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第23話 森の王国の政変

木漏れ日がスポットライトのように差し込む、苔むした(こけむした)平らな岩の上。

そこには、手のひらサイズながらも、威風堂々とふんぞり返る一匹のドラゴンの姿があった。

その足元には、野生のイチゴや木の実が山のように積み上げられている。

驚いたことに、周囲には十数匹の野生のウサギたちが、まるで忠誠を誓う家臣のようにうやうやしく頭を垂れていた。


「・・・」

「あれ、なに?」

「どうするよ……、うさぎの王になってるんだけど」


「・・・」

「そ、そうね」

「やるじゃないのあなたのドラゴン」


「ンギャ、ンギャ」

振り向くとチロルが僕たちの上を通り過ぎ、ゆっくりうさぎの王のもとへ飛んでいく。

隣に降りると何やら2匹で話しているようだ。

すると、王が少し左へ動き、チロルがその隣、右側に席を取った。


そして当然のように、積まれている野イチゴを嬉しそうに食べ始めた。

周囲のウサギたちは、小さく頭を下げている。


「おいっ!! おたくのチロル、どうやら王妃の座に収まったようだぞ!!」

「面の皮の厚さは半端ねえな!!」


「チ、チロルったらいつの間にあんな……」

「あの子もやるわね……」


しばらくあっけにとられ、その光景を見ていると、野イチゴに満足したのか、チロルが王にこっちを翼で指しながらなにか言っている。

そして2匹がそろって翼を動かすとフワッと浮かび、そのままパタパタとこっちへ飛んでくる。


王の方は、じーっと見ている僕らの横に着地し、王妃の方はビアンカちゃんの腕の中に収まった。

草の間からは部下のうさぎたちが不安そうに顔を出してきた。


僕と王の目が合う。。。


「あ、あの…、この前はごめんね」

伝わるかはわからないが、とりあえず謝罪の声をかけてみる。


ど、どうすればいい?

僕は目線でビアンカちゃんに助けを求める。


しょうがないな、といった目で、ビアンカちゃんは場面を引き受けてくれた。

屈みながら王の方へ近づいていき、

「あの、ドラゴンちゃん? 悪気はなかったみたいなの」

「仲良くしてあげてね」

と言って、王の頭をなでる


シギャ♪


王は意外と嬉しそうにしている。

目を細め気持ちよさそうだ。


よし。

ここだ。


僕は、できるだけ敵意がないように、ゆっくりと手を伸ばした。


「許しておくれ。ねっ?」

「僕たち、これから仲良くやっていこうじゃないか」


王はじっと僕の手を見ている。


いけるか?

これはいけるやつか?


警戒心を残しながらも、いざ、撫でようとしたその瞬間。


「ガフンっ」

王は、僕の手に噛みつこうとしてきた。


だが、甘い!

一瞬、王の目が光ったのを僕は見逃していない。

「来る」と分かったのだ。


「噛みついてくるとは生意気なトカゲだな」


「ちょっと」

ビアンカが袖を引っ張ってくる。


「フンっ、フンっ」

王の鼻息は荒い。


「ほぅ! やる気か!! ならば来い、ばかトカゲめっ」


王が低く身構える。

草むらの奥で、ウサギたちがびくりと震えた。


その瞬間、僕もまた腰を落とした。


正面からぶつかれば、相手は小さくてもドラゴンだ。

牙もある。

爪もある。

何より、さっき噛みつこうとしてきた根性がある。


まともにやり合うのは得策ではない。


もらったぁ!!


僕は一瞬の重心移動から一気に動き、手を伸ばす。

その先にいたのは、草むらの一番手前で固まっていた一匹のうさぎだった。


うさぎは、まだ事態を理解できていなかったのだろう。

つぶらな目で、こちらを見上げていた。


甘い。

戦場では、ぼんやりしている者から落ちる。


僕はそのうさぎを両手ですくい上げ、そのまましっかりと胸元に抱え込んだ。


「はーっはっは!!! 貴様はこれがどうなっても良いというのだな!!」


「げっ」

ビアンカちゃんの声が、一段低くなった。


うさぎはようやく自分が捕獲されたことに気づいたらしく、逃げようと空中で足をバタバタさせ始める。


だが、遅い。

無駄である。


「フギャァーー」

(き、きさま! それでも人間か!!)

王がそう叫んでいる気がした。


「フギョギョッ」

(あなた、血の色は何色なの??)

チロルまで、信じられないものを見る目でこちらを見ている。


「―――――――――――っっっ!!」

うさぎ一同


「あなたって人は、罪のないうさぎを・・・」

ビアンカ


「は、は、は、とうとう正体を現しおったな!!」

追いついてきたグレイブが、木の陰から叫んだ。



(これはいったいどういう状況なんだ?)

追いついてきたコリンは、ぽかんとしていた。


「な、なんであなたたちがこんなところに!!!」

 ビアンカちゃんが、思いきり引いた顔で叫ぶ。


王はしばらく僕をにらんでいたが、やがて、がくりと頭を落とした。

(わかった、きさまの勝ちだ)

そう言っているようだった。


「わかればいい」

「わかればこれ以上、何もしたりはせん!!」

 僕は最短で事を解決したと確信している。

 今の、この姿に、1ミリも恥じるところはない。


こうして、僕たちの捜索は完了した。

なお、うさぎはこのあと、ビアンカちゃんにより丁重に保護されました。


第23話 完


現状ステータス診断

ナオえもん:属性:悪:目的のためには手段を選ばない。恐怖心の無さが逆回転ぎみ


ビアンカ:ドン引き度:100%:「純度100%少女」の防壁が、婚約者の外道な手段によって内部から崩壊中。


うさぎの王:完全服従(敗北):物理攻撃ではなく「精神的卑怯さ」に屈する。部下思いな、ある意味不憫なボス。


うさぎの王妃:どさくさに紛れて王の隣でイチゴを貪る強メンタル。その後は主人のビアンカの腕に収まり無関係を装う勝ち組ドラゴン。


うさぎ一同:ただの被害者:2日間のうちに、支配者が「手乗りドラゴン」から「人質を取る元全裸男」に替わる哀れな哺乳類。


グレイブ:証拠確保モード:敵が「誘拐犯」であることを確信。正義の味方(自称)のボルテージが最高潮。


コリン:静観者:それぞれの心の声は全く聞こえてない。今、なにがどうなっているのか全く見えていない。


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