)
義龍・謀反ー②:我が父は誰ぞ――義龍、母の元へ馳せ参ず
2025/05/26 07:20
義龍・謀反―③:弟たちの死――崩れゆく美濃の絆
2025/05/28 08:10
(改)
義龍・謀反ー④:道三と義龍――親子相克の果てに
2025/05/30 09:33
(改)
義龍・謀反―⑤:無念の撤退――道三、討たれる
2025/06/01 10:20
義龍・謀反ー⑥:明智一族――義龍に反旗を翻す
2025/06/03 09:20
五.桶狭間の戦い
桶狭間の戦いー①:裏切りの裏切り――清州城の奪取
2025/06/05 07:40
桶狭間の戦いー②:戦の中で――孤独と覚悟と策謀と
2025/06/07 09:10
桶狭間の戦いー③:ふてぶてしい策士――木下藤吉郎
2025/06/09 07:20
桶狭間の戦いー④:風雲の兆し――戦いに挑む策と思い
2025/06/11 07:10
桶狭間の戦いー⑤:今川義元と信長――勝利を信じる者達
2025/06/13 07:10
桶狭間の戦い―⑥: 天が味方した日 ――信長が掴んだ勝機
2025/06/15 07:20
桶狭間の戦いー⑦:戦いの後――義元の首
2025/06/17 07:10
六.美濃攻略
美濃攻略―①:家康(元康)の決断――信長との同盟に至る道
2025/06/19 07:10
美濃攻略ー②:兄弟のように見えた二人――清洲同盟成立
2025/06/21 07:20
美濃攻略ー③:市姫の嫁入り――夫婦の絆
2025/06/23 06:50
美濃攻略―④:政略結婚――もう一つの嫁入り
2025/06/25 07:10
美濃攻略ー⑤:婚儀の夜――高遠で芽生えた愛と安寧
2025/06/27 07:10
美濃攻略ー⑥:「すべて私めにお任せを」――藤吉郎と小六
2025/06/29 07:10
美濃攻略ー⑦:築城と降雨の奇跡――美濃平定の舞台裏
2025/07/01 07:10
美濃攻略ー⑧:墨股築城の奇策――藤吉郎の手腕
2025/07/03 07:10
(改)
七.信長上洛
信長上洛ー①:岐阜命名と天下布武――信長の野望
2025/07/05 07:10
(改)
信長上洛ー②:信長の町造り――やって来た明智光秀
2025/07/07 07:10
(改)
信長上洛ー③:光秀、信長との初対面――運命が動き出す刻
2025/07/09 07:10
信長上洛ー④:義昭の逃亡――歴史の歯車が回り出す
2025/07/11 07:10
信長上洛ー⑤:上洛――信長と義昭、交差する運命の始まり
2025/07/13 07:10
信長上洛ー⑥:義昭の感謝状――信長の思惑
2025/07/15 07:10
信長上洛ー⑦:信長の思いのままに――義昭の誤算
2025/07/17 07:10
信長上洛ー⑧:利用された将軍 ―――二条城の屈辱
2025/07/19 07:10
八.姉川の戦い
姉川の戦いー①:金ヶ崎への進軍――裂けゆく信義の綱
2025/07/21 07:10
姉川の戦いー②:逃げるが勝ち――金ケ崎の退き口
2025/07/23 07:10
番外編――信長の背を狙った殺し屋(前編)
2025/07/25 11:09
番外編――信長の背を狙った殺し屋(後編)
2025/07/27 10:19
姉川の戦いー③:兄と妹――戦に別れる袂
2025/07/29 11:05
姉川の戦いー④:叶わぬ思い――藤吉郎の思慕
2025/07/31 13:29
姉川の戦いー⑤:信長の戦略――崩れる浅井・朝倉
2025/08/02 11:24