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第14話 黒歴史、急襲

「あら、お帰りなさい」

「どうだった?」


「まぁ色々あったが、しばらくここにいてもいいそうだ。」

 モーサムさんはチラッと僕の方を見て言った。


僕は、苦笑いを返す。

いろいろと言えば、いろいろで、ほんとかなりいろいろございましたよ。


「そう。良かったじゃない」

「しばらくは遠慮しないで、うちにいたらいい」

 バーラムさんとドーラさんは笑顔でそう言ってくれた。


「ありがとうございます」

「本当に、お邪魔にならないようにしますんで、少しの間だけよろしくお願いします」

「もちろん、お手伝いとかしますんで、何でも言ってください」

 僕は、迷惑だろうと分かってはいるが、これから何をどうすればいいのか全く分からない。

 図々しいのを承知で、僕は深く頭を下げた。


「気にしなくていいのよ。お願いしたい力仕事は山ほどあるんだから」

 ドーラさんは気を遣っているのか、本気なのか、絶妙なトーンで言ってくれた。


そんなほのぼのとした時間が流れていた中、その時は突然やってきた。


「あら、帰ってきたみたいだね」

僕の後ろの方を見て、ドーラさんが言った。


楽しそうな話し声が聞こえてくる。

若い男女の声だ。


僕は、その場で硬直した。

時間の流れが、急におかしくなる。

一秒が一分みたいに長い。


ドクン、ドクン。

また心臓がうるさくなってきた。


帰ってきたみたい?

それは、あの、あの人ですか、ドーラさん?

ビアンカさんで、合ってますか?


ふふふと笑っている女の子の声がする。

楽しげな男女の気配は、さらに近づいてくる。


僕はしっかりと目をつぶっていた。

きた。

ついにこの時がきた。

対面だ。

あのビアンカちゃんとの初対面だ。


昨日は姿を見て、気を失ってしまったけど…

今日は、今回は、違うぞ!

挨拶するんだ。

あのビアンカに声をかけるんだ。


いくぞ。

ゆっくりだ。

ゆっくりだぞ。


……僕は、振り返った。


そこには、笑っているビアンカちゃんがいた。

いた。

本当に、そこにいた。


「ビアンカ、それにグレイブも」

「今、帰りかい? 今日は早いじゃないか」

 ドーラさんが話しかける。


「ええ、まぁ、ちょっとね」

「おばさん、こんにちは」

 と言いながら、二人は近づいてくる。


び、ビアンカちゃんだ。

ビアンカちゃんが、こっちに来る。


僕は、用意していた「余裕のある挨拶」を繰り出そうとした。

「あ、あの、初めまして。僕は――」


ダメだ。

至近距離で見る彼女の破壊力は、僕の脳内回路をあっさりと吹き飛ばした。



(か、か、かーーわーーいーーいーーーーー!!!!!)

(動いてる!動いてる!!動いてるっ!!!)

(目の前でビアンカちゃんが動いてるぞぉ!!!)

(かーわーいーいーぞぉーーーー!!!)


「やっと会えたわね。居候さん♪」


「い、居候?この男がビアンカの家に?……」

グレイブの目が険しくなっている。


「そう、私も今初めて見たんだけど、昨日からいるみたいなの」

「昨日から……」


(かわいいーーーー!!!!)

(声もとぉーーーっても、かーわーうぃーいっ!!!)

(居候さん♪だってーーー!)

(僕のこと?)

(ねえ、僕のことぉーーん!!!)


これだよ…!!!

これが僕の夢にまで見たビアンカちゃんだぁーーー!!


僕はもう、体がくねくねのくねだ。

一切の骨を感じさせない生物のように、もじもじくねくねしている。


いやーーん。ばかーーん。

ぼくのバカーーぁん!!!


僕は今、完全に壊れている。

初対面だってのに、相当キモいのもわかっている。

だが止まらない。

僕の大興奮が止まらないんだよーーーーーんっ!!


もう、周りなんて見えていなかった。

僕は一人っきりの世界で、ビアンカちゃんを眺めていた。


「あら?」


僕がくねくねしながら見ていると、彼女の表情が少し動いた。

かわいい。


「あ、あの、えぇっと」

彼女が、僕をじーっと覗き込んでくる。


少し困惑しているような、何かを探っているような……そんな表情だ。

たまらなくかわいい。


「どうしたんだ? このクネクネしたやつに見覚えでもあるのか?」

グレイブは僕を冷めた目で一瞥してから、ビアンカの方に向き直る。


「いや、あの、ま、まさかね……」

「嘘よ」

「嘘よ、嘘!」


なぜか彼女が激しく動揺し始めた。


…あれ?

なんだろう、この空気。


「あ、あの、ひとつ質問してもいいかしら?」


およ?

ビアンカちゃんの表情が、動揺から「核心を突こうとする」真剣なものに変わった。


「僕? ぼ、僕ですか?」

おおおーー!!

また話しかけられちゃったぞ!

見つめられちゃったぞ!!


「どうぞ、どうぞ」

「何でもどうぞ!」

さあ、何を聞かれるんだろう?

好きな食べ物かな?  それとも、どこから来たかとか?


僕は、子犬のように、次の言葉を待ち受けた。


「では、遠慮なく……」

一瞬、時が止まる。

そして、ビアンカちゃんは、意を決したように口を開いた。


「す、スパイラル蒼空剣ってご存じ?」


「な、な、な、なぜ、それをぉぉぉぉおおお!!!」


世界が唐突に崩れていく!

さっきまでいたお花てふてふの世界が、音を立てて崩壊していく!


落ち着け!

落ち着くんだ僕!!

まだ、全てを失ったわけじゃない!!!


ナオえもんステータス

・急転直下度:100 

・お花てふてふ度:0 

・希望残量:5


 ・精神的防御力:0(黒歴史の強制開示の前に、抵抗の余地なし)

 ・精神HP残量:微量。計測不能。


敗因:「かわいい」の過剰摂取によりガードが下がっていたところへの、スパイラル蒼空剣、直撃。

 闘争心:0 いや、マイナス域を確認。

敵が襲ってきても「どうぞ、スパイラル蒼空剣でトドメを刺してください」と首を差し出すレベル。


あぁ……世界が歪む。

モーサムさん、グレイブさん、ドーラさんに、バーラムさん。

みんなで、今すぐその冷たい視線で僕を蒸発させてください。

ビアンカちゃんの口から、これ以上の黒歴史の欠片が放たれる前に……!!


「やっぱり。。。やっぱりそうなのね。。。」

僕は荒れ狂う心の竜巻の中で、ビアンカちゃんの肩がわなわな震えているのを見た。


「おい、ビアンカ、どうしたんだ?」

「ス、スパイラル......棒食う券?」

「何言ってるんだ?」


グレイブがビアンカちゃんに寄り添う。

な、なんか、距離が近くないか?

タッチが多くないか?


僕は崩壊寸前の精神で、グレイブを見て、そして思った。

敵だ。

たぶん。


14話完


お花てふてふ世界へ旅立っていた時の周囲の視線(ナオえもん推測):

ビアンカ: 「(え……何この生き物、怖い。お父さん、本当にこれ人間なの?)」

グレイブ: 「(……ダメだ。こいつ、今すぐここで処分したほうが世のためなんじゃないか?)」

モーサムさん: 「(ナオえもん……さっき村長の前で泡を吹いた時より、重症じゃねぇか……?)」

ドーラさん: 「(あらあら、ナオえもん、今日もずいぶんキテるわね。。。)」

バーラムさん: 「(この私にはお見通しじゃ!恋じゃな!)」


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