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第34話 争い

翌朝、みんなで朝食をとっていると、玄関のドアをノックする音が聞こえた。

ドーラさんが行くと、そこにはコリンとバーシュが立っていた。

どうやらビアンカに用があるようだ。

僕は、リビングからそっと玄関を覗いてみる。


「あらコリンこんなに早くどうしたの?」


「やぁ、いや、あの、グレイブが今日はビアンカちゃんを絶対連れて来いって」


「おはよう、ビアンカ姉さま。うそよ、うそ。グレイブはそんなこと言ったりしないわよ。コリンが来てほしいだけなのよ。わたしも無理やり連れてこられましたのよ」


「おい! ちがう! グレイブが目で俺にそう言ってたんだ」


「グレイブなら人に頼まないで、自分で来ますわよ。男らしく堂々と」


「まぁまぁ。誘いに来てくれたのね。ありがとうコリン、バーシュ。わかった。準備したらナオと行くから先に行っててちょうだい?」


「あ、いや、あのナオえもんってのも来るの?」


「もう、コリンたら。あーだこーだ言ってないでここは先にいくわよ」

「姉さま、では先にいってますわね」


バーシュはコリンの手を引っ張って、5.6歩進むと、コリンのお尻に蹴りを入れている。

髪はきれいなピンク色で、モフっとしたロングヘア。お目めもぱっちりな、かわいらしいお嬢様風だが、意外にじゃじゃ馬そうだ。


ちなみに、コリンは坊主頭で、背丈はビアンカくらい。いかにも俊敏そうな青年だ。


ビアンカがリビングに戻ってきて、僕の耳元に手を添えて小声で話しかけてきた。

「本当は、交渉官調べから始めたかったけど、 横やりが入っちゃった。今日は道場に行って、なにか身体を使う鍛錬を始めてみましょう?」


「あ、ああ。僕はなんでもいいよっ」


ちょっと、ビアンカ。朝からご家族の前で、近いよ。しかも内緒話はマズイでしょうよ。

ほら、モーサムさん、ドーラさんの目が細くなってる……。


「あははは。いや、僕もビアンカのお友達がいるところへ行ってみたかったんだー」

「行こう行こう。ぜひ、みんながいるところで鍛錬をはじめよう! あははは……」


「じゃぁ準備準備!」

ビアンカはなぜか張りきっている。


「あの、僕は何を持っていけばいいの?って、なにも持ってないんだけど」

僕にあるのは、初日に拾った棒と、あそこのうさドラだけ……。 


「シギャっ♪」


お、いいタイミングで鳴いた。なかなかできるトカゲだな。


「そうね、ナオはその棒と、うさドラちゃんを連れてきて」

「あとは、わたしが準備するから」


そう言って、ビアンカは自分の部屋に向かって行った。

僕は玄関を出て、馬車置き場に立てかけていた棒を手に取った。


棒を右手に装備した。

攻撃力が1上がったような気がしないでもない。

余った時間でうさドラを強めになでなでして時間をつぶす。


「フギャ……」


不満そうだが、逃げない。

よし。順調に主従関係は築けている。


しばらくして、ビアンカは肩に大きめの鞄を下げて玄関から出てきた。

思ったより荷物が多いようだ。一応、僕が持とうかと言ってみたが、ビアンカは鞄を僕に渡すことはなく、2人はそのまま道場に向かった。


道場にはすでに30人くらいの人がいた。

想像していたよりもずっと多い。

まだ、みんなそれぞれ談笑して始まりを待っているようだ。


見覚えがあるのは、グレイブ、コリン、バーシュの3人くらいだ。

その周りには、背は高いが、わりとぼうっとした印象を受ける青年が1人。 眼鏡をかけた小柄な少年が一人。

よく日に焼けたわりと筋肉質な青年が一人いる。 あとここにビアンカが加わって、7人グループなのだろう。


「お待たせー」

ビアンカのその挨拶を皮切りに、昨日は何してたんだと、あれこれとみんなで話し始めた。

もちろん僕は、その輪に入るわけもなく、道場内を見回していた。


「で、これが噂のナオえもんってやつなのか? あんまり強そうじゃないな」


日焼け青年くんが、いかにも挑発しています、という態度でこちらに絡んできた。


はぁ……。案の定というか、定番というか、やっぱりこういういきなり礼儀知らずで喧嘩腰で来る奴がいるんでございますねぇ

さて、これをどう切り抜けたらいいのやら。

残念ながら僕には、彼を圧倒的な力でねじ伏せられるような実力はない。

すごい才能があるという交渉官適性が、ここで生きるようにも思えない。というか、まだ何も知らない。


さて、どうするか。

・候補1:ビアンカの後ろに隠れる。

(社会的尊厳が地に落ちるため、避けたい)

    

・候補2:スキル「偽パニック」&「死にゆく者」を使用し、この場から退場する。(今後、この村での生活が非常に困難になりそうなので避けたい)


・候補3:隠し持つ実力はないが、喧嘩を受けて立つ。(この場で殴られることはないだろう。日焼け君が常識人であることを願う)


3だな。3しかないな。頼むぞ日焼け君。


「ふぅ。いかにもかませ犬の発言だな。君はそれでいいのかい?」


僕は余裕たっぷりに、呆れた態度で返してみた。恐怖心がないからできる芸当だ。 日焼け君は「な、なんだと?」と、目を丸くしている。 


さぁ、ここからだ。 僕の胸ぐらを掴むくらいで止まってくれよ!


信じてるぞ日焼け君!


【ナオえもんスキル 敵と織りなすハーモニー】

解説:敵が常識人であることを信じ、修羅場を切り抜ける範囲系逃避スキル

効果:周りに、侮られることなく、難を逃れることができる。ただし、事情通の味方に緊張感を強いる。

備考:スキル発動後の展開は相手次第となり、場のコントロールができない。 失敗した場合、悲しい結末になる可能性が高い。


第34話 完


【道場内の空気】

モブ的生徒たちのやれやれ度:100

現ネームドキャラ、後のネームドキャラ候補の緊張感:80

道場前の手乗りドラゴン2匹の熟睡度:95


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