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第24話 語られる世界の謎

帰路。


人質となったうさぎはビアンカちゃんに保護されたあと、無事、森に返された。


「ビアンカ、心配したぞ」


グレイブは、無理やりビアンカちゃんの横を歩いている。


僕は自然とビアンカちゃんの横から押し出され、後ろに下がった。

僕の隣にはコリンが歩いている。


元・うさぎの王は、僕の右肩に乗っている。

その表情は、どこか暗いように見えた。


チロルはビアンカちゃんの腕の中だ。


「連れ去られているかと思ったぞ、まったく」


「そんなわけないでしょ」


ビアンカちゃんは、困った顔をしている。


僕は後ろから、なんとなくビアンカちゃんの背中を見ていた。


悲しいけど、並んで歩くビアンカちゃんとグレイブは絵になっている。


「では、何をしていたのだ?」


「それは……内緒!」


「なっ、ビアンカ!」

「内緒とは何だ、内緒とは!!!」


ビアンカちゃんはそんなグレイブを置いて、こちらを振り向いた。


「コリンは初めてよね」

「その人、ナオえもんっていうの」


「どうも」


僕たちは軽い自己紹介などをしながら、村に帰った。


村の入り口が見えてくる頃には、太陽はだいぶ高くなっていた。


「さ、もう昼前だな」

「今日は切りよく、午後から始めるとするか、ビアンカ!」


「あ、今日はやめとくわ。欠席で」


「なぜだ! どうしてだ!」


「ちょっとナオえもんと、用があるのよ」


「なっっっ!!!!」


グレイブが、ものすごい目でこちらを見てくる。

そして、心なしかコリンも、面白くなさそうな目でこちらを見てくる。


なるほど、君もそっち側なのだね?

これはドキメモ作戦、もうちょっとゆっくり進めないと、僕の身が危なそうだぞ……。


「ごめんね」

「そういうわけで、ほら、行くわよ、ナオえもん」


ビアンカちゃんは僕を引っ張っていく。


僕は申し訳ないやら、恥ずかしいやら、ちょっと優越感もあるやらで、とても二人の方を見られなかった。


【グレイブ敵対度:100 コリン敵対度:85 ドキメモ作戦進捗度:120(早すぎ)】


僕たちはそのまま、ビアンカちゃんの家の裏にある庭へ向かった。

そこには、木でできたテーブルと椅子が四つほどある。


ビアンカちゃんは、木のマグカップ二つにお茶を入れ、同じく木の皿二枚にミルクを入れて持ってきてくれた。


さっそく二匹は、嬉しそうにミルクをなめている。


「まずは、あなたの手乗りさんの名前を決めなくちゃね」


「そっか」

「僕は何でもいいけどね」


そう言うと、元ウサギの王は偶然かどうかわからないが、お皿から顔を上げてこちらを見た。


「ダメよ」

「これからお世話になるんだから!」


「そうねぇ」

「じゃ、うさドラでいいんじゃない?」

「さっきまでうさぎを従えてたし……」


「うさドラ?」


「いいわね、それ!」

「それに決定!!」


「良かったわねー、うさドラ!」

「かわいい名前になって!」


ビアンカちゃんはそう言いながら、うさドラを撫でている。

うさドラは、ほけっとした顔で、おとなしく撫でられている。


僕は拍子抜けした。

もっと「まじめに考えなさい」とか言われるかと思ったのに。


「それに、あなたのご主人様のお名前と混ぜると、とっても危険よ!」

「混ぜるな禁止っ!」


し、しまった!!!!


思いもよらぬ方向から、ナイスドッキング禁止な名前になってしまった。


まぁ、主人とペットの名前を混ぜて、危険な会話をする人はいないだろう……。


僕はうさドラの頭をむぎゅっとつかみ、よろしくな、とぐりぐり撫でる。


「フギャッグッ」


うさドラはかなり不服そうだが、反撃せずに撫でられている。


一度屈したからには従う。

なかなか見上げた性格だぞ、このトカゲ。


「もう、そんなに強くしたら痛いじゃないの」

「ねぇ、うさドラ」


そんな話をしている僕らは気づかなかったが、庭の奥の草むらには、僕らをうかがう何者かが潜んでいたのだった。

そしてその何者かは、僕たちの様子を細かく記録していた。


監視メモ① 11時10分。

場所:庭のテーブル。

状況:手乗りドラゴンを撫でながら談笑。

雰囲気:なごやか。恋人同士のような気配はなくはない。

注意事項:ドラゴンを撫でる二人の手が重なり合うことにならないか注意が必要。


「ところでさぁ、ずっと気になってたことがあるんだ」

「聞いていい?」


「そうね」

「わたしも、いろいろ説明しなきゃと思ってたところ!」

「どうぞ?」


「この世界って、魔物っていうか、モンスターとかはいないの?」

「ほら、さっきも普通に村の外を歩いて行ったじゃない?」

「スライムとか、最弱のそれ系もいなかったし」


「この辺りにはいないわね」


「魔物っていうのは、魔王の影響を受けて、凶暴化したり、強化されたりした生き物のことなの」

「でも、元は普通の動物なのよ」


「そ、そうなの???」


「ってことは、なに?」

「木が動いて攻撃してきたり、ゾンビみたいなのだったり、骸骨だったり、そういうのはいないってこと?」


「いないわよ」

「そんなの怖いじゃない……」


「怖いじゃないって……」

「ほら、ドラゴンはいるのに?」


「ドラゴンはモンスターじゃないじゃない?」


「モンスターでしょ!」

「だって、ドラゴンだよ?」


「ドラゴンよ」

「でも、あなただって、さっきトカゲとか言ってたじゃない?」


「た、確かに……」

「トカゲに似てるから言ったけど……」

「そうか、トカゲが飛んでるだけか……」


「ただし、本物のドラゴンは世界に九体しかいないのよ」

「もちろん、チロルたちみたいな手乗りドラゴンは別ね」


「少なっ」

「それ、どうやって繁殖してるの?」


「ドラゴンが繁殖するなんて、聞いたことないわ」


「いや、じゃあ……」


やめておこう。


おそらく話は進まない。

このまま突き詰めても答えはなくて、雰囲気が悪くなるだけだろう。

ここは、ドラゴンはドラゴンでいいじゃないか。



監視メモ② 11時30分。

場所:庭のテーブル。

状況:手乗りドラゴン二頭は居眠り中。

雰囲気:互いに戸惑っているように見受けられる。別れ話のような気配がなくはない。

注意事項:「だめだ、お前を離さないっ」、もしくは「いや、別れたくない」などと言って、二人が抱き合う形に発展しないか、さらなる注意が必要。



「そっか」

「なるほどね」

「で、そのドラゴンはどこにいるの?」


「そうね」

「私が知っているっていうか、聞いたことがあるのは……」

「まず、滋賀国にある巨大な湖にいる水竜のビッシーが有名ね」


び、ビッシー???


久しぶりに聞いたな、それ……。


この世界でドラゴンになっているとは!

大出世じゃないか、ビッシー!

よかったな!!


「名前が判明しているのは、その一頭だけ」

「存在が確認されているのは、比叡山ってところに一頭」

「これは智竜と呼ばれているわね」


ち、智竜かぁ!


かっこいいなぁ。

いかにも、そこに行けば何かを授かりそうだ!


「あとは、島鳥国にいる地竜かしら」


「ちょい待ちっ!!」


「島鳥国?」

「それは、まさか、ここから西の方に行ったところで、中央の山脈の北側あたりに位置する国?」


「詳しいじゃない!」

「だいたいそんなところよ」


んんーーー、厳しいな。

あまりに厳しい。

どうやら、島根と鳥取は統合されているようだ。


あそこは、いつもニコイチ的な感じだし、名前の表記も似てる。

どっちがどっちかはわからないけど、いっそのことという思いはあった。


でも、そうか。

島鳥国になっていたか。


「そっか」

「なんだろうね」

「あ、そうだ。地竜がいるんだよね?」


「そう」

「あそこには大きな砂漠があるらしくて、そこにいるらしいわ」


なるほどね。


「それくらいね」

「あとは知らない」

「ここは山国だからね」

「もっと開けた国に行けば、いろいろわかると思うけど……」


ドラゴンの話だけでも、ずいぶんこの世界の地図が見えてきた気がする。

なら、一番大事なことも聞いておくべきだろう。


「ちなみに、僕たちの目的の魔王はどこにいるの?」


「それは、東の方」

「噂では、東京都国とうきょうとこくって国が、最前線って聞いたけど……」


監視メモ③ 11時50分。

場所:庭のテーブル。

状況:談笑中。手乗りドラゴン二頭はお目覚め。どうやらお腹を空かせている模様。

雰囲気:男性側のテンションが高い。夢を語って一気に口説き落としにかかっている気配がなくはない。

注意事項:「黙って俺についてこい」などと、求婚が発生しないか警戒が必要。



「シギャ、シギャ」

「フギ、フギ」


「あら、こんな時間だわ」

「いったんお昼にしましょうか」


僕たちは勝手口から家の中に入っていった。


監視メモ④ 11時55分。

場所:庭から家の中へ移動。

状況:手乗りドラゴン二頭のおねだりにより、昼食に入る模様。

雰囲気:家に入る流れが、何もない男女としてはあまりに自然。すでに男女の仲のような気配もなくはない……

注意事項:密室であることををいいことに「二人きりだね」などと言って、愛が育まれる可能性に最大警報!!!

引継ぎ事項:追尾を行うため、こちらも移動。

備考:村の秩序に関わるあまりに重大な男女間事案へ発展する可能性があるため、増員要請を検討。


第24話 完


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