チュートリアル その三
「さて……西野君。君の武器適性はどうなっているかね?」
目の前の原始人が、可愛い声で先生という知的職業に就いた。
「剣D、斧C、弓Cです。先生」
目の前で始まった茶番に乗ってあげる。
「よーくできましたぁ。では、これから草原へ狩りに行くのだけど、どの武器を使えばよいでしょうか?」
「剣だと思います」
「ブッブ~。ふせいか~い。草原の獲物はウサギや鳥、大きなものでは鹿などです。人間の足で追いつけますか?」
目の前の原始人の足なら追いつけそうだが、言わないでおこう。
「じゃあ、弓でいいの?」
「だ~い正解! それでは、こちらの倉庫に保管箱があるから、そこで弓を装備してください。みんなで作った弓だから、大事に使うように」
先生役が、妙に板についている。
「それから、矢も忘れずにね。十二本まで持てるから、全部持っていくんだよ。これも大切にね」
倉庫の中に置かれた大きな保管箱を開き、斧を外して弓を装備した。
続けて、矢を十二本、アイテム欄に入れていく。
弓と矢で装備重量が増えるから、最初から持っていた材木十五個は保管箱に預けておくよう言われた。
「弓をしまえば短剣も使えるからね。探さなくていいよ。弓を装備した時点で、一緒に装備されてるから」
目の前の東野さんも弓を装備し始めた。
おそらく、草原では弓が使いやすいのだろう。
東野さんって、遊ぶ時はこんなテンションなんだ。
「準備できたら行くよ~」
足取りの軽い原始人は速い。
気づけば、もう倉庫の外で手を振っていた。
「鳥居までついてきて。フィールドに出るから」
獣の皮のビキニに超ミニスカート。
そんな姿の東野さんが、僕に背を向けて走っている。
状況だけなら、ときめいてもよさそうなものなのに。
なぜか、まったくときめかなかった。
いや、理由は分からなくていいことだった。
大きな鳥居の前に立つ。
「一緒にくぐるよ~。」
東野さんは相変わらずテンションが高い。
一緒に鳥居をくぐると、フィールド選択画面が現れた。
『草原』『湿地』『森林』『鉱山地区』
それぞれの風景を描いた一枚絵が並んでいる。
だが、草原以外には通行不能のマークが重なっていた。
結局、草原一択。
「西野君はまだレベル一。初めは草原から慣れていくのよね~」
東野さんは、自分の初心者時代を懐かしむように語りだした。
「あの、目の前の大きな岩。正面に切り口が入ってるよね? あれを背にしてまっすぐ行けば、ここの鳥居に着くから覚えておいてね」
「花のついた植物は採取して、倉庫に入れておいてね。採集物は邑の財産だから」
綿や麻、とにかく花が目印のようだ。
花の前に立って実行ボタン。
これだけで採集できる。
「綿と麻は、貫頭衣の材料になるの」
「服、作れるの?」
「今はまだ文化が足りなくて作れないけどね」
東野さん待望の貫頭衣は、まだ少し先らしい。
「だから今は村の行商人に持たせて、石器や黒曜石と交換してるの」
「石なら自分たちで拾えばいいんじゃないの?」
「拾えるし、黒曜石も採れるわよ。でも、少ない邑人を総動員して文化に全振りしてるから、生産まで手が回らないの」
服を作るために文化を上げ、文化を上げるために服の材料を手放す。
「負のスパイラルよ」
僕が考えたことを、東野さんが疲れた声で締めくくった。
「店長さんは何て?」
「毛皮の方が防御力高いから、いらんだろって」
「榊さんは?」
「店長の隣で、『それでいいと思います』って」
あの榊さんでさえ、気配りより効率が勝つらしい。
「男って……」
東野さんが、疲れ切った声でぼやいた。
とりあえず、花を見つけたら採集。
それが僕の役目だ。
「じゃあ、次は狩猟だね」
服への不満を吐き出して、何か吹っ切れたのか。
東野さんの声のテンポが、再び上がった。
1週間経ちました。読んでくださった方には感謝です。
何とか100PVは越えたようです。ありがとうございます。
私の伝えたいことはタイトルの通りです。
一枚一枚、個性のあるソフトをどう遊ぶのか。あと50話ぐらいで出てくると思います。
遠いなぁ・・・。




