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第15話 死んだふり、はじめました

お読みいただきありがとうございます!

前回、黒歴史である『スパイラル蒼空剣』の存在を突きつけられ、精神HPが5まで削られたナオえもん。

しかし、現実は非情でした。言葉の暴力の次は、物理的な暴力が飛んできます。

それでは、第15話「死んだふり、はじめました」をお楽しみください。

「な、な、な、なんですか、それ?」


僕は、血の気が引きまくりながらも、なんとか持ちこたえ、震える声で言葉を絞り出した。

目の前でビアンカちゃんの肩が小刻みに揺れている。

僕の言葉を聞いたことで、その震えはますます大きくなったように見えた。


「い、いくら僕が、そんな、スパイラル。。。? でしたっけ? そんな蒼空剣で、みんなを守るわけないじゃないですか……あは、アハハ、あははハハ……」


「ぐぐぐ.....」

「そ、それよっ……」

「やっぱり......」

「やっぱり、あんたじゃないのぉぉぉーーーーっっっ!!!」


「ぶべらっっっ」


次の瞬間、すさまじい衝撃が左の顔面にめり込んだ。

僕の身体は情け容赦なく地面と水平に吹っ飛び、転がっていく。

景色が高速で回転し、空と地面が何度も入れ替わる。


気づくと、僕は地面に倒れ込み、口の中に広がる土の味を噛みしめていた。


何だ?

何が起こった??


グ、グーパン??


ビアンカちゃんのフルスイングの右ストレートを、まともに食らったのか…?僕は……!?


じんじんと熱を持つ左頬。

痛いというより、顔面の半分がもう自分のものじゃないみたいだった。


なんで!?

いや、なんで!?


目の前には、肩を震わせたまま、今にも追撃してきそうな憤怒のビアンカちゃんが立っている。髪の先まで怒りで逆立って見えるほどだ。


つ、つよい。。。今の攻撃をもう一度くらえば、僕はおそらくこの世にいない。。。

や、やられる。。。


そう覚悟した時、ようやくみんながビアンカちゃんを止めに動いてくれた。


まずはグレイブ。隣にいただけあって、一番にビアンカちゃんを制止する。

ビアンカちゃんの両肩をしっかり押さえ、


「ど、ど、ど、どうしたんだ? ビアンカッ!」

……どさくさに紛れて、近い。タッチが多い。 


つぎにドーラさん。

「な、なにをするのビアンカ」


グレイブを押しのけるようにビアンカちゃんに抱きつき抑え込む。

おばさん、ナイス!


モーサムさんは僕に駆け寄り、土まみれの体を起こしてくれる。

「大丈夫か!? すまねぇ、ビアンカが。。。」


バーラムさんは、唖然としたまま、その光景を見ていた。


「離してーーっ」

「あいつに……あいつに話があるのよーーっ!」


「ふぎぃいぃぃーー!!」

「はーなーしーてーーっっ!!」


どうやらビアンカちゃんは、完全なバーサク状態だ。

抑えられてはいるが、今にも地面を蹴って飛びかかってきそうな勢いだ。

ビアンカ:狂乱度100 話ある度100 話する気ある度0


僕は生命の危険を感じ、すぐさま防衛本能のままにスキルを発動させ、精神的により深く倒れ込む。


ユニークスキル:「死にゆく者」

周囲に「あ、こいつ死んだ」と思わせることで、見る目がない相手を恐慌状態に陥らせる、混乱系攻撃スキル。


「こ、らyぅk、たいへんだーー」

 モーサム:娘の狂乱を確認。また、間近で「死にゆく者」をまともに浴び、恐慌状態・強


「ビアンカー、あなたどうしちゃったのぉーーっ!」

 ドーラ:娘の暴挙を確認。また、初見の「死にゆく者」をくらい、恐慌状態・強


「び、ビアンカ・・・」

 グレイブ:想い人の錯乱姿を確認。また、初見の「死にゆく者」をくらい、恐慌状態・強


「。。。ビアンカ。あの様子は「怒り」だけではなさそうじゃのぅ・・・」

 バーラム:スキル洞察を発動。孫娘の渾身の一撃を視認。その後考察中。


「そして、小僧!このわしには効かんぞい!!」

バーラム:スキル洞察を発動。初見の「死にゆく者」を看破。その後考察中。


くっ、僕のスキルはバーサク状態のビアンカちゃんには通じないようだ。

ここからは、他の面々に頼ることになりそうだ。


モーサムさん、ドーラさん、ばかグレイブ、そして、バーラムさん、期待してますよ......


僕はモーサムさんに抱き起こされる中、薄目で状況をうかがう。

その時、ビアンカちゃんの方を向いていたバーラムさんが、ゆっくりと首をこちらへ巡らせた。

その目は鋭く光っている。


ま、まさか、見抜かれているのか?

僕の背筋に冷たい汗が流れる。



バカなっ!!

スキル発動のタイミングは完璧だったはず。

あれをかわせるわけがない……


いや、見抜かれている。

あの目は、僕の表層を突き抜けて、完全に「中の魂」を見た目だ。


どうやら只者ではないらしい。

だが、見抜いたとてどうする?

まわりは完全に恐慌状態。

あなた一人では何もできますまい!!!



その時、みんなのいる方から、「場」が動いた気配を感じた。

荒れた空気が一気にこちらへ押し寄せる。


なんと、ビアンカちゃんはドーラさんを振りほどき、今まさにこちらに突撃しようとしている。


ま、まずい。

今の僕はスキル発動直後、動くことができない……


ビアンカちゃんのふくらはぎには、力が限界まで溜まりきっている。

ぐっと沈んだ重心が、ばねのように張りつめていた。


く、くるっ!

そう直感した。


「ざっ」

という土を蹴る音がした瞬間、

その力を一気に解放したビアンカちゃんが暴力的なスピードでこちらに突進してきた。

土が蹴り上がり、その姿が一瞬ぶれたように見える。


せまりくるその顔は怒りに満ちている。

目には殺気が宿っている。


こ、ここまでか。

僕はギュッと目をつむりその時を待った。


「そこまでじゃっ!」


突然の声。

なんだ?

僕はつむった目をゆっくり開け、周りを見た。


ビアンカちゃんの突進は、僕の目の前ぎりぎりで止まっていた。


声の主はバーラムさんだった。


「みなも落ち着けいっ!」


みんなが、はっとしたように正気へ戻っていく。

少し間を置いて、バーラムが口を開く。


「ここはこのわしが預からせてもらうよ」

「ビアンカ、こっちに来な」

「そしてと…」


バーラムさんは、周りを気にする様子もなく、ゆっくりと僕の方へ歩いてきた。

土を踏む足取りに、妙な重みがある。


「ほれ、お主もじゃ」


そう言って僕を上から見下ろす。

その表情は冷たい。だが、その奥にはほんの少しやさしさも見て取れた。


得体の知れない「熱」が入り込み、僕が発動させていたスキルのリズムを根こそぎ奪っていく。

僕はなんの抵抗もできず、精神の「倒れ込み」から強制的に引き戻された。


みんながビアンカちゃんを見、僕を見ている。

さっきまで荒れ狂っていた場だけが、不自然なくらい静かだった。


僕は、モーサムさんの手をほどき、力なくノロノロと立ち上がる。

モーサムさんは、ただ見ているだけだ。


「ついといで」

そう言ってバーラムさんが家に向かって歩いていく。

僕とビアンカちゃんはゆっくりとそのあとに続いた。


第15話 完


ビアンカ ユニークスキル:おごれるものは久しからず 

解説:自らをバーサク状態にし、渾身の一撃を繰り出す物理的攻撃スキル。

   また、その狂乱姿から周囲のものに恐慌、あるいは混乱・弱を付与。

効果:その一撃は誰にも止められない。

欠点:発動後、我に返ったあとの「恥死度」は全スキル中トップクラスを誇る。


バーラム スキル:洞察

解説:表情、しぐさ、その他すべての情報から、対象の心理状態を見抜く。

他者の発動したスキルを看破し、無効化する。

   2つの効果も持つ解析系スキル。

     

バーラム スキル:考察

解説:脳内の処理速度を高速化。時間の流れが止まっているかの如く物事を推し量ることを可能にする解析系スキル。


バーラム スキル:洞察者の気付け

解説:精神系の状態異常(狂乱、恐慌、錯乱等)を強制解除し、対象を正気に戻す秩序系範囲回復スキル。

その効果は、スキル発動者の放つ「圧」が空気を介して伝播することで発揮される。


第15話 完







第15話をお読みいただき、ありがとうございました。

女の子のグーパンって、あんなに景色が回転するもんなんですね……。

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