表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/21

第3話 九人の僕と、魔王の影

本日3回目の更新、お付き合いいただきありがとうございます!

本日分の先行公開はここまでとなります!

明日からは、毎日20:00に1話ずつ更新していく予定です。

「はいぃぃぃ???」

「旅ってなんなんですか?」

「旅行…とはちがいますよね?きっと…」

「パーティー組んで魔王でも倒しに行っちゃう的なやつですか?」


さっきまで少しだけしんみりしていた気持ちが、一瞬で吹き飛んだ。

代わりに、怒りがこみ上げてくる。


なんなんだコイツ。


散々上から人の黒歴史をほじくり返しておいて、

結局お前も十分こっち側じゃねーか。


「お前のお前が」のくだりで、だいぶヤベーやつだとは感じていたが、

ガッツリヤベーんじゃねーか。


「まぁ、聞け!」

「我はヤバくない!」


「いや、やべーよ…」


「なっ…」

「バカを言うな!」

「詳しくは言えぬが我はもうすっかり大人だ。かなりの大人である。」



・・・おや?

妙に必死だな。

あやしい。

さてはその辺りに、黒歴史が埋まってるな、お前。


「ゴホン」

「話を戻す!」

「真のお前は、長く続くストレスにより精神が崩壊しかけておる」


「え、なにそれ?」


「精神の崩壊を避けるには、心を豊かにせねばならん」


「お前がかつて夢見たあの恥ずかしい冒険は、ただの妄想ではなかったはずだ」


「眠る前、お前にとってあれは心の安らぎであったであろう?」


「心の支えであったであろう?」


「ゆえに、お前は旅に出る」


「お前にとっては、新しい世界での冒険といったところだ」


「そして、真のお前にも夢や希望を見させてやるのだ」


な、なんだよそれ。


ゆえに旅に出ろって、話が飛び過ぎだよ。

全然「ゆえに」になってねーよ。

わけわかんねーよ。


別に旅は嫌いじゃないよ。

でも、いきなり真っ暗な場所に放り込まれて、その流れで「旅だか冒険だかに出ろっ」て言われても、

はい、そうですかとはならねーよ。

僕だって生活があるんだよ。


さっきから真のお前、真のお前って、全然わかんないし。

その真のお前ってのは本当に僕なのか?

今ここにいる僕の他にも僕がいるってことなのか?


どーいうことだよ。正直、イメージすらつかないよ。

本当の自分だの何だの言い出すやつに、ろくなのがいた試しがないんだよ。


でも…

まぁ、バカにしてるわけじゃないのは、なんとなくわかった。


コイツはどうやら本気だ。

正気かどうかは怪しいけど、本気なのは伝わる。


それに、僕を冒険に出させようとすることに、裏があるようには思えない。

いきなり散々いじめてくれたけど、悪い奴ではなさそうだし…


こいつも僕で、その真の僕とやらを助けようとしているのは、たぶん本当なんだろう。


だって聞こえてくるこいつの声、かなり困ってる感じじゃないか。


はぁ…

……まあ、いいか…

こんなわけのわからない状況だし、今さら考えてもしょうがない。


冒険だって、別に嫌じゃない。

いや、むしろちょっとワクワクしてる。

中2っぽいけど。


真の僕ねぇ…

まぁ、人助けみたいなもんだろ。


しょうがないっ

僕は小さく息を吐いた。


「いいよ!行けっていうなら行くよ」


「……助かる」

「我が今なお、真のお前を支えていられるのは、お前のそういうところが変わらぬからだ」


「そ、そりゃどうも…」


「では、旅立つ前に、お前が行く世界について少し教えてやろう」


「世界は広い。

その中で人、動物、モンスターは数えきれないほど生きている」


「真のお前とつながりを持ち生きているのだ」

「決して、真のお前が作り出したプログラムのようなものではない」


へー。

生きてるんだ。


真のお前とつながっている、ってのがどういう意味なのかは、よくわからない。

何か影響し合っているのかもしれないし、そのへんは想像もつかない。


そこはわからないけど、生きているってうれしいな。

プログラムだから感情に惑わされるな、とか言われたら寂しいしね。


「あの、もちろん僕も生きてるってことだよね」


「とーぜんだ!

お前も、我もちゃんと生きている」


僕は生きている。

そしてこいつも生きているのか。

……うん。

 それは、ちょっと安心する。



「そしてその世界には、真のお前が作り出した「お前」が、お前を含めて9人いる」

「お前が最後に世界に入る事になる。これ以上増えることは無い」


僕が9人いる????


なになになにその設定。


それは本当に僕なのか???


僕が右手上げたら他の僕も右手あげるとか??

それともタイムスリップ的な過去の僕と出会ったりする感じ?


それなら僕にはひとつ重要なミッションがある!


そう!

あの頃の、バカな自分をぶん殴ってやるのだ。


あとは、最後に入る?増える事ない??ってところか。

それは不利なのか有利なのか。どーなんだろう。


でも――

少なくとも、こういう設定は今まで僕がやってきたゲームにも、読んできた転生系の小説にもなかった。


面白そうじゃないか!!


ワクワクするなー。


ん?

今から僕は知らない世界の飛び込むというのに単純に面白そうと思う。

ワクワクしている。


恐怖心がないからか。


普段の僕ならこんなに純粋に喜べない。

きっと不安の方が勝っていたはずだ。


恐怖がない。

 ……これは、たぶん大きい。

この先の冒険で、間違いなく鍵になる。

常に意識しておくことにしよう。


「最後にもうひとつ。」

「お前たち9人は自分の顔を見ることができない。鏡にも映らぬ。」

「いや、正確には違う。実際には映っており、周りの者にはしっかり見えておる。

「お前たちはただ、自分の顔を認知できず、記憶にも留められぬだけだ」


「なんだそれ?」

「それって、どういう意味が……」

思わず眉をひそめる。


「さ、時間だ。」

「しっかり魔王を倒してまいれ!」


「ちょっ、待て待て待て待てっ!!」


当たってたのかよ!!!

最後はやっぱり魔王を倒しにいくのかよ!

そこはひねり無しかよ!


「これまでの冒険ものとは一味違うぜ」なんて思ってたのに!


「死ぬなよ。」


「え?」


その一言を最後に、声はふっと消えた。


しばらくすると、真っ暗だった世界に、わずかな気配の変化を感じた。

風でもない。音でもない。

けれど、何もなかったはずの闇が、少しずつほどけていくような感覚があった。

足元に、淡い光がにじむ。


「うおっ!?」

思わず変な声が出た。


さっきまで床の感覚なんてなかったのに、今はたしかに自分の足の下に“地面”がある。

黒一色だった空間に、細い光の筋がいくつも走り、それが円を描き、道を作り始めていた。


「な、なにこれ。急にそれっぽくなってきたんだけど」

胸の奥がざわつく。

怖さはない。


たぶん、これは――期待だ。

子どものころ、布団の中で何度も夢見た誰にも知られない、自分だけの冒険。

剣を握って、仲間がいて、強敵がいて、ピンチがあって。

かっこいい自分がいる世界。

その入口が、今、目の前にある。

もちろん状況は意味不明だ。


真の僕とか、頭の中とか、複数いる僕とか。

けれど行くんだ。


「……ほんとに行くんだな、僕」

つぶやくと、闇の奥で、あの声がなにやらとても驚いている気がした。

なんだろう。


「おーーい」

返事はない。


その代わり、目の前の光が一段強くなった。

道の先に、輪郭が生まれる。

草の匂い。土の匂い。遠くで鳴く、名前も知らない鳥の声。

真っ暗だった世界は、気づけばもう、夜明け前みたいな薄青い景色へと変わっていた。


その中央に、一本の道が伸びている。

どこまでもまっすぐで、どこへ続くのかはわからない。

不思議と目をそらせなかった。


これはたぶん、僕が何度も夢見た“はじまりの道”だ。

ごくりとつばを飲み込む。

相変わらず、怖くはない。


さぁ!始まりだ!

少しくらい格好つけて踏み出してやるかっ!


「いざ、参らん!!」


世界が伸びる。

ぐるぐる回り出す。


僕は深く息を吸って、目の前の道へ足を踏み出した。

 

第3話 完



本日分(第1話〜第3話)を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

ようやく旅の始まりです。


声の主(僕査定):ヤバくない度25 大人度75 黒歴史所持率100


続きが気になった方、応援したくなった方は、ぜひ下のブックマーク登録や**評価(★★★★★をポチポチ!)**をいただけると、声の主の大人度がほんの少し上がります…たぶん……


明日、20:00にまたお会いしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ