第19話 やり直しの自己紹介
「どうかした?」
ビアンカちゃんのその声で、僕は60%ほどこちら側に返ってきた……。
だが、まだ40%はあちら側にいる。
僕のお尻には、まだビアンカちゃんの温もりがあった。
【帰還率:60%】【残りの40%:椅子の余熱に滞命中】
ただそれは、すでに風前の灯だ。
そのぬくもりが、僕なんかの体温と混ざり合って消えていく。
にくい!
僕は初めて、自分の体温に憎しみを抱いてる。
「ねぇ、どうかしたの?」
「え? あ、いや、何でもないよ」
【帰還率:100%】
「その、何度もごめんなさい」
ビアンカちゃんは頭を下げて謝ってきた。
その雰囲気から、もう飛びかかってくることはなさそうだ。
「えーーと、そうだったね。あの、あんまり気にしないで」
「こちらこそごめんね」
「いや、僕の方はどうやら、とんでもないことをしたようで……」
あの「いざ、参らん」だ。
この言葉は、言うだけで「力」が働いてしまうのかもわからない。
だから、うかつに口には出せない。
「傷は平気?」
「ああ、こんな包帯巻いてるけど、切り傷とかはないみたい」
「外の一発の時点で重傷でしょ。さらにリビングの一発で致命傷っぽかったけど、なんとか元気にしてるよ」
「あはは、打撲だけって感じで……」
「ほんと、ごめんなさい。私、右利きなもので……」
「興奮して、同じ場所に二回も入れちゃって……」
「まあ、無事だったんでその話はいいよ」
何の話だ……。
天然かな?
意外な方向に話が進みそうなので、僕は話題を変えることにした。
「そうだ! 仕切り直しということで、自己紹介から始めてみない?」
「ほら、僕たち、初めて会ったのにそういうことしてないでしょ?」
「今までのことは無し! 今からにしよう!」
うん。これだな。さわやかだ。完璧だ。
「それじゃ、僕からいくね」
「はじめまして、僕の名前は……」
し、しまった。
なんてことだ。
僕の名前は、その……
「どうしたの?」
「いや、その、僕の名前は……」
「うん。名前は?」
「な、なおえ……」
「え? なに? なおえ?」
「な、ナオえもんっていうんだ…ははっ……」
「へ、へんだよね……」
「ナオえもん……」
「べ、別に変っていうか…その、変わった名前ね」
「その、昨日の夜、名前会議をしてね」
「みんながいろいろアイディア出してくれたんだけど、どれもいろいろと問題があってね」
「それで、なんかすっごい重たい空気になっちゃって、耐えられなくて……」
「それで、なんかパニくって、みんなのを全部合わせたら、ナオえもん……になっちゃったんだ……」
「ふふふっ」
「なにそれ。ふふふふふ……」
笑った!
初めて笑ってくれたぞ!!
「はは。おかしいよね」
「でもさ、君の家族も悪いだよ」
「バーラムさんは、いきなりナポレオンがいいって言いだすし」
「な、ナポレオン……」
「皆はいい響きねって感じで、でもバーラムさんは絶対知ってる気がするんだよね」
「そうね。ちょっと、不可能な辞書的な感じよね?」
「??」
「モーサムさんは、オーバードライブ?だったかな。まだ唯一普通っちゃ普通なこと言ってたよ」
「そうね。必殺技とかにはありそうよね…」
「・・・」
「ドーラさんなんか、ドライもんだよ? もう危なくって危なくって」
「それは、あれよね。ちょっと青いわよね…」
「・・・・・・」
さ、さすが家族だな。。。
反応に近しいものがある…
17年、恐るべし。。。
「き、君は知ってるよね?」
「そりゃ知ってるよね。君はこっち側だもんね」
「そうね」
「まぁ、それなりにわね…」
「で、「な」と「お」と「えもん」で「ナオえもん」ってわけさ」
「そう……なんか、いろいろ家族が迷惑かけたみたいね」
「あ、いや、それは気にしないで」
「みんな悪気はなかったようだし」
「そ、そうだ。」
「次は君の番だよ?」
「あ、うん」
「わ、私は、ビアンカ」
「その、17年前にとばされて、ビアンカとして育ってきたの」
「それだよ。続きを聞かせてくれないかい?」
「僕のせいで、みんなが飛ばされちゃったところから」
「うん、そうね、じゃぁ、そこから…」
「私はこの世界に、二番目に飛ばされてきたの。」
「私が飛んで来た時には、すでに一人、男の人がいたわ」
「あの、やっぱり裸で?」
「え、まぁそうね」
「でも飛ばされた場所は微妙にずれてたから、会う前にはもう服をきてたからね!」
「平気よ! 未遂よ!!」
何が未遂なのか、言ってる意味は分からないが、顔が赤くなっててかわいい。
「それで、ゆっくり話す前に、次から次に他の人が現れるから、わちゃわちゃしてたら、最後の9人目のあなたが来る時に、少し離れた場所に、いきなり「力」が凝縮したような感じで歪みができて、びゆーーーーーっっん、て…」
「そうなんだ」
「ごめんね」
「ふぅ。あなたも悪気はなかったみたいだしね」
「さっき、やり直ししたんだから、お互い謝るのはもうやめましょう?」
「それに、すでに2発もお見舞いしちゃってるしね」
ビアンカちゃんはいたずらっぽく笑った。
「それで、10歳の時に、みんなで川で遊んでて、ちょっと高い岩から飛び込んだのよ」
「そしたら、暗闇から飛ばされるシーンが頭によぎって」
「その時は、今の何だったんだろう?くらいにしか思わなかったんだけど……」
「次は川に渦ができているのを見たときかな?前回とは少し違う飛ばされてるシーンが頭をよぎったの」
「で、次第にそういう事が増えていって、決定的だったのが、14歳の時よ」
「みんなの前で黒板を使って発表しているときに、自分のステータス画面がでてきたの」
「その時、99%を思い出したのよ」
「す、す、、す、ステータス画面???」
「そんなの出るの???」
やっと、その異世界的な単語がでてきたぞ!!!!
第19話 完




