チュートリアル その一
十九時。晩御飯を食べると、すぐに部屋へ引きこもる。
なぜ、まだゲームをやっていないのかというと、起動はしたものの、すぐに
『ゲームのインストールを開始します』
で、終了まで三十分。やっと終わったと思ったら、
『最新データのダウンロード完了まで八十分』
とか出てますけど? という状態。
帰宅から三時間経って、ようやく、ようやく始められる。
前の人のデータが残ってるって言ってたよね……。
ちなみにこのゲーム、ディスクを差し込んで起動した時点で、ディスクのIDとサーバーが連動し、各パラメーターやスキル、隠しスキルまで決まってしまうらしい。
そして、やり直しは不可能だそうだ。
必死にメニュー画面を探す。飛んだり、斧を振ったり。さながら危険人物だ。
僕の簡易ステータスはこうなってる。
名前:ace-joker LV1 剣D 斧C 弓C 強撃 釣りD 採集C
ランクは上からS、A、B、C、D、E、Fの七段階。
隠しデータとして体力や力、知恵や俊敏さなども設定されていて、『スキルを見て察してください』とウェブには書いてあった。
まさに、僕の通知表じゃないか。
店長が言うには、『ゴミ』だがロマンがあるらしい。
名前は変更可能だけど、なんかカッコいいからそのまま採用した。
パラメーターからは、エースの片鱗も見えないが。
ゲームを開始すると、邑(この世界では、村を『邑』と呼ぶらしい)の風景が目の前に映る。
邑というより、コテージ付きのキャンプ場といった方がいい。
丸太で組み上げた素朴な建物が左右に五棟ずつ。正面には大きめの建物がある。
当然、窓にガラスはなく、玄関に扉もない。
建物以外は、本当に草原が広がっているだけだ。
メニューから持ち物画面を開く。今は斧を持っているらしい。
ほかには、丸太のアイコンが一つ。横に『15』と数字が表示されている。
結局、持ち物は斧と木材だけ。
ここから何をすればいいのか。
tamaki_0815。しっかり覚えている。東野さんの誕生日も。
さっそくメールのアイコンを開いて……。
入力、どうすればいいんだ?
そういえば、同じ邑だと言っていた気がする。
今度は邑人一覧を見てみると……。
tamaki_0815。確かにそこに東野さんがいた。
名前の左には緑のランプ。おそらく今は『AZITO』にいるんだろうな。
何度も何度も読み返してから、メールを送る。
『今始めました。西野です。よろしくお願いします』
もっと気の利いた文はなかったのか?
送信した直後に、東野さんから返信が来た。
『やっと来たね。今そっちに行くから、待っててね』
初めての女の子との待ち合わせ。ゲームの中なのに、幸せいっぱいだ。
◇ ◇ AZITOにて ◇ ◇
「どうした? たまき。ニヤニヤして」
「布教活動の第一歩よ。邪魔しないで」




