第20話 ビアンカの提案
「僕も出せるの???」
「いや、たぶん無理なんじゃないかしら…」
「私はたぶん、案内役だから出せるだけかも」
「あなたたちは、多分それぞれ、なにか個性的なものがあるはずよ」
「後で見てあげるわ」
「え、そう?? それは楽しみだなぁ!!!」
「そうだ。僕は、魔王を倒しに行かなきゃいけないんだったね」
「なんか、真の僕を救うとか何とかのために」
「あなた!どこでそれを???」
「え?」あの声が言ってたけど?
「あの声…」
「あの最低の変態のこと?」
最低の変態?
「僕の時は……まあ、そうだね。うん。僕を精神的に殺そうとしたし、わけわかんないことばっかり言ってたからね。うん、あれは変態だね!!」
「ビアンカちゃんは何かされたの?」
「わ、私は、その、妻になれとか、げへへとか……」
「え?? 声のくせに??」
「そう。頭の真ん中に響く声のくせに!!」
「そ、それは大変だったね」
「そうなのよ」
「それで、話は戻るけど、あなた以外の人はみんな、目的も何も知らなかったわよ」
「あたしたち案内人が教えていく事項に入ってたし」
「あ、ちなみにそのステータス画面に案内書が入っていて、それを読んでいろいろ理解できたのよ」
「そうなんだ。十四歳の時にか……変だったね……」
「まぁね」
「それで私は、飛ばされたみんなを集めて、魔王を倒しに行かなきゃいけないんだけど、なかなか親が旅に出るのを許してくれないのよね」
「そりゃ、そうだろうね」
「ちなみに、どんな理由で旅に出ることにしてたの?」
「もちろん、魔王を倒すなんて言ってないわよ」
「村の外の世界を見たいんだって言ってるけど」
「あとちょっと、探さなきゃならないものがある、みたいなニュアンスも言ったかな?」
「でも、もうあなたに会えたんだし、これ以上はここにいてられないわ」
「すぐにでも、みんなを集めて、魔王を倒しに行かないと!!」
「真の我だか、僕だか、私だかが倒れちゃう!」
「あ、そうだね」
「急がなきゃいけないんだったっけ?」
「んーーー、そういえば、急げとは案内書に書かれてなかったわね」
「でもまずは、ここを早急に出発するわよ」
「あの、ビアンカちゃんは僕を連れて行くんだよね?」
「あたりまえでしょっ!!」
「そんなの、許してくれないでしょ?」
「いきなり、わけのわからない全裸で現れた男と娘を旅に出させる親がどこにいるっていうんだよ?」
「全裸??」
「あと3年。君が二十歳になって、その間に僕が信頼を得ることができて、それでも許してくれるかは五分五分ってとこじゃない?」
「3年も待てるわけないでしょう」
「せめて一ヵ月ね!」
「無理!!」
「2カ月!!」
「無理!!!」
「3ヵ月!!!」
「無――理っ!!!」
「んんーーーーーっ……!」
ビアンカちゃんが眉を寄せ、唇をぎゅっと結んで考え込む。
次の瞬間、何か別ルートを発見したかのように、ぱっと顔を上げた。
「じゃ、あなた、私と結婚しなさいよっ!」
「ぶぅっっっ!!!」
「け、け、け、結婚っっっ???????」
「ど、どういう流れでいきなりそうなるのさ」
ドキドキドキドキ……
「結婚すれば、あなたが怪しいも何もないでしょ!」
「あ、あ、あ、あの、本気で言ってるの??」
「あら? いやなの??」
ビアンカちゃんは、少しだけ首をかしげた。
な、なんてことだ・・・
その表情、しぐさ、「無邪気×かわいい」を極限まで煮詰めた、純度100%少女がそこにいた。
一点の曇りもない。
僕はもうだめだろう。
だが、残されたわずかな理性を振りしぼる。
「い、嫌だなんて、全然!!!」
「でも、そんな目的のために、無理やり好きでもない人と結婚するなんて、おかしいでしょ!!」
「そりゃ、あの声みたいにゲヘヘな人とかなら死んでも嫌だけど、あなたならいいわよ♪」
す、すごい…
こんな無邪気ストレートが存在するのか・・・
ほんとに? ほんとなのか??
裏はないのか???
「わたし、けっこうかわいいでしょう?」
「スタイルだって悪くないんだから!」
「2度も殴っちゃったけど、普段はそんなことしないのよ!!」
「そ、そ、そ、そんなことはもうどうでも良くて!!!」
「その、ほら……」
「あなたがショートヘアが好みだって言うなら、そうするし…」
ビアンカちゃんが顔を赤らめて、少し下を向いていた。
もう無理。
理性はすでに絞りつくされている。
頼む!! これ以上可愛いのは、やめてくれーー!!!
「あたし、けっこう尽くすわよ♪」
完璧すぎます。
第19話 完
ビアンカ スキル: 純度100%少女
解説:全人類が夢想した「理想の少女」の概念が、一点の曇りもなく結晶化したものをお届けする。
効果:打算やあざとさを1ミリも含まないため、あらゆる精神耐性スキルを透過する。
:術者の提案を拒否しようとすると、全宇宙の不条理を背負ったかのような自責の念に襲われる。
備考:例の女子アナウンサーとの比較は不毛である。
ビアンカユニークスキル:少女の献身(尽くすわよ♪)
解説:防御不能、全方位型・絶対魅了スキル
効果:直接対象となった者は、何人たりともその魅了には抗えない。
:周囲にいる者もその健気さの前では、どれほどの敵対関係にあっても好感度が100%に書き換えられてしまう。
:一度魅了された者は、法の契約により、後戻りできない
:現在、解呪は発見されていない。
ナオえもん
状態異常:魅了・極み(脳内OSのカーネル層までハックされた模様)
解説:もうだめ。( ……いや、むしろこれでいい。)
備考:完璧すぎます。かつて暗闇で妄想した「理想」が物理的な質量を持って目の前に存在している。
第20話 完




