第17話 有罪確定
前書き
第17話、なぜ彼女は17年前に飛ばされたのか?
パズルの最後のピースがハマった瞬間、リビングは「語り合いの場」から「処刑場」へと変貌します。
【捜査段階:真相解明】【生存確率:絶望的】
「……ん? え? 17年前にここに来た???」
「ビアンカちゃんも???」
「僕といっしょ???」
「え? ここってこの世界??」
僕は、驚きのあまり立て続けに質問していた。
体の芯から震えがきた。
そ、そんな……
同じような、でも17年前……。
僕と、僕と同じように???
「そうよ」
「でも待って。あなたはどこから覚えているの??」
「私はどこから話せばいいのかしら。。。」
少し冷静な彼女に対して、僕の興奮は収まらない。
僕にしてはめずらしく、早口で話し出した。
「ぼ、僕は、気づいたら暗闇の中にいた。
しばらくしたら、頭の中に声がして、いろいろ話して、半分異世界に行けって言われて。
真の僕のために、その異世界で魔王を倒せって。
僕を含めて九人の僕がいるとかなんとか言ってて。
そしたら暗闇から光が出てきて、この世界が見えて、飛び出してきたってわけなんだ」
「き、君はどうなの??」
「同じかい?」
「暗闇から来たのかい?」
「あそこから飛び出してきたのかい??」
「ちょ、ちょっと落ち着いて」
「一つずついくわよ」
「まず、私はあなたと同じように、その暗闇から来た」
「でも、あなたとは少し違うの」
「正確には、あなたたち九人とは違うのよ」
「どういう意味?」
「私は真のあなたの想像……?から生まれたの」
「何言ってるの??」
「そ、想像から生まれた?」
言葉の意味はわかる……ようなわからないような…
意味がまるで入ってこない。
頭の中で、理解が入口のところで立ち往生していた。
「あなたたち九人は、真のあなたの記憶や経験から生まれた、あなた自身。
だけど、私は違う」
「9人??」
「私は、あなたの中にあった、あこがれや理想とか、そういう想いから生まれたのよ」
「ちょっと、待って!!!」
「早い早い早い!!!」
「全然一つずつじゃないよ。」
「もう一回、もう一回ゆっくりいこうよ」
「ええーーと、ええーーと」
「あれだ。まず、17年前ってなに?」
「僕は昨日なのに?」
「それはね、本当はあなたも一緒に17年前に来てたはずなのよ」
「僕も?」
「そう」
「でもね、起こるはずのないことが起きたのよ」
「起こるはずのない?」
「たぶんあなたが原因よ」
「僕が???」
「あなたたち九人は順番に、だけど同時というか、まぁ30分も違わないくらいの間に、この世界に来るはずだったの」
「実際、そうだったのよ」
「順番にみんな来てたの」
「でも最後に、あなたが出てくる時に不思議なことが起こったの」
「僕の時に…」
「まぁ、事故っていうのかもね」
「でも絶対あなたが何かしたはずよ。理由はわからないけど」
「ちょ、ちょっと待って」
「僕が何かしたって?」
「いったい何がおこったんだい?」
「あなたが出てくる、その時に、空間移動の時に使われる「力」が突然現れたの」
「暗闇の世界と、この世界がつながっているときに、そんな「力」が働いたから、
その場で時間と空間が伸びて、めちゃくちゃに歪んでしまったの」
「めちゃくちゃに?」
「あなた以外の、その周辺にいた八人と私は、それぞれどこかに飛ばされたの」
「同時に時間も変わってしまったみたいで。。。」
「・・・・・・」
「私は0歳の状態で17年前に飛ばされたみたいだったわ」
「さっきから、確信はない言い方だね」
「わからないのよ。
気づいたらっていうのもおかしい話だけど、普通みんなそうだと思うけど、もの心がついたのが3歳だったか4歳だったか、って感じで」
「そこからゆっくり、ゆっくり、いろんなきっかけで、色々思い出して…」
「それで今ってわけ」
「じゃ、ほんとに、普通に17年間育ってきたの?」
「そこも本当のところはわからない」
「でも、みんなが私は17歳だっていうから」
「みんなが、私が赤ちゃんの時はあーだったとか、こうだったとか話するから…」
「17歳の誕生日も祝ってもらったし」
「だから17歳」
「そうか。そうだよね。それが普通なのかもね」
「よく考えれば、みんなが言うから、自分の年齢がそれなんだって理解してるだけだよね」
「赤ちゃんの時に拾われたか、ドーラさんのお腹の中にいた子に憑依したか、その辺はわからない」
「最初は本当に普通だった。普通の子だったのよ。
でも、ひとつひとつ、突然ふと思い出すっていうか、頭によぎるっていうか、そういうのを繰り返して、ああ、自分は違うんだってことがわかったのよ」
「だいたい、10歳くらいからかな?」
「いろいろ思い出し始めたのは。。。。」
「そ、そうなんだ」
「で、私も聞きたいことがある」
「あなた、この世界に来るとき、何をしたの?」
「何をって別に…」
「僕は声に、行けっていわれて普通に来ただけだよ」
「何もしていない」
「うそよ!絶対何かしたはずよ!!」
「偶然にあんな「力」が現れるなんてありえないわ」
「その、さっきからその「力」ってなに?」
「空間移動とか言ってたっけ?」
「わりと有名っていうか、普通なもの? いや、言ってる意味が自分でもわからないけど…」
「何言ってるの?そんなことも・・・」
「その話はあとよ」
「思い出して。なにかし、た…は…ず…」
「……あなた、行けって言われて来たって言ったわよね?」
「そうだよ。光が出てきて、それが広がって」
「そのうち、土とかの匂いがしてきて、鳥の声が聞こえてきて」
「そしたら、道が一本伸びていて、そこに踏み出して来たんだ」
「な、なによそれ?」
「え?」
「私は飛ばされて来たわよ」
「自分で踏み出すなんて、そんな、なんていうか、自分の意思みたいなものは無かったわ」
「そうなの?」
「んー、僕も自分の意思っていうか、お願いの体もあったような気がするけど、ほぼ強制だったけどね」
「まぁ、最後はかっこつけて?じゃないけど、気分出して「いざ、参らん」なんて言ってきたんだけどね。ハハハ」
僕は少しテレながら、頭をかきながら言った。
その瞬間だった。
彼女の雰囲気が変わった。
目が見開かれる。
視線が、空中でぴたりと止まった。
パズルのピースが、最悪の形で噛み合ったような、そんな顔だった。
「ど、どうしたの?」
あれ?
これ、ヤバイやつ?
え?なんで?
ビアンカちゃんの目のピントが僕に戻り、恐ろしいほどの殺意が光線のように僕を貫いた。
逃げなきゃ。
本能が、最大級のアラートを鳴らす。
ビアンカちゃんが、両腕をテーブルに激しく叩きつけ、ガタッと立ち上がった。
目の奥の凶暴さがさらに増している。
「やっぱり、あんたじゃないのぉぉっぉぉぉーーーーーー!!!!」
ぎゅおぉーーーーーーーーーーーんっっ!!!
「いやぁーーーーーーーーーーーーーっっっ」
「またーーーーーーーーーーーーーーっっっ」
「こーろーさーれーるぅぅーーーーーっっっ」
彼女の両足には、そこだけ重力が強まったかのような力が溜まっていた。
その力を解放しようとしたまさにその時、リビングの扉が開いた。
「ビアンカ!そこまでじゃ!」
バーラムさん!
た、助かった!
でも遅いよ!!もう少しで僕は
「ぶべらっhgdgヵ」
「あ……」(バーラム)
僕は椅子ごと吹っ飛ぶ。
壁に叩きつけられ、床を転がる。
それでも止まらない彼女は、僕の上に跨がり、胸ぐらを掴んで激しく揺さぶる。
「jhjhgづgjbsづっがjはjfgyglg」
狂戦士が何か言っている。
遠い。景色、音、痛み、全てが僕と関係のないもののように遠かった。
バーラムさんが、そっと出て行った気がする…
だめだこれ…
本能からのお知らせがきた。
物理的な防衛ラインを超えた攻撃を受けました。
この体は強制的にシャットダウンします。
そうか。
あの時、僕が放った軽い一言。
それが世界にバグを引き起こし、彼女のこの世界での人生を17年も狂わせたのか…
僕の視界からは光が消え、ビアンカちゃんの怒声も、世界の音も、すべてが暗闇に溶けていった。
第17話 完
ご覧いただきありがとうございました。
犯人は、僕でした。
カッコつけて放った「いざ、参らん」の一言が、時空を歪め、理想のヒロインの人生を17年も狂わせていた……。
査定の結果、僕の有罪判決は免れそうにありません。




