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雇用主と車。
千夏が佐野のもとを訪れると、佐野は丁度愛車の洗車をしているところだった。
金も手間もつぎ込んできたこのスポーツカーを、佐野は本当に大切にしている。洗車は絶対に自分で、というのがポリシーらしい。
艶めかしい曲線を描くボディ(佐野談)にスポンジを滑らせる表情と手つきは、まるで……
「エロい」
「は?」
「色気がだだ漏れてる」
まるで、ベッドの上で千夏を好き放題翻弄しているときのように。
「……」
佐野が無言でスポンジをホースに持ち替えた。
「……?」
ざばざばと車体から泡を洗い流すと、男の手は拭き上げ用のウエスではなく千夏に伸びた。
「え……?」
あれよあれよという間にベッドに連れ込まれ、気がついたら着衣は殆ど脱がされて。
最後の砦とばかりに下着を死守する千夏に対して、全裸の男は欲望を隠しもせず、千夏の手をかいくぐって下着をスルリと引き下ろして云った。
「お前が煽ったんだろうが。今日は覚悟しておけよ」
色気だだ漏れはどっちだ、泣いても嫌がってもやめてやれないぞ、と低く囁く声は、常より熱を帯びていて。
車より千夏を選ぶ――大切な選択は絶対に間違えないこの男が、やっぱり心底好きなのだと、快楽に翻弄されながら千夏は思った。




