第13話 戦神の余生
僕は医務室で治療を受け、回復した後、モーサムさんと帰途についた。
「それにしてもすごかったな」
「え?」
「いや、村長さんの眼力だぁ。おめぇが倒れても、ありゃおかしくねぇよ」
「最後、あの場所全体の空気の変わり様も本当にすごかった」
モーサムさんは、村長さんのすごさを改めて見れたからか、嬉しそうだ。
「はぁ。まぁ、すごいびっくりしました」
ふっ。
あの村長、この僕に奥義まで使わせるとはなっ。
たいした奴だ。
なーんて、僕は内心気取ってみせた。
「村長さんはな、本当にすごい方なんだ」
「昔は飛騨の国の随一の猛将軍で、戦神とまで言われた人だぁ」
「近隣諸国も、村長さんがいる限り、ちょっかいなんぞ出してこねぇ」
僕は、あのお姿、声、全身から出るオーラを思い出す。
や、やっぱりね。。。
そうですよね。アレですもんね。
どう見たって戦神してますよ、あの人。。。
「しかしな、そんな戦神が、いきなり世代交代だ何だと言って引退するって言い出したんだ」
「そうなんですか?」
なるほど。さすがだな。
衰える前に引く。なかなかできる事じゃない。
「あぁ」
「もちろん、国王も大臣も、村長さんの部下も、みんな大反対だ」
「そりゃもう、止めに止めたさ」
だが、あの人は聞かなかった。
大揉めしたが、最後はみんなが折れたんだ。
国王は、村長さんの今までのあまりに大きい功績に報いるため、最後に何か褒美を受け取ってほしいと言ったんだ。
そしたら、村長さんはこう言ったんだ。
「村が欲しい」と。
「儂のことを誰も知らない村。みんな儂のことを、ちょっとした金持ちくらいにしか思っておらん。そんな者たちと飲んだり騒いだりして、余生を暮したい。
そして、ひっそりとこの世から去りたい」と。
その願いを叶えたのが、このひるがの村だ。
みんな、そんな村長さんが大好きなんだ。。。
あの、ばかなの???
村長も、この村全員も、ほんとバカなの??
何一つ叶ってねーじゃねーか!!!
みんな、随分詳しいとこまで情報共有してんじゃねーか!!!
何だったんだよ、今までの話。
遠い目しながら、「みんな、そんな村長さんが大好きなんだ。。。」じゃねぇよ。
ちょっとした金持ちで、あの城なわけねーだろうが。
あれ作るの、すんげー金かかるぞ!!!
でも、これで一つ謎が解けた。
あの家というか城というか、あれの防御力に比べて、村の防御力は低めだなと思っていたんだ。
村はちゃんと柵に囲われているが、あれくらいは、本気出せばすぐ壊せそうだ。
それに比べて、あの家は堀に石垣に殺し間付きだったからな。
この村は主要な街道沿いというわけでもないし、何かの要所って感じでもない。
そんな場所に城があるなんて、おかしいと思ったよ。
なるほど。
村長の趣味かよ。
僕はもう何が何だかわからないが、おそらく美談に浸っているモーサムさんを放っておくわけにもいかず、無理やり会話をつなぐことにした。
「あの、あのお城は、その。。。村長さんが指揮して作ったんですか?」
「とても素敵ですね」
(殺し間付きで)
「あぁ、あれは飛騨の国王が、誰も知らないところに住むことになる村長への
はなむけじゃよ。
国王も男じゃな。金に糸目はつけんかった。
村長も、あれには泣いておったわい」
。。。こ、国王もダメか。。。
あんなもん、はなむけられたらバレバレじゃねぇか。
村長も違う意味で泣いたんだろーよ!!!
駄目だ。
完全におかしい。
ここまでの登場人物、全員バカじゃねえか。
まともなのはいねぇのかよ。
この国からは、一刻も早く出るのが正解かもしれない。。。
とりあえず、あのお城が村長さんの趣味ではなかったことだけは分かった。
それが良かったのかどうかは、正直よく分からない。。。
ナオえもん物件査定報告書:ひるがの村
防御力
村の外郭:15 (気休め程度)
村長の家(城):150 (過剰防衛)
主な設備
村の外郭:木の柵 (間隔はやや広め)
村長の家(城):堀、石垣、追手門、殺し間
戦略的意義
村の外郭:野犬よけ
村長の家(城):いざという時、戦神が籠城するための本丸
建築費
村の外郭:軽微。国の年間予算の予備費で対応可能
村長の家(城):甚大。国の財政が一部溶解。
特記事項
村の外郭:住民の善意で維持可能。
村長の家(城):維持費予算の都合上、今後特別増税される可能性あり。
総評:村より村長が大事。
村長の家の関係者相関(ナオえもん調べ)
登場人物
飛騨の国王 関係:贈与者
行動:隠居する将軍に「要塞をプレゼント」
診断:悲劇の起点人物。天然の爆弾。
村長(戦神) 関係:受取人
行動:すべてを受け止めて号泣。
診断:その涙の理由によっては、唯一まともな可能性あり。
今後の調査が必要。
モーサムさん 関係:語り部
行動:あらゆる矛盾を「美談」として笑顔で語る。
診断:善意の共犯者。
衛兵たち 関係:警備
行動:村長を「ちょっとした金持ち」として扱うには無理がある。
診断:つじつま合わせに高度な柔軟性を要求される立場。
総評:この村を安全に運営するキーパーソンは衛兵と見える。
彼らのメンタルには注意が必要。
そんなことを考えながら歩いていると、ようやく家が見えてきた。
家の前ではバーラムさんと、ドーラさんが、道を箒で掃いていた。
第13話 完




