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第39話 輸送と敵襲

朝、起きて初出勤の準備をする。準備と言っても何もない。7時にモーサムさんの家に集合としか言われていない。服装もあちらで準備するから普段着でいいそうだ。


小川で顔を洗って、歯磨きして。自宅であるテントを出る。一応、唯一の木の棒を持っていく。旅の途中、杖代わりになるかもしれない。


眠そうなうさドラを肩に乗せて、出発。10分ほど歩くとモーサムさんの家が見えてきた。

家の前には、すでに馬車3台が並んでいた。 荷積みも終わっているようだ。


何か作業しているモーサムさんが目に入り、僕は驚いた。武装しているのだ。片手で扱う鉄の斧、鉄兜、鉄の鎧、鉄の盾。その装備からして、モーサムさんは戦士、もしくは重戦士だ。

しかも、その馴染んだ雰囲気からして、初級の戦士ではなく、おそらく中級以上。


「おはようございます、モーサムさん。で、その……どうしたんですか、その格好??」


「ああ、おはよう、ナオえもん。驚いたか?」

「今回の輸送品が一癖あってな。戦闘も予想されるんだ」


「せ、戦闘……?」


「もちろんお前さんは、仮に戦闘が起こっても馬車に隠れて見ておればええ。戦いを見るのも、大事な経験じゃ。」


「一応、お前さんが着れそうな装備も用意してある。これをつけときな」


そう言って、モーサムさんは、庭に向かっていき、そこにいる今回の輸送メンバーと打合せを始めた。


僕は大きな袋を受け取った。

袋を開けてみると、まずは革の兜が出てきた。コンコンと叩いてみたが、どうなのだろう。工事現場のヘルメットの方が防御力は高そうだ。木の棒での攻撃でも、まともに食らったらただでは済まないだろう。


あとは、胴体の部分に小手、脛当て。本当に何かあった時、一番欲しいと思う盾は入っていなかった。


とりあえず、僕の現在の見た目は、革の装備一式。大体イメージ通りだ。悪くはないと思う。

ただ、中身はコスプレした観光客と変わらない。


輸送に使う馬車3台。どれも幌付きで、馬2頭で曳くタイプだ。モーサムさん所有の馬車より一回り大きい。


中を覗くと、木の箱がきれいに並べて積んであった。ぎっしり積んであるわけではなく、スペースには余裕がある。


道中、モーサムさんは護衛として付くようだ。


護衛はモーサムさんを含めて6人。

戦士系3人と剣士系3人。

みんな、それぞれしっかり武装している。


それに、馬車操縦士3人。

こちらもただの操縦士ではなさそうだ。

戦闘になれば、明らかに戦力を担える空気を漂わせている。


それに加えて、僕とビアンカが同行する予定。そういえばビアンカはまだ見ていない。


モーサムさんによれば、急に体調を崩したようだ。

なんじゃそら! ベッタベタな嘘、満開なんですけど。


でもまぁ、僕も大人だ。今回はどう見てもただの輸送ではなさそうだ。かわいい娘を危険な目に遭わせたくないのだろう。


ここは、それでいきましょうモーサムさん。


モーサムさん達の打合せが終わると、僕たちは軽く自己紹介をして出発した。


うさドラはパタパタと馬車の幌の上に移動すると、さっそくそこでウトウトし始めた。うらやましい奴だ。


村の入口で門番さんに軽く挨拶して、外へ出る。


道は、同じ大きさの馬車がすれ違えるくらいの幅がある。王都に繋がる街道だけあって、しっかり整備されているようだ。


まだ朝早いせいか、人影はなく、空気が澄んでいた。

馬車の車輪の音と、馬の蹄の音だけが、街道に静かに響いている。



【輸送隊の現状】

・護衛の実力予想:65以上

 (なかなかのパーティー)

・僕の装備:革の鎧系

 (コスプレ観光客状態)

・うさドラの日常感:90

 (ウトウト中。安定の睡眠時間確保中)


3台の馬車は、それぞれ5mくらいの間隔をあけて進んで行く。先頭の馬車の操縦士の横にモーサムさんが座っている。

残り2名の戦士系の護衛さんも、それぞれ2番目、3番目の馬車に座っている。

あの重そうな戦士系の装備で、歩き続けることは難しいのだろう。


剣士系の護衛さんは、それぞれの馬車の左側を歩いている。街道の左側が森になっているので、そちらへの備えだろう。


なるほど。

防御力が高い装備ほど、長距離移動には不向きというわけか。


忘れていたが、僕には魔王を倒すという使命がある。パーティ編成では、そのあたりも考えないといけないな。


勉強になる。


僕はというと、一番後ろを歩いている。

戦力にならない僕を一人で集団の最後を歩かせてることからして、背後から襲われるようなことは、あまり想定していないのかもしれない。


いや、でも普通に考えたら、一番後ろってけっこう危ないと思うんだけど……。

僕は何か意見できる立場ではない。自分なりに警戒しておこう。


それにしても何を運んでいるのだろう。金銀財宝が、あの村から王都に運ばれるとも思えない。この辺りは魔物は出ないというから、野盗が狙うような物ではあるのだろう。


などと考えていると「ピユゥッ」という口笛が鳴り、全体が止まった。

僕は後ろ、左の森、上、と見たが、どこものどかな風景だ。


馬車の前方を覗いてみると男女2人組が歩いてきている。二人とも大きめの荷物を背負っているが、普通の中年男女に見える。あの2人に警戒したのだろうか。


僕たちが止まっている横を特に違和感もなく2人は通り過ぎていく。護衛の人たちは構えまではしていない。けれど、さっきまでとは空気が違う。


誰も声を出さない。

剣士さんたちの手が、さっきより少しだけ武器に近い位置にある。

目は、通り過ぎる二人をしっかりと見ている。


そのまま2人は歩いていき、30mほど離れた。


ふぅ。緊張した。

いきなり斬り合いになったら、僕はどうすべきかを考えていた。おそらく正解は「隠れて見ている」これだろう。


少しして、再び出発した。

ここから街道は、左になだらかなカーブしていく。


だが、三番目の馬車の横についていた剣士の人が、場所を替わるよう言ってきた。

どうやら、あの2人は怪しいようだ。


まだ村を出て30分ほどしか経っていない。僕の王都観光気分は開始30分で、のどかな風景の向こう側に出荷されてしまった。


この後、襲われるなら、まず前から敵が出てくる。そして、さっきの2人が戻ってきて僕達を挟み撃ちするのだろう。


一番後ろの剣士さんで、あの2人を相手するのだろうか。そもそも野盗ってどれくらいの人数を想定しているのだろう。


僕がいろいろ考えながら歩いていると、うさドラが僕の左肩にふぁさっと降りてきた。


ん?どうした?

めずらしい。


それから頭をグイグイ僕に押し付けてくる。表情もトカゲのくせに険しい気がする……。


おかしい。

これは、あれか?

敵か?


輸送隊はまだ通常運転だ。

不意打ちをくらうのはマズイ。


間違っていたら、謝ればいい。


「敵襲っっ!!」


僕は大きく叫んだ! 


一拍置いて、戦士系の護衛3人は馬車から飛び降り、森へ向かって構えた。

剣士系3人も、ほぼ同時に武器へ手をかける。

馬車の操縦士たちも、手綱を持ちながら、構えている。


僕はうさドラと一緒に、森と反対側に馬車の後ろに隠れた。


すると約10秒後。


「なぜわかった?」

「こちらは、身を潜める場所まで用意して待ち構えていたのだがな。 優秀な偵察役がいるようだ」


その声と共に、森から武装した集団がすうっと現れた。


第39話 完


【ナオえもん:現在の「出荷済み」ステータス】

〇状況観察&考察:80点

(挟み撃ちの可能性まで一瞬で脳内シミュレートした合格点)

〇戦力:30

(演武の上達+革の防具セット補正。でも戦ったら即終了なので馬車の陰をキープ)

〇仲間への警告:100点満点

(恐怖心0が功を奏し、即時判断)


・備考:敵から「大変よくできました」を受賞。うさドラにおやつ(高級品)を確約。

・一口メモ:パーティ編成時には、移動の距離・手段が大事。




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